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一緒に行こう2
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目も眩むような閃光に耳をつんざく爆音。
それらを覚悟して閉じた瞳には物足りない、夕方のお日様の優しい光と爆竹のような連続した爆発音にあたしは面を上げた。
手持ち花火のようにカラフルな火花を散らすレインボーボールを踏みつけようとしていたキバが驚きからかバランスを崩し、そこにイチがキバの軸足に踏まれた利き手と足首を掴んでいた左手を同時に引いたことで、キバが背中から倒れていく。
キバの背後から、先行して来ていたジュニアが助走のついた警棒の一撃を振りかぶった。
地面に左手を着き転倒を免れたキバは、無理な体勢から身体を捻りジュニアの一撃をかわすと、そのまま地面を転がって上半身を起こす。
あたしだってただ見ているだけじゃない。
手を着いた時のキバの顔が痛みをこらえたように見えた。
キバに向かい走り込み、上半身を起こしたその首元を狙いキバの左側から蹴りを叩き込んでやる。
とっさに出るカバーの左腕はあたしの蹴りすら受け止めきれずに、再びキバの身体は無様に地面を転がった。
やっぱり。
「対象、左腕負傷!」
怒りの形相であたしを睨みつけたその顔を、あたしも負けずに睨み返す。
キバ大っ嫌い。絶対絶対負けないもん。
距離を取ってあたしの左右に立つイチとジュニアが、油断なく戦闘態勢を保つ。
「形勢逆転だな」
構える警棒を持つイチの手は踏みにじられて、皮膚の裂傷が酷い。
一番体力のないあたしを狙えばイチとジュニアのフォローが入る。
参戦したばかりのジュニアはキバとは初顔合わせだったはず。
戦力未知に手は出さないとみると、抜け道の狙いは……イチ。
「嫌だねぇ」
膝をつき、キバがゆっくりと立ち上がる。
「多勢に無勢なんて、可哀想な俺への弱いものいじめじゃないか」
土に汚れた頬を拭い、あたしに向ける睨みつけるような強い視線。
「日本は民主主義だからね。それならむしろ数の暴力って言ってほしいな」
なぜか楽しそうなジュニアの一言にキバがチラリと視線を移した。
「へぇ。お前は思考が似てるんだな。連れて帰ったら、アイツと話が合いそうだ」
アイツ……?
誘拐を匂わせる一言一言に警戒が増していく。
「なあっ!」
呼びかけるその大きな一声は、あたしたちの誰でもなくジュニアとあたしの間を通ってその先に向けられた。
まさか援護が?
フェイクの可能性も十分にあるとわかってはいても、その一言には逆らえない魔力がある。
肩を引き、振り返ってしまったあたしの視界の中で、カイリに右腕を抑えられていた杉山が小さく左腕をカイリの太ももに押し当てたように見えた。
「だっぁっ」
こちらの戦闘に集中していたカイリには、死角からの不意打ちの一撃。
捻り上げるように引き抜いた杉山の手には、紅い筋を引くメスに似た銀のナイフ!
「カイリっ」
近くにいたリカコさんが思わず差し出した手を握ったのは、カイリを突き飛ばした杉山の手。
「っ」
そのまま抱え込むようにリカコさんを捕まえると、紅くぬらりと雫を垂らしたナイフを頬に当てた。
リカコさんっ。
「いい隠し玉だっただろう?
ま、アイツとしてもここで実績残しておかないとなんない事情ってのがあんのよ。兄貴も掴っちまったしな」
あごで杉山にここまで来るように、キバが合図した。ゆっくりと警戒しながら歩いてくる2人に、あたしたちは手が出せない。
「ようこそリカコちゃん。一緒に行こうか。まさか駅でデートに誘ったこと、もう忘れちゃったなんて言わないよな」
そう言ったキバが、芝居がかった仕草で大きく両手を広げた。
それらを覚悟して閉じた瞳には物足りない、夕方のお日様の優しい光と爆竹のような連続した爆発音にあたしは面を上げた。
手持ち花火のようにカラフルな火花を散らすレインボーボールを踏みつけようとしていたキバが驚きからかバランスを崩し、そこにイチがキバの軸足に踏まれた利き手と足首を掴んでいた左手を同時に引いたことで、キバが背中から倒れていく。
キバの背後から、先行して来ていたジュニアが助走のついた警棒の一撃を振りかぶった。
地面に左手を着き転倒を免れたキバは、無理な体勢から身体を捻りジュニアの一撃をかわすと、そのまま地面を転がって上半身を起こす。
あたしだってただ見ているだけじゃない。
手を着いた時のキバの顔が痛みをこらえたように見えた。
キバに向かい走り込み、上半身を起こしたその首元を狙いキバの左側から蹴りを叩き込んでやる。
とっさに出るカバーの左腕はあたしの蹴りすら受け止めきれずに、再びキバの身体は無様に地面を転がった。
やっぱり。
「対象、左腕負傷!」
怒りの形相であたしを睨みつけたその顔を、あたしも負けずに睨み返す。
キバ大っ嫌い。絶対絶対負けないもん。
距離を取ってあたしの左右に立つイチとジュニアが、油断なく戦闘態勢を保つ。
「形勢逆転だな」
構える警棒を持つイチの手は踏みにじられて、皮膚の裂傷が酷い。
一番体力のないあたしを狙えばイチとジュニアのフォローが入る。
参戦したばかりのジュニアはキバとは初顔合わせだったはず。
戦力未知に手は出さないとみると、抜け道の狙いは……イチ。
「嫌だねぇ」
膝をつき、キバがゆっくりと立ち上がる。
「多勢に無勢なんて、可哀想な俺への弱いものいじめじゃないか」
土に汚れた頬を拭い、あたしに向ける睨みつけるような強い視線。
「日本は民主主義だからね。それならむしろ数の暴力って言ってほしいな」
なぜか楽しそうなジュニアの一言にキバがチラリと視線を移した。
「へぇ。お前は思考が似てるんだな。連れて帰ったら、アイツと話が合いそうだ」
アイツ……?
誘拐を匂わせる一言一言に警戒が増していく。
「なあっ!」
呼びかけるその大きな一声は、あたしたちの誰でもなくジュニアとあたしの間を通ってその先に向けられた。
まさか援護が?
フェイクの可能性も十分にあるとわかってはいても、その一言には逆らえない魔力がある。
肩を引き、振り返ってしまったあたしの視界の中で、カイリに右腕を抑えられていた杉山が小さく左腕をカイリの太ももに押し当てたように見えた。
「だっぁっ」
こちらの戦闘に集中していたカイリには、死角からの不意打ちの一撃。
捻り上げるように引き抜いた杉山の手には、紅い筋を引くメスに似た銀のナイフ!
「カイリっ」
近くにいたリカコさんが思わず差し出した手を握ったのは、カイリを突き飛ばした杉山の手。
「っ」
そのまま抱え込むようにリカコさんを捕まえると、紅くぬらりと雫を垂らしたナイフを頬に当てた。
リカコさんっ。
「いい隠し玉だっただろう?
ま、アイツとしてもここで実績残しておかないとなんない事情ってのがあんのよ。兄貴も掴っちまったしな」
あごで杉山にここまで来るように、キバが合図した。ゆっくりと警戒しながら歩いてくる2人に、あたしたちは手が出せない。
「ようこそリカコちゃん。一緒に行こうか。まさか駅でデートに誘ったこと、もう忘れちゃったなんて言わないよな」
そう言ったキバが、芝居がかった仕草で大きく両手を広げた。
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