4 / 9
木曜日
しおりを挟む
あー、やっと木曜日。流石に週末の疲れがくるなあ。
久しぶりに残業は無かった為、帰りに居酒屋で一人飲みを楽しんだ後、気持ち良く帰宅する。化粧を落としてフェイスパックをした後、お風呂に入って室内着に着替える。
日常である一連の流れを終え、ベッドにダイブすると疲れからなのか直ぐに眠気に襲われた。
んー、そういえば友達に返信してないっけ。
端末を手に取ったものの、眠気に抗えず遠退く意識とそのまま心地好く微睡んでいった。
…
目を覚まして気付いた室内は、一つひとつの物は高級そうだが至ってシンプルな佇まいとなっている。
部屋は人柄を映すと言うが、彼に関してはそうは言えないだろう。
奥にある寝室に向かい、広々とした寝台に寝転がる。
「…やあ、私の麗しき妻よ。いつもながら愛らしい顏を見られて、我が身の幸せを噛み締めているよ!」
「こんばんは、ニコラ。」
大げさな身ぶりで愛を伝えてくる相手へ、にこやかに挨拶をしておく。藍色の長い髪を緩く纏めている麗人は、細身で優男といった外見だ。
ニコラ=スコット。大商人で、多くの商業連合を纏めているらしい。彼の采配一つで小さな国なら潰せる、と笑って言っていた時は夢とはいえ驚いたものだ。
「この前言ってた仕事は上手くいったの?」
「ああ!勿論だとも。これも全て、君の存在が私の活力となっているからに違いない。」
いつもながら芝居めいた彼の表現は、決して作ったものでは無くこれが彼の素なのだ。
この3番目の旦那様は、唯一私と同じ年齢だったりする。7歳の時に夢で出会った彼は何処か人形めいていて、毎週此方から話し続けていったことで、やっと感情を見せるようになった。彼から観劇の様なプロポーズを受けた時は、色々な意味で嬉しかったものだ。
私の隣に横になる彼の表情は生き生きとしていて、寝物語に聞かせてくれる彼の仕事の話しは心踊らせてくれるのだ。
視線を感じて顔を向けると、目が合い途端に蕩ける瞳と優しい微笑を贈られる。お互いに横になったまま手を取られ、手の甲にそっと唇を落とされた。
上体を起こす相手の距離が縮まっていき、頬から唇へと時間をかけて口付けられる。
「愛しているよ、君の欲しい物なら世界の果てだとて、全てかき集めて来よう。ユーカ…私の生きる意味であり、生きる為の愛しい人。」
嬉しい、と笑みを返すと相手の瞳が和らぐ。
いつも思う、この夢が覚めなければ良いのにと。
…
夢だと知っているのに、
何で涙が出てくるのかな。
久しぶりに残業は無かった為、帰りに居酒屋で一人飲みを楽しんだ後、気持ち良く帰宅する。化粧を落としてフェイスパックをした後、お風呂に入って室内着に着替える。
日常である一連の流れを終え、ベッドにダイブすると疲れからなのか直ぐに眠気に襲われた。
んー、そういえば友達に返信してないっけ。
端末を手に取ったものの、眠気に抗えず遠退く意識とそのまま心地好く微睡んでいった。
…
目を覚まして気付いた室内は、一つひとつの物は高級そうだが至ってシンプルな佇まいとなっている。
部屋は人柄を映すと言うが、彼に関してはそうは言えないだろう。
奥にある寝室に向かい、広々とした寝台に寝転がる。
「…やあ、私の麗しき妻よ。いつもながら愛らしい顏を見られて、我が身の幸せを噛み締めているよ!」
「こんばんは、ニコラ。」
大げさな身ぶりで愛を伝えてくる相手へ、にこやかに挨拶をしておく。藍色の長い髪を緩く纏めている麗人は、細身で優男といった外見だ。
ニコラ=スコット。大商人で、多くの商業連合を纏めているらしい。彼の采配一つで小さな国なら潰せる、と笑って言っていた時は夢とはいえ驚いたものだ。
「この前言ってた仕事は上手くいったの?」
「ああ!勿論だとも。これも全て、君の存在が私の活力となっているからに違いない。」
いつもながら芝居めいた彼の表現は、決して作ったものでは無くこれが彼の素なのだ。
この3番目の旦那様は、唯一私と同じ年齢だったりする。7歳の時に夢で出会った彼は何処か人形めいていて、毎週此方から話し続けていったことで、やっと感情を見せるようになった。彼から観劇の様なプロポーズを受けた時は、色々な意味で嬉しかったものだ。
私の隣に横になる彼の表情は生き生きとしていて、寝物語に聞かせてくれる彼の仕事の話しは心踊らせてくれるのだ。
視線を感じて顔を向けると、目が合い途端に蕩ける瞳と優しい微笑を贈られる。お互いに横になったまま手を取られ、手の甲にそっと唇を落とされた。
上体を起こす相手の距離が縮まっていき、頬から唇へと時間をかけて口付けられる。
「愛しているよ、君の欲しい物なら世界の果てだとて、全てかき集めて来よう。ユーカ…私の生きる意味であり、生きる為の愛しい人。」
嬉しい、と笑みを返すと相手の瞳が和らぐ。
いつも思う、この夢が覚めなければ良いのにと。
…
夢だと知っているのに、
何で涙が出てくるのかな。
20
お気に入りに追加
185
あなたにおすすめの小説

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

王子様が居ないので、私が王子様になりました。
由紀
恋愛
日本三大名家『春宮家』の一人娘 春宮 千里。女では跡目を継げぬ為、父を説得すれば「3年間男としてバレずに過ごせ」と契約を交わす。
男より男らしく美しい千里は、3年間無事に過ごせるのだろうか…。
※小説家になろう様(ムーンライトノベルズ様)より転載です。元の話を文体等修正しております。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

地下牢の神子
由紀
恋愛
遥か昔、紅の神子、蒼の神子が世界を創った。神子に従い守る十神衆により、十の国が造られる。それから時は流れ、今生には二千年神子が現れず、十神衆の心も乱れ国も荒れつつあった。
(え?神子?十神衆?何それ?!それより私中学生3年で大事な時期なんですけど!え?やっぱり私は神子じゃないんですか?!)という疑問付ばかりで進みます。
※小説家になろう様でも掲載中です。修正しつつ投稿していきます。

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる