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僕の情報網を甘く見ちゃ困るよね
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月曜日は定例会。
今日は先週木曜日の報告会と、今週の予定かな。キバとアギトのこと、急に電話かけてきたこととか、まだ教えてくれないことも多いし。
放課後の寮はいつもの優しい空気。
深雪を送ってきたあたしたちがいつものようにソファーに座ると、先に帰っていたカイリがあたしの前にミルクティーを出してくれた。
「ありがとう」
お向かいに座るリカコさんはコーヒーに口をつけている。
「あれ。なんだかのんびりなんだけど」
はぁ。甘いミルクティーの香りに癒される。
「俺コーヒー」
「僕紅茶。オレンジジュース3分の1とガムシロ1個半入れて」
着替えて部屋から出てきたイチとジュニアがキッチンの前を通り過ぎ、あたしの座るソファーの両脇に腰を下ろす。
「お。なんか新しいワザ」
両手にカップを抱えてジュニアを見ると、にぱーっといたずらっ子の微笑み。
ん?
「昨日リカコがカフェで飲んでたんだって。美味しそうだからやってみようと思って」
ジュニアの視線がリカコさんに向かう。
「めんどくさいから自分でやってくれ」
お盆に乗せたコーヒーをイチの前に置き、残りはお盆ごとジュニアの前へ。
コップの中のオレンジジュースとティーポットの紅茶。そして山盛りのガムシロ。
「ケチケチー。そんなんじゃカフェのオーナーにはなれないよ」
「ならないよ」
カイリも自分の分のコーヒーを持ってリカコさんの隣の1人用ソファーに腰を下ろす。
「そう言えば、昨日カイリとリカコモールのカフェで目撃されてたらしいよ。深雪ちゃんに」
「そうなの? 普段買い物していても、知り合いに会うなんてなかなか無いのに、そう言う時ってなぜか見られているのよね」
リカコさんの唇から、明らかに重い溜息がもれる。
ジュニアの手がオレンジジュースの入ったコップの内側に沿って、ゆっくりと紅茶を注いでいく。
紅茶はオレンジジュースの上に留まり、ガラスのコップは綺麗な2つの層を作った。
「うん。完璧」
「すごい。可愛い。面白い」
耳で会話は聞いていても、ジュニアの作るオレンジティーに目が釘付け。
ガムシロを垂らすと紅茶の中を濃度の濃いお砂糖成分がふよふよ~っと降りてくる。
「リカコもあんまりカイリを邪険にしちゃダメだよ。お姫様抱っこで運んでくれる人なんて、そうそういないんだから」
「んっ」
ちょうどカップから唇を離したリカコさんが、口元を押さえた。
どうにか吹き出さずに済んだコーヒーは、無事に喉を通過したみたい。
「見てたの?」
それは……。
睨むようなリカコさんの視線に、あたしが話しちゃったことを伝えようとしたのに、ジュニアが次の言葉を被せてくる。
「生徒会の3年にも告られてたでしょ? リカコ先輩モテモテモテ。
僕の情報網を甘く見ちゃ困るよね」
え。
「ええええぇぇぇっっ!」
「へえ」
あたしの隣ではイチが地味ぃに驚いているけど、そんなテンションどころじゃないって!
「そうなの? リカコさん」
思わず身を乗り出すあたしに、リカコさんが落ち着け。とばかりに手で制してくる。
「そういうのじゃないの。体育館の1件があった日に、ちょっと心配してくれて声をかけてくれただけよ」
「ああ。あの時の3年生か」
何やらカイリが思い当たったぞ。
「どんな人? 名前は?」
「背の高いヤツだったかな。確か、す……杉」
「はいはいはい」
ワクワクしちゃうあたしにリカコさんがパンッと手を叩いてその場を押さえにかかる。
「ほら、今日は本当にちゃんとした報告のある定例会なんだから。しっかりと気持ちを切り替えて頂戴。ジュニア、資料」
「にひひん。そんなに焦ることないのにぃ。ちょっとお茶でも飲んで落ち着けば?」
ノートパソコンを開きながらにまにま笑いのジュニアを、リカコさんが睨みつけた。
今日は先週木曜日の報告会と、今週の予定かな。キバとアギトのこと、急に電話かけてきたこととか、まだ教えてくれないことも多いし。
放課後の寮はいつもの優しい空気。
深雪を送ってきたあたしたちがいつものようにソファーに座ると、先に帰っていたカイリがあたしの前にミルクティーを出してくれた。
「ありがとう」
お向かいに座るリカコさんはコーヒーに口をつけている。
「あれ。なんだかのんびりなんだけど」
はぁ。甘いミルクティーの香りに癒される。
「俺コーヒー」
「僕紅茶。オレンジジュース3分の1とガムシロ1個半入れて」
着替えて部屋から出てきたイチとジュニアがキッチンの前を通り過ぎ、あたしの座るソファーの両脇に腰を下ろす。
「お。なんか新しいワザ」
両手にカップを抱えてジュニアを見ると、にぱーっといたずらっ子の微笑み。
ん?
「昨日リカコがカフェで飲んでたんだって。美味しそうだからやってみようと思って」
ジュニアの視線がリカコさんに向かう。
「めんどくさいから自分でやってくれ」
お盆に乗せたコーヒーをイチの前に置き、残りはお盆ごとジュニアの前へ。
コップの中のオレンジジュースとティーポットの紅茶。そして山盛りのガムシロ。
「ケチケチー。そんなんじゃカフェのオーナーにはなれないよ」
「ならないよ」
カイリも自分の分のコーヒーを持ってリカコさんの隣の1人用ソファーに腰を下ろす。
「そう言えば、昨日カイリとリカコモールのカフェで目撃されてたらしいよ。深雪ちゃんに」
「そうなの? 普段買い物していても、知り合いに会うなんてなかなか無いのに、そう言う時ってなぜか見られているのよね」
リカコさんの唇から、明らかに重い溜息がもれる。
ジュニアの手がオレンジジュースの入ったコップの内側に沿って、ゆっくりと紅茶を注いでいく。
紅茶はオレンジジュースの上に留まり、ガラスのコップは綺麗な2つの層を作った。
「うん。完璧」
「すごい。可愛い。面白い」
耳で会話は聞いていても、ジュニアの作るオレンジティーに目が釘付け。
ガムシロを垂らすと紅茶の中を濃度の濃いお砂糖成分がふよふよ~っと降りてくる。
「リカコもあんまりカイリを邪険にしちゃダメだよ。お姫様抱っこで運んでくれる人なんて、そうそういないんだから」
「んっ」
ちょうどカップから唇を離したリカコさんが、口元を押さえた。
どうにか吹き出さずに済んだコーヒーは、無事に喉を通過したみたい。
「見てたