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第9話:デオドラ
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エリスは、居たたまれない様子でトラサムントの私室で佇んで居た。
部屋の入口近くから、エリスはトラサムントの隣に立って居る女性に目を向けた。
高級感のある衣服に身を包んだいかにも貴族といった令嬢であった。
「エリス、君に紹介したい」
トラサムントは、そうきりだした。
「デオドラですわ。エリスさん、あなたの事は彼から聞いているわ。お友達になりましょう」
デオドラはそう言ってエリスの前に進み出るとエリスの右手を両手でぎゅっと握った。
「えぇっと…」
エリスは、戸惑って居た。いきなりトラサムントの私室に呼び出されたかと思ったら、見知らぬ女性から友達になりたいと言われたのだ。今の状況が掴めずエリスは、引きつった笑みを浮かべる。
「トラサムント? どうして、彼女は、そんな事を言うの? 」
「ああ、説明不足だった。彼女は、ベリサリウス家の令嬢でね。つまりさ、婚約したんだよね」
少し照れた様子で言うトラサムントの姿を見て、エリスは開いた口が塞がらなかった。
トラサムントは、この国の王子である。時期が来れば貴族の娘と結婚する事をエリスは、理解していた。しかし、目の前でその現実を突きつけられるとエリスの心が悲鳴を上げていた。
「トラサムントのばーか! ばーか!!」
エリスは、突然そう叫ぶとデオドラの手を振りほどいて部屋を飛び出していった。
「やれやれ。機嫌が良くなるのを待つしかないか」
トラサムントが溜め息をつくとデオドラはくるりと向き直り口を開いた。
「あれは、ヤキモチですよ。とても可愛いわ」
そんなデオドラの言葉を聞いてトラサムントは、クスリと笑みを浮かべる。
部屋の入口近くから、エリスはトラサムントの隣に立って居る女性に目を向けた。
高級感のある衣服に身を包んだいかにも貴族といった令嬢であった。
「エリス、君に紹介したい」
トラサムントは、そうきりだした。
「デオドラですわ。エリスさん、あなたの事は彼から聞いているわ。お友達になりましょう」
デオドラはそう言ってエリスの前に進み出るとエリスの右手を両手でぎゅっと握った。
「えぇっと…」
エリスは、戸惑って居た。いきなりトラサムントの私室に呼び出されたかと思ったら、見知らぬ女性から友達になりたいと言われたのだ。今の状況が掴めずエリスは、引きつった笑みを浮かべる。
「トラサムント? どうして、彼女は、そんな事を言うの? 」
「ああ、説明不足だった。彼女は、ベリサリウス家の令嬢でね。つまりさ、婚約したんだよね」
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「トラサムントのばーか! ばーか!!」
エリスは、突然そう叫ぶとデオドラの手を振りほどいて部屋を飛び出していった。
「やれやれ。機嫌が良くなるのを待つしかないか」
トラサムントが溜め息をつくとデオドラはくるりと向き直り口を開いた。
「あれは、ヤキモチですよ。とても可愛いわ」
そんなデオドラの言葉を聞いてトラサムントは、クスリと笑みを浮かべる。
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