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金曜日
しおりを挟む最近思うのは結局、私は一人ぼっちだということ。平日の夢が終わり、休日を迎えると感じる虚無感は拭えないばかりか、大きくなっていく。
だから、金曜日が恐くなる。目が覚めたら、つまらない時間が訪れるのだから。だけど、現実で結婚したいとは思えない。もし結婚なんかして、彼らの夢を見なくなる…その方が嫌だから。
シャワーを浴びて髪を乾かし、身支度を整えてからベッドに横になり布団に潜り込む。もしも、彼らの世界に行けるなら、このつまらない日常なんてあっさり捨ててしまえるだろう。
…
ゆっくりと夢の世界に覚醒する。金曜日の旦那様は少し特殊だ。彼と最初に出会ったのは、冷たい牢獄の中だった。鎖に繋がれた6つ年上の彼は、冷たい瞳で無機質な壁を見つめていたのは、今でも忘れられない。
現在は、古めかしい雰囲気で和風な部屋に変化した。まるで何処ぞのお殿様が住んでいるような、歴史物の映画かの様な立派な造りの部屋である。
「…ユウカ、会いたかった。」
「っ!…う、ビックリした~。急に出てこないでって、前も言ったよね!?」
「すまない。嬉しくてつい…。」
ショボンと萎れる相手は、後ろから私を抱き締めたままだ。代々暗殺者の一族だという彼は、基本的に気配が無い。気付くと隣で寝ていたり、座っている私の膝に頭を乗せていたりする。心臓に悪いので本当に止めて欲しい。
肌を全く見せない黒い装束の彼は、あっという間に白い浴衣の様な物一枚となる。褐色の肌に映える濃い桃色の髪に、水晶の様な水色の瞳。
暗殺者の一族の次期首領だと言う彼は、よく物騒なことを口にする。私には毒草の見分け方や、簡単な縄抜けの仕方等をよく教えてくれるのだが、実際に使う場所は無い。
「ミコト…今日も綺麗ね。」
彼の水色の瞳を見つめる時間が好きだ。じっと見つめると、頬に手で触れられ「…もっと呼んでくれ」と囁かれる。ミコト=スルガ。私だけに教えてくれたという、彼の本当の名前。彼の顔も、性別も、名前も…私しか知らないらしい。
スルガの首領は、普段は誰にも正体を明かさない。見せるのは、生涯の伴侶と決めた1人だけだと言う。
「…ミコト。」
「もっとだ。」
「ミコト。」
「…ああ、ユウカ。」
「ミコト…。」
「愛している、俺のただ一人の伴侶。」
まるで風に浚われた様に布団に寝かされる。旦那様の中で最も年上ならではのスマートな流れは、胸の鼓動を速めてくれる。この4番目の旦那様に一生の愛を誓われた時は、実は信じられなかった。
1人で生きて1人で死ぬんじゃ無いかと心配だったし、金曜日の夢だけはいつ覚めても不思議じゃないと思っていた。
プロポーズの日は思わず泣いてしまい、彼を慌てさせてしまったものだ。
…
ああ、いつも通り夢から覚めていく。
ん?あれ………………………ここ何処?
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