9 / 12
第9話:デオドラ
しおりを挟む
エリスは、居たたまれない様子でトラサムントの私室で佇んで居た。
部屋の入口近くから、エリスはトラサムントの隣に立って居る女性に目を向けた。
高級感のある衣服に身を包んだいかにも貴族といった令嬢であった。
「エリス、君に紹介したい」
トラサムントは、そうきりだした。
「デオドラですわ。エリスさん、あなたの事は彼から聞いているわ。お友達になりましょう」
デオドラはそう言ってエリスの前に進み出るとエリスの右手を両手でぎゅっと握った。
「えぇっと…」
エリスは、戸惑って居た。いきなりトラサムントの私室に呼び出されたかと思ったら、見知らぬ女性から友達になりたいと言われたのだ。今の状況が掴めずエリスは、引きつった笑みを浮かべる。
「トラサムント? どうして、彼女は、そんな事を言うの? 」
「ああ、説明不足だった。彼女は、ベリサリウス家の令嬢でね。つまりさ、婚約したんだよね」
少し照れた様子で言うトラサムントの姿を見て、エリスは開いた口が塞がらなかった。
トラサムントは、この国の王子である。時期が来れば貴族の娘と結婚する事をエリスは、理解していた。しかし、目の前でその現実を突きつけられるとエリスの心が悲鳴を上げていた。
「トラサムントのばーか! ばーか!!」
エリスは、突然そう叫ぶとデオドラの手を振りほどいて部屋を飛び出していった。
「やれやれ。機嫌が良くなるのを待つしかないか」
トラサムントが溜め息をつくとデオドラはくるりと向き直り口を開いた。
「あれは、ヤキモチですよ。とても可愛いわ」
そんなデオドラの言葉を聞いてトラサムントは、クスリと笑みを浮かべる。
部屋の入口近くから、エリスはトラサムントの隣に立って居る女性に目を向けた。
高級感のある衣服に身を包んだいかにも貴族といった令嬢であった。
「エリス、君に紹介したい」
トラサムントは、そうきりだした。
「デオドラですわ。エリスさん、あなたの事は彼から聞いているわ。お友達になりましょう」
デオドラはそう言ってエリスの前に進み出るとエリスの右手を両手でぎゅっと握った。
「えぇっと…」
エリスは、戸惑って居た。いきなりトラサムントの私室に呼び出されたかと思ったら、見知らぬ女性から友達になりたいと言われたのだ。今の状況が掴めずエリスは、引きつった笑みを浮かべる。
「トラサムント? どうして、彼女は、そんな事を言うの? 」
「ああ、説明不足だった。彼女は、ベリサリウス家の令嬢でね。つまりさ、婚約したんだよね」
少し照れた様子で言うトラサムントの姿を見て、エリスは開いた口が塞がらなかった。
トラサムントは、この国の王子である。時期が来れば貴族の娘と結婚する事をエリスは、理解していた。しかし、目の前でその現実を突きつけられるとエリスの心が悲鳴を上げていた。
「トラサムントのばーか! ばーか!!」
エリスは、突然そう叫ぶとデオドラの手を振りほどいて部屋を飛び出していった。
「やれやれ。機嫌が良くなるのを待つしかないか」
トラサムントが溜め息をつくとデオドラはくるりと向き直り口を開いた。
「あれは、ヤキモチですよ。とても可愛いわ」
そんなデオドラの言葉を聞いてトラサムントは、クスリと笑みを浮かべる。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる