96 / 121
お弁当の中身
しおりを挟む
アギトの確保から10日目。
今日の夕方には勾留期限が切れちゃう。
「あれから何の音沙汰もないよね」
生徒会室でお昼ご飯を広げるあたしたちには現状を見守ることしかできないのがもどかしい。
〈おじいさま〉から進捗情報が入って来るなんてことは、まず無い。
ジュニアがちょくちょく捜査1課のパソコンに(こっそり)お邪魔しているみたいだけど、中々話は進展してないみたいだし。
「一応イチとカエちゃんが襲撃された件は被害届を提出したし、〈おじいさま〉が圧力をかければ受理はされるとは思うけど」
リカコさんがお弁当の卵焼きをお箸でつまんで口に運ぶ。
「あ。カエの煮物美味しそう」
「えへへー。昨日リカコさんと一緒に作ったお夕飯の煮物。美味しく出来たもん」
購買のおにぎり片手にお弁当を覗き込む、ジュニアにドヤ顔しちゃう。
「ちゃんと料理の腕上がってる?」
「頑張ってるわよ」
疑い顔のジュニアに、リカコさんもフォローしてくれて煮物の人参をパクリ。
「そう言えばカイリって、ご飯は作るけどお弁当は作らないよね」
いつも買い弁の3人に、ふとした疑問。
「俺は作ってもいいんだけど、ちょっとクレームが多くて」
なんでだろ。
あたしの視線にイチがムスッと口を開く。
「カイリは学年違うからまだいいよ。
作ってくれんのはもちろんありがたいんだけど、俺とジュニアはクラスも一緒だし、男2人が顔付き合わせて食ってる弁当の中身が毎日全く同じって、はたから見たら怪しいことこの上ないだろ」
「あははっ。た、確かにそれは、ぶぶっ怪し過ぎる」
想像しただけで笑いが止まらない。
リカコさんも口元を抑えて声を殺してるけど、切れ長の目尻から涙出てるし。
「ほらほら、誰か着信鳴ってるぞ」
「ふふ。私だわ」
笑い声に紛れる音にカイリが反応して、リカコさんがランチバッグを引き寄せた。
ちらりと画面の着信相手を確認して、リカコさんが息を整える。
「はい。ええ、大丈夫よ」
軽い受け答えで話していたリカコさんが急に眉を寄せた。
どうしたんだろう。
「どこで? うん。ありがとう」
更に2、3言。通話を切ったリカコさんに視線が集まる。
「葵ちゃんからの情報提供だったんだけど。さっき元組対5課の杉山刑事が、本庁の前で確保されたわ。
罪状は、反社会的勢力への情報提供及び加担。で、確保には失敗したけど、どうやらキバが一緒にいたみたいなの」
キバが、いた。
杉山兄の確保もびっくりだけど、キバの出現に部屋の空気が一気に引き締まって感じた。
「アギト。確かまだ本庁の留置場に入っているはず。
まさか、キバは奪還を狙ったのかな」
ジュニアがむむむって顔で唸ってる。
「え。東京拘置所にいるんじゃないの?」
てっきりあの大きな拘置所に入っているものだとばっかり思ってた。
「まだ起訴された訳じゃないからね。取り調べもあるし、勾留先は留置場だよ」
「…………うん」
にこにこ笑うジュニアの言ってることの半分……5分の1位は分かったと思う。
多分。
「まぁ、難しい話は置いておいて。本庁の留置場から連れ出すなんてこと、本気でやったって出来るわけないわ」
リカコさんの細い指先が、唇に触れる。
「何か、目的は別にあったんだと思う」
今日の夕方には勾留期限が切れちゃう。
「あれから何の音沙汰もないよね」
生徒会室でお昼ご飯を広げるあたしたちには現状を見守ることしかできないのがもどかしい。
〈おじいさま〉から進捗情報が入って来るなんてことは、まず無い。
ジュニアがちょくちょく捜査1課のパソコンに(こっそり)お邪魔しているみたいだけど、中々話は進展してないみたいだし。
「一応イチとカエちゃんが襲撃された件は被害届を提出したし、〈おじいさま〉が圧力をかければ受理はされるとは思うけど」
リカコさんがお弁当の卵焼きをお箸でつまんで口に運ぶ。
「あ。カエの煮物美味しそう」
「えへへー。昨日リカコさんと一緒に作ったお夕飯の煮物。美味しく出来たもん」
購買のおにぎり片手にお弁当を覗き込む、ジュニアにドヤ顔しちゃう。
「ちゃんと料理の腕上がってる?」
「頑張ってるわよ」
疑い顔のジュニアに、リカコさんもフォローしてくれて煮物の人参をパクリ。
「そう言えばカイリって、ご飯は作るけどお弁当は作らないよね」
いつも買い弁の3人に、ふとした疑問。
「俺は作ってもいいんだけど、ちょっとクレームが多くて」
なんでだろ。
あたしの視線にイチがムスッと口を開く。
「カイリは学年違うからまだいいよ。
作ってくれんのはもちろんありがたいんだけど、俺とジュニアはクラスも一緒だし、男2人が顔付き合わせて食ってる弁当の中身が毎日全く同じって、はたから見たら怪しいことこの上ないだろ」
