美少女アンドロイドが空から落ちてきたので家族になりました。

きのせ

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優しい嘘

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 俺は、護りたかった。ただ……茜とアスカ……いや、俺の家族を護りたかった。俺は、やっとの思いで手に入れた家族を失いたくなかったのだ。それは、人類を裏切る事になったとしても俺は、家族を失うわけには、いかなかった。だから……だから、俺は……アスカと契約をした。翔太を止める力を手に入れる為に。だが、翔太を止めると言う事は、殺すと言う意志を持つ事だ。翔太を殺す……殺さなければ止まらないのなら、俺は奴を殺してでも生き延びてやる。そして、それが茜やアスカを護ると言う事に繋がるのだ。

「俺は、アスカに命令する! あいつを……翔太を止めてくれ!」
「イエス……マイ・ロード(了解……我が主よ)」

アスカは、俺の腹の上に馬乗りになったままの状態でそう呟いた。アスカの腹からは、未だに止まる気配すら見せない擬似血液が流れ出ていた。アスカの顔色は、いっそう青白く……人間であればもう倒れていれもおかしくない様な顔色をしていた。本当に大丈夫なのかと疑ってしまうほどの顔色の悪さだ。

「アスカ……お前、本当に……」

俺は、左手を伸ばしてアスカの頬に触れた。すると、その俺の左手を掴みアスカは、優しく微笑んだ。

「大丈夫だ。燐は、何も心配する事は、ない。私に任せておけ」

アスカは、そう言って俺の上からユックリと立ち上がった。腹から滴り落ちる赤い擬似血液を見れば……とても大丈夫そうに見えない。だがアンドロイドであるアスカがそう言ったのなら、本当に大丈夫なのかもしれない。しかし……アスカの頬に触れた時、俺は……ある事に気がついてしまった。
熱かったのだ。

アスカの頬は、まるで懐炉を触っているような熱さを発していた。大量の擬似血液の出血……人間において……血液とは、栄養、酸素を全身に廻らせるだけでは、なく体温を一定に保つと言う側面も併せ持つ。アンドロイドにおいて血液とは、放熱処理に最も利用しやすい機能では、ないだろうか。つまり、アスカは、大量に出血した事により放熱が追いつかなくなり発熱している。このままアスカの身体の中で熱がこもり続ければ……いったいどうなると言うのだろう。最悪、その熱により内部から崩壊する恐れがあるかもしれない。

「燐、行ってくるよ。あの者を倒しに行ってくる」

アスカは、笑ってた。笑顔でそう言ってからアスカは、背を向ける。

「待て! アスカ!!」

俺の止める声にも振り向かずにアスカは、何処かへ走り去って行った。アスカは、自分が自壊する事を解っているのだ。だから、翔太を道連れにしようと考えている。俺の制止の声を振り切って行ってしまった事がそれを証明しているのではないのか。

「クソ! 何か心配する事はないだと……」

意味がない。茜や俺が助かったとしてもアスカが無事でなければ意味がないのだ。それなのにアスカは、自分一人の犠牲で俺達を助けようとしている。動かすたびに激痛が走る身体を鞭打って俺は、……起き上がった。そして、アスカが向かった後を追う事にした。アスカの後を追うのは、そう難しい事では、ない。皮肉にも地面に残されたアスカの擬似血液の跡を追っていけばいい。アスカが無茶をする前に俺は、止めなければならない。
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