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第7話:治水工事
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エリスがツァツォを治水工事から外してから、数ヶ月経った。エリスは、自慢げに工事の進み具合をトラサムントに説明を行って居た。
「治水工事は、順調のようだね」
「でしょ? ここまで来るの苦労したんだから」
少し誇らしげに言うエリスの姿を見て、トラサムントは、安堵の溜息を吐く。貴族達の妨害工作も在ったはずなのに工事進み具合が順調で、トラサムントは、少し安心したのである。正直に言うとトラサムントは、貴族の妨害工作で追い詰められたエリスが直ぐにでも自分に泣きついて来ると思って居た。
トラサムントは、ふと治水工事の作業をしている人達を見て、何か違う違和感を感じた。
「エリス、工事をしている人達は、ヴァンダル人では、ないのか?」
「あれ? 気がついちゃった? そうだよ。国境付近で集落を作っているゴート族だったかな」
「……」
エリスから返って来た回答にトラサムントは、これは、拙いんじゃないかとそう思った。国から受け取った事業をその国の国民であるヴァンダル人に回さず、難民であり、不法に国境付近を占拠しているゴート族に仕事を回した事が貴族達や国民に知られたら、大きな問題になる。
「それとね。これを、見てよ」
エリスがそう言って、トラサムントの目の前に取り出したのは、治水工事を行う為の工具の類だった。だが良く見るとそれは、ただの工具などではなく、貴重な鉄を使った鉄製の工具だったのである。
「これは、……」
トラサムントは、驚きを隠せなかった。鉄は、この時代に置いて、とても貴重な物である。たいていの国では、優先して、戦争の為の武器と防具に鉄を使う。決して、治水工事の為の工具に鉄を使う事なんてしない。
「えへへ、良いでしょ? 木の工具じゃ、捗らなかった工事も。鉄製の工具なら、一気に進んだわ」
「いったい、どうしたんだい?」
「ほら、近くに精鉄場が在るでしょ。頼み込んで、作ってもらったのよ。鉄を武器だけに使うなんて勿体無いわ。もっと、生活に活用すべきよ。ねえ、トラサムントもそう思うでしょ?」
エリスは、無邪気にそう答えた。トラサムントは、ただエリスの楽しそうな笑顔が眩しくて、思わず頷いて居た。
エリスが少し様子を見てくると言って、トラサムントの元から何処かへ走り去ってしまった。トラサムントは、それを見送るように十分離れた事を確認すると口を開いた。
「アリウス!!」
後ろに控えていた従者の名をトラサムントは、叫んだ。
「ハイ、殿下。ここに」
アリウスがトラサムントの前に進み出て、頭を垂れる。
「アリウス、解かっていると思うが……。私の息の掛かった兵士を集めろ。そして、この治水工事現場に作業員以外誰も近づけるな。この地を国民や貴族達に見られるわけにはいかぬ」
「解かりました。そのように手配をいたします」
アリウスは、そう言って頭を上げる。トラサムントは、エリスの守る為に自分の私兵を動かす事にした。この世界の常識、この国の常識と暗黙のルール。エリスの閃きや行動は、予想の遥かかなたへ飛んで行ってしまう。例え、とるに足らない常識やルールと言えども、それを破れば周りから反感を買ってしまうのが世の中だ。トラサムントは、エリスの斜め上の行動を咎めたりしない。むしろそれで良いと思って居た。その上で周りがエリスを攻撃するのであれば、自分が守り通してみせるとそう心の奥底で決意していたのである。
「治水工事は、順調のようだね」
「でしょ? ここまで来るの苦労したんだから」
少し誇らしげに言うエリスの姿を見て、トラサムントは、安堵の溜息を吐く。貴族達の妨害工作も在ったはずなのに工事進み具合が順調で、トラサムントは、少し安心したのである。正直に言うとトラサムントは、貴族の妨害工作で追い詰められたエリスが直ぐにでも自分に泣きついて来ると思って居た。
トラサムントは、ふと治水工事の作業をしている人達を見て、何か違う違和感を感じた。
「エリス、工事をしている人達は、ヴァンダル人では、ないのか?」
「あれ? 気がついちゃった? そうだよ。国境付近で集落を作っているゴート族だったかな」
「……」
エリスから返って来た回答にトラサムントは、これは、拙いんじゃないかとそう思った。国から受け取った事業をその国の国民であるヴァンダル人に回さず、難民であり、不法に国境付近を占拠しているゴート族に仕事を回した事が貴族達や国民に知られたら、大きな問題になる。
「それとね。これを、見てよ」
エリスがそう言って、トラサムントの目の前に取り出したのは、治水工事を行う為の工具の類だった。だが良く見るとそれは、ただの工具などではなく、貴重な鉄を使った鉄製の工具だったのである。
「これは、……」
トラサムントは、驚きを隠せなかった。鉄は、この時代に置いて、とても貴重な物である。たいていの国では、優先して、戦争の為の武器と防具に鉄を使う。決して、治水工事の為の工具に鉄を使う事なんてしない。
「えへへ、良いでしょ? 木の工具じゃ、捗らなかった工事も。鉄製の工具なら、一気に進んだわ」
「いったい、どうしたんだい?」
「ほら、近くに精鉄場が在るでしょ。頼み込んで、作ってもらったのよ。鉄を武器だけに使うなんて勿体無いわ。もっと、生活に活用すべきよ。ねえ、トラサムントもそう思うでしょ?」
エリスは、無邪気にそう答えた。トラサムントは、ただエリスの楽しそうな笑顔が眩しくて、思わず頷いて居た。
エリスが少し様子を見てくると言って、トラサムントの元から何処かへ走り去ってしまった。トラサムントは、それを見送るように十分離れた事を確認すると口を開いた。
「アリウス!!」
後ろに控えていた従者の名をトラサムントは、叫んだ。
「ハイ、殿下。ここに」
アリウスがトラサムントの前に進み出て、頭を垂れる。
「アリウス、解かっていると思うが……。私の息の掛かった兵士を集めろ。そして、この治水工事現場に作業員以外誰も近づけるな。この地を国民や貴族達に見られるわけにはいかぬ」
「解かりました。そのように手配をいたします」
アリウスは、そう言って頭を上げる。トラサムントは、エリスの守る為に自分の私兵を動かす事にした。この世界の常識、この国の常識と暗黙のルール。エリスの閃きや行動は、予想の遥かかなたへ飛んで行ってしまう。例え、とるに足らない常識やルールと言えども、それを破れば周りから反感を買ってしまうのが世の中だ。トラサムントは、エリスの斜め上の行動を咎めたりしない。むしろそれで良いと思って居た。その上で周りがエリスを攻撃するのであれば、自分が守り通してみせるとそう心の奥底で決意していたのである。
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