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だいたいこんな感じ
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お昼休みの終了を知らせるチャイムに教室に滑り込んだあたしは、肩で大きく息をしながら席の椅子を引き出した。
「ギリギリセーフだね」
席に戻る深雪がポスっとあたしの肩を叩いていく。
「ヤバかったぁ。ぁぁあああ!
ランチバッグ。生徒会室に忘れてきた」
机の脇に掛けようとしたランチバッグを持ってなぁい。
手ぶらの自分にびっくりだよ。
むぅ。リカコさんにLINEしておこう。
♯♯♯
放課後の中央階段を上るあたしの後ろには、深雪と夏美と愛梨の姿。
わざわざ一緒に来ることないのに生徒会室が見たいとか言って、この行列。
「今日は外の部活で推しメン巡りする予定なんだけど、深雪も行く?」
「んー。どうしようかな」
夏美のお誘いにうわの空の深雪は、やっぱりカイリとリカコさんのことが気になっているのかな。
一つ上の学年のことだし、あたしたちの日常に食い込んでくることじゃないんだけど、カイリとリカコさんのことは公認っていうか暗黙の了解っていうか。
とにかく「そういうこと」で落ち着いたらしい。
まあ、リカコさんには言いたいことがいろいろあるみたいだけど、周囲が収束するまではあまりことを荒げない方向で行くことに決定したみたい。
特別教室が並ぶこの階に踏み出そうとしたあたしの足は、耳に届いた優しい笑い声に歩みを止めた。
聞き覚えのあるこの声は、リカコさん?
なんとなく、こっそりと覗き込んだ廊下の奥には、松葉杖を立てかけて壁に背中を預けるカイリと生徒会室の鍵を開けるリカコさん。
他愛ない話をしながらお互いにこぼれる笑みは、誰から見ても打ち解けて付き合いの長い間柄を感じさせちゃう。
「わ。なんかいい雰囲……気」
あたしの後ろから顔を覗きこませて来た夏美の、ポロリとこぼれた一声にその場が凍った。
ああぁ。深雪ちゃぁん。なんてタイミングの悪い……。
フォローのフの字も出てこないよ。
「いいの。もういいの」
今度はうわ言のようにつぶやき始めた深雪に、ちょっと大袈裟に声を張るカイリの一言が届いた。
「オーマイガー。リカコの今日はグッデイだったか?」
『……………………』
どんな状況で出た?
そのセリフ。
慣れた感じでサラリと流したリカコさんの大人の対応で、あたし達には気が付かなかった2人は、会話を続けながら生徒会室に入って行った。
けど。
恐る恐る振り返ったあたしの目前には、カイリの痛セリフに完全に凍りついた深雪以下3名。
「あー。こんな……感じ?」
「うーん。だいたいこんな感じ」
あたしの答えを聞いた深雪が、廊下の窓から見える青い空を遠く眺めた。
「夏美」
「あ。はい」
急に呼ばれた夏美がビシッと直立。
「一緒に行くわ。推しメン巡り」
うん。それがいいと思う。
「ギリギリセーフだね」
席に戻る深雪がポスっとあたしの肩を叩いていく。
「ヤバかったぁ。ぁぁあああ!
ランチバッグ。生徒会室に忘れてきた」
机の脇に掛けようとしたランチバッグを持ってなぁい。
手ぶらの自分にびっくりだよ。
むぅ。リカコさんにLINEしておこう。
♯♯♯
放課後の中央階段を上るあたしの後ろには、深雪と夏美と愛梨の姿。
わざわざ一緒に来ることないのに生徒会室が見たいとか言って、この行列。
「今日は外の部活で推しメン巡りする予定なんだけど、深雪も行く?」
「んー。どうしようかな」
夏美のお誘いにうわの空の深雪は、やっぱりカイリとリカコさんのことが気になっているのかな。
一つ上の学年のことだし、あたしたちの日常に食い込んでくることじゃないんだけど、カイリとリカコさんのことは公認っていうか暗黙の了解っていうか。
とにかく「そういうこと」で落ち着いたらしい。
まあ、リカコさんには言いたいことがいろいろあるみたいだけど、周囲が収束するまではあまりことを荒げない方向で行くことに決定したみたい。
特別教室が並ぶこの階に踏み出そうとしたあたしの足は、耳に届いた優しい笑い声に歩みを止めた。
聞き覚えのあるこの声は、リカコさん?
なんとなく、こっそりと覗き込んだ廊下の奥には、松葉杖を立てかけて壁に背中を預けるカイリと生徒会室の鍵を開けるリカコさん。
他愛ない話をしながらお互いにこぼれる笑みは、誰から見ても打ち解けて付き合いの長い間柄を感じさせちゃう。
「わ。なんかいい雰囲……気」
あたしの後ろから顔を覗きこませて来た夏美の、ポロリとこぼれた一声にその場が凍った。
ああぁ。深雪ちゃぁん。なんてタイミングの悪い……。
フォローのフの字も出てこないよ。
「いいの。もういいの」
今度はうわ言のようにつぶやき始めた深雪に、ちょっと大袈裟に声を張るカイリの一言が届いた。
「オーマイガー。リカコの今日はグッデイだったか?」
『……………………』
どんな状況で出た?
そのセリフ。
慣れた感じでサラリと流したリカコさんの大人の対応で、あたし達には気が付かなかった2人は、会話を続けながら生徒会室に入って行った。
けど。
恐る恐る振り返ったあたしの目前には、カイリの痛セリフに完全に凍りついた深雪以下3名。
「あー。こんな……感じ?」
「うーん。だいたいこんな感じ」
あたしの答えを聞いた深雪が、廊下の窓から見える青い空を遠く眺めた。
「夏美」
「あ。はい」
急に呼ばれた夏美がビシッと直立。
「一緒に行くわ。推しメン巡り」
うん。それがいいと思う。
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