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調べられたらホコリが出ちゃう

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 ジュニアにおみやげけんみんなで食べるおやつも買って、心はうきうき。

 お昼ご飯の後に食べるんだぁ。
 ドーナツドーナツ~。

 柔らかい日差しの中をお散歩気分でリカコさんと並んで歩いていく。

 近所のスーパーで買い物を済ませての帰り道は、襲撃の不安なんかが付きまとわなければ最高なのにな。

「今日のお昼は何にするの?」
 お互いに買い物袋は1つずつ。
 少し視線を上げてリカコさんに声を掛けた。
 そのちょっと後方、視界の隅には両手にパンパンの買い物袋を下げるカイリとイチ。ペットボトルとか、重いもの専門。

 ちょっと買い物しすぎたかな。

「そうね」
 そのまま会話を進めようとしたあたしたちに、着信を知らせる電子音が邪魔をしてきた。

「あら、〈おじいさま〉からの直通だわ」
 リカコさんの視線が、ダークな着信音を響かせるショルダーバッグを見下ろす。

「ま。後でいいわ。両手もふさがっているし」
 リカコさんは比較的軽いものを選んで入れた買い物袋をしっかりと両手で持ち直した。


 ###

「1本電話してから行くわね」

 うちで荷物を降ろした後、リカコさんは寮のある階のエレベーター前であたしたちに背中を向けた。

 さっきの電話の折り返しなら寮の中でもいいのに。

 とは言えあたしはカイリとイチと共に、寮に向かって共有の外廊下を進んで行く。

「ただいまぁ」
 両手のふさがったカイリから寮の鍵を受け取って大きくドアを開くと、部屋の窓から出口を見つけた優しい風が外へと通り抜けていった。
「お帰り」
 奥からジュニアの声を聞いて、あたしは邪魔にならないよう狭い玄関を先に通り抜ける。

「うぅー、重かった」
 リビングにドサリと荷物を降ろすカイリとイチの後ろから、リカコさんも戻ってきた。

「リカコがイヤな顔してる」
 ジュニアの一言に、あたしも視線を上げてカイリとイチがリカコさんを振り返る。

「さっきの〈おじいさま〉からの電話?」
 あたしの問いかけに、なんだか寂しそうにも見える瞳で、リカコさんがうなづいた。


 ###

「証拠かぁ」
 ソファに座り、あたしは首を折るように真上の天井を見上げた。
 〈おじいさま〉からの電話の内容はアギトの勾留こうりゅう期間のこと。
「まあ、ちょっとこうなるんじゃないかって思ってはいたんだ」
 ジュニアの軽めの一言に、あたしは天井を向いたまま隣に座る彼に視線を移した。

「どういうことだ?」
 冷蔵庫に食材をしまって、遅れて席に着くカイリの質問にジュニアが口を開く。

「国内に入ってからアギトはどんな悪事を働いたでしょうか?」
「ええと。最初に会ったのはイチと一緒にいた時の襲撃しゅうげき。キバも一緒だった」
 あたしの視線が、ジュニアとは反対側の隣に座るイチに向かう。
「次は……カイリと俺が出た現場だ。撤退の時に倉庫街でからまれた」
 イチの視線がジュニアに戻る。

「うん。で、最後にカエと追いかけっこをして、空き地で確保されちゃった。
 カエもイチもケガはしたけど、アギトがやったことはせいぜい傷害罪しょうがいざいだよ。
 僕たちも立場上、おおやけに襲撃の事実を話せない。話せば捜査が入るし調べられたら窒息しちゃうくらいホコリが出ちゃう。
 間宮家の襲撃に加担かたんしていたら、せりかさんに被害届を出してもらうことができたけど、あれはキバの単独だったしね」

「つまり?」
 あたしの先をうながす言葉に、ジュニアが小さく肩をすくめた。
「つまり、勾留できてもせいぜい10日が限界。延長も出来るけど、正当な理由が欲しい」
「それで〈おじいさま〉から電話が来たの。
 一度目の襲撃なら被害届が出せるかしらね」

「待って待って。アギトとキバは、餓狼と繋がってるんだよ。餓狼は発砲してるし、殺人の容疑もかかってるもん。そっちの方からどうにかならないの?」
「ならないな。アギトと餓狼の接点は、キバが言った『餓狼兄がろうにぃ』の一言だけ、聞いたのは俺とカエだけだ。
 一緒にいるところは誰も見ていないし、俺がアギトなら餓狼を守るためにしらを切る」
 むぅぅ。いい線だと思ったのになぁ。

厄介やっかいなことがもう1つあるよ」
 ジュニアがピッと人差し指を立てた。

「僕がアギトなら退去強制を狙う。強制送還とか国外退去処分って言われるやつね。
 餓狼の仕事も終わったし、偽造パスポートでも出せば一発だよ。後は飛行機から降りて警備も薄くて人の多い空港で逃げればいい」
「ええっ。そんなのダメだよ。例え強制送還されても、あんなのにウロウロさせてたら気が休まらないよ」
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