薄桜記1

綾乃 蕾夢

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彩【いろ】

封じられたモノ

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 封印された鬼の事は正直よくわからない。
 記録の類は残っていないし、見聞きした者もだいぶ歳を重ねている様で、はっきりとした話は聞けてはいない。

 大岩の周りに、簡易的ではあるが結界を張り巡らせた。
「これでひとまず……。
 確か村長むらおさの所のおおじじ様が、この近隣では一番の年寄りか」
 兄様がアゴに手を当て、白髭を蓄えたハゲ頭の柔和なおおじじ様の顔を思い出す様に空を見上げた。




村長むらおさはいらっしゃいますか?
 大岩の事でおおじじ様にお話を伺いたい」
 村に帰ったその足で村長の家へおもむいた。
 数羽のニワトリが自由気ままに歩き回る広い庭は、それだけで権力者の地位の高さを象徴している様に思える。

 ニワトリにえさを撒いていた小さな奉公人のおミヨは、ふっくらとしたりんご色の頬に可愛らしいエクボを作ると、奥へと戻っていった。兄様と私は程なくして奥座敷に通される。
  
「大岩の事でお話とか。
 このじじにお話できる事であれば」
 座敷に座る村長とおおじじ様の向かいに兄様が座り、私は少し後ろに立ったまま控える。

「先程、思うところがあり大岩を観て参りました。
 一年程前、私の貼り替る前の札はそれは年季の入った札。一体いつ頃からあの大岩を守っていたのでしょう。
 あそこには、何が封じられているのですか」

 沈み込む様な沈黙を破ったのは、おおじじ様のゆっくりとした、けれども力のある言葉。
「ワシがまだとおにもならないわらしの頃の話でございます」
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