「あははっ。た、確かにそれは、ぶぶっ怪し過ぎる」
想像しただけで笑いが止まらない。
リカコさんも口元を抑えて声を殺してるけど、切れ長の目尻から涙出てるし。
「ほらほら、誰か着信鳴ってるぞ」
「ふふ。私だわ」
笑い声に紛れる音にカイリが反応して、リカコさんがランチバッグを引き寄せた。
ちらりと画面の着信相手を確認して、リカコさんが息を整える。
「はい。ええ、大丈夫よ」
軽い受け答えで話していたリカコさんが急に眉を寄せた。
どうしたんだろう。
「どこで? うん。ありがとう」
更に2、3言。通話を切ったリカコさんに視線が集まる。
「葵ちゃんからの情報提供だったんだけど。さっき元組対5課の杉山刑事が、本庁の前で確保されたわ。
罪状は、反社会的勢力への情報提供及び加担。で、確保には失敗したけど、どうやらキバが一緒にいたみたいなの」
キバが、いた。
杉山兄の確保もびっくりだけど、キバの出現に部屋の空気が一気に引き締まって感じた。
「アギト。確かまだ本庁の留置場に入っているはず。
まさか、キバは奪還を狙ったのかな」
ジュニアがむむむって顔で唸ってる。
「え。東京拘置所にいるんじゃないの?」
てっきりあの大きな拘置所に入っているものだとばっかり思ってた。
「まだ起訴された訳じゃないからね。取り調べもあるし、勾留先は留置場だよ」
「…………うん」
にこにこ笑うジュニアの言ってることの半分……5分の1位は分かったと思う。
多分。
「まぁ、難しい話は置いておいて。本庁の留置場から連れ出すなんてこと、本気でやったって出来るわけないわ」
リカコさんの細い指先が、唇に触れる。
「何か、目的は別にあったんだと思う」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~
紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。
行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。
※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お昼寝カフェ【BAKU】へようこそ!~夢喰いバクと社畜は美少女アイドルの悪夢を見る~
保月ミヒル
キャラ文芸
人生諦め気味のアラサー営業マン・遠原昭博は、ある日不思議なお昼寝カフェに迷い混む。
迎えてくれたのは、眼鏡をかけた独特の雰囲気の青年――カフェの店長・夢見獏だった。
ゆるふわおっとりなその青年の正体は、なんと悪夢を食べる妖怪のバクだった。
昭博はひょんなことから夢見とダッグを組むことになり、客として来店した人気アイドルの悪夢の中に入ることに……!?
夢という誰にも見せない空間の中で、人々は悩み、試練に立ち向かい、成長する。
ハートフルサイコダイブコメディです。
かの子でなくば Nobody's report
梅室しば
キャラ文芸
【温泉郷の優しき神は、冬至の夜、囲碁の対局を通して一年の祝福を与える。】
現役大学生作家を輩出した潟杜大学温泉同好会。同大学に通う旧家の令嬢・平梓葉がそれを知って「ある旅館の滞在記を書いてほしい」と依頼する。梓葉の招待で県北部の温泉郷・樺鉢温泉村を訪れた佐倉川利玖は、村の歴史を知る中で、自分達を招いた旅館側の真の意図に気づく。旅館の屋上に聳えるこの世ならざる大木の根元で行われる儀式に招かれられた利玖は「オカバ様」と呼ばれる老神と出会うが、樺鉢の地にもたらされる恵みを奪取しようと狙う者もまた儀式の場に侵入していた──。
※本作はホームページ及び「pixiv」「カクヨム」「小説家になろう」「エブリスタ」にも掲載しています。
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
ガールズバンド“ミッチェリアル”
西野歌夏
キャラ文芸
ガールズバンド“ミッチェリアル”の初のワールドツアーがこれから始まろうとしている。このバンドには秘密があった。ワールドツアー準備合宿で、事件は始まった。アイドルが世界を救う戦いが始まったのだ。
バンドメンバーの16歳のミカナは、ロシア皇帝の隠し財産の相続人となったことから嫌がらせを受ける。ミカナの母国ドイツ本国から試客”くノ一”が送り込まれる。しかし、事態は思わぬ展開へ・・・・・・
「全世界の動物諸君に告ぐ。爆買いツアーの開催だ!」
武器商人、スパイ、オタクと動物たちが繰り広げるもう一つの戦線。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる