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第5話:ツァツォ
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エリスは、ホアメルから受けた仕事に行き詰まりを感じて居た。当初の計画通りに街で、人材を取り纏めて仕事を引き受けてくれる人物と契約したのだが。問題は、その人物ツァツォがエリスの指示を聞いてくれない事だった。ツァツォは、国のお抱えの仕事請負業者の頭である。簡単言うと国の事業、主に土木作業を国から、仕事として請負い、街で人材を集めて作業させる言わば現場監督兼社長と言う立場である。
それ故に作業員達は、ツァツォの指示に従うが、逆にツァツォ以外の人物からの指示には、従わない。
エリスが土木作業の仕事を依頼してから、工事は、まるで進んでいなかった。理由は、作業員達が給料が安いだの待遇が悪いだのと駄々をこねて、作業をまったくしないからだった。エリスが提示した給料や待遇は、この時代においては、破格のものだったにもかかわらずである。そして、痺れを切らしたエリスは、頭に血の昇らせながら、責任者であるツァツォの元へ怒鳴り込んで行った。ツァツォの居るレンガ作りの一軒家の中で、エリスは、ツァツォと対峙している。
「いいかげんにして欲しいわ。これじゃ、治水工事が雨季までに終わらないじゃない!!」
エリスがそう言って、ツァツォに食って掛かると、ツァツォは、苦笑いを浮かべた。
「そうは、申されましてもね。作業員達にも事情がありましてね。もう少し、給金を上げてもらえれば、納得して働いてもらえるんですがね」
ツァツォは、物腰の柔らかい口調でそう言った。
「無理よ。それに給金は、十分優遇しているはずよ」
「城の中で、何不自由なく暮らしているお嬢さんには、解からんかもしれませんがね。この処、不景気で物価が高騰しておるんですわ」
嫌味たらしく言うツァツォの言葉にエリスは、眉間を震わせながら、唇をかみ締める。
「物価が高騰してるですって? そんなの聞いた事がないわ!!」
「ですがね……」
のらりくらりと言葉を交わすツァツォの態度にエリスは、頭の線がプツリと切れてしまった。
「いいわ。もういいわ。もう、貴方達には、頼まない。今すぐに治水工事から手を引いて、頂戴」
「はぁぁ!? あんた、自分が言った事を理解してるのか!?」
ツァツォは、エリスの冷静で怒りの篭った言葉に信じられないと言った思いと驚きを持って声を上げた。
エリスは、両腕を組んで、ツァツォを睨みつけたまま微動だにしない。
「言ったままの意味よ。それと、前に払った治水工事の前金を返して頂戴」
「……直ぐに泣き付く事になるぞ!! 治水工事が出きるのは、俺達しか居ない。このツァツォを通さなければ、誰も雇えはしない」
「ええ、解かっているつもりよ」
エリスの冷静な返答にツァツォは、クソっとばかりに舌打ちをすると部屋の奥へ消えると、左手に金貨の入った皮袋を持ってまた直ぐに戻って来た。そして、皮袋をエリスの胸元に向けて投げつけた。
「後悔するなよ!!」
ツァツォは、捨て台詞を吐くとエリスを力ずくで家から叩きだした。エリスは、よろめきツァツォの家の前で尻餅を付く。だが、エリスは、無言で立ち上がって、ツァツォの家を後にするのだった。暫く街の道なりに歩いた所で、エリスは、ピタリと歩むのを止めてしまった。そして、その場にうずくまる。
「あーーーっ!! やっちゃった。これから、どうしよう!?」
エリスは、両手で頭を抱えながら、そう叫んで居た。治水工事を行う人手をエリスは、自分から解雇してしまったのである。代わりの人材を探さなければならないが。ツァツォ程の人物は、この国に居ないし、そう簡単に人を集める事ができない事をエリスは、思い出して後悔した。
それ故に作業員達は、ツァツォの指示に従うが、逆にツァツォ以外の人物からの指示には、従わない。
エリスが土木作業の仕事を依頼してから、工事は、まるで進んでいなかった。理由は、作業員達が給料が安いだの待遇が悪いだのと駄々をこねて、作業をまったくしないからだった。エリスが提示した給料や待遇は、この時代においては、破格のものだったにもかかわらずである。そして、痺れを切らしたエリスは、頭に血の昇らせながら、責任者であるツァツォの元へ怒鳴り込んで行った。ツァツォの居るレンガ作りの一軒家の中で、エリスは、ツァツォと対峙している。
「いいかげんにして欲しいわ。これじゃ、治水工事が雨季までに終わらないじゃない!!」
エリスがそう言って、ツァツォに食って掛かると、ツァツォは、苦笑いを浮かべた。
「そうは、申されましてもね。作業員達にも事情がありましてね。もう少し、給金を上げてもらえれば、納得して働いてもらえるんですがね」
ツァツォは、物腰の柔らかい口調でそう言った。
「無理よ。それに給金は、十分優遇しているはずよ」
「城の中で、何不自由なく暮らしているお嬢さんには、解からんかもしれませんがね。この処、不景気で物価が高騰しておるんですわ」
嫌味たらしく言うツァツォの言葉にエリスは、眉間を震わせながら、唇をかみ締める。
「物価が高騰してるですって? そんなの聞いた事がないわ!!」
「ですがね……」
のらりくらりと言葉を交わすツァツォの態度にエリスは、頭の線がプツリと切れてしまった。
「いいわ。もういいわ。もう、貴方達には、頼まない。今すぐに治水工事から手を引いて、頂戴」
「はぁぁ!? あんた、自分が言った事を理解してるのか!?」
ツァツォは、エリスの冷静で怒りの篭った言葉に信じられないと言った思いと驚きを持って声を上げた。
エリスは、両腕を組んで、ツァツォを睨みつけたまま微動だにしない。
「言ったままの意味よ。それと、前に払った治水工事の前金を返して頂戴」
「……直ぐに泣き付く事になるぞ!! 治水工事が出きるのは、俺達しか居ない。このツァツォを通さなければ、誰も雇えはしない」
「ええ、解かっているつもりよ」
エリスの冷静な返答にツァツォは、クソっとばかりに舌打ちをすると部屋の奥へ消えると、左手に金貨の入った皮袋を持ってまた直ぐに戻って来た。そして、皮袋をエリスの胸元に向けて投げつけた。
「後悔するなよ!!」
ツァツォは、捨て台詞を吐くとエリスを力ずくで家から叩きだした。エリスは、よろめきツァツォの家の前で尻餅を付く。だが、エリスは、無言で立ち上がって、ツァツォの家を後にするのだった。暫く街の道なりに歩いた所で、エリスは、ピタリと歩むのを止めてしまった。そして、その場にうずくまる。
「あーーーっ!! やっちゃった。これから、どうしよう!?」
エリスは、両手で頭を抱えながら、そう叫んで居た。治水工事を行う人手をエリスは、自分から解雇してしまったのである。代わりの人材を探さなければならないが。ツァツォ程の人物は、この国に居ないし、そう簡単に人を集める事ができない事をエリスは、思い出して後悔した。
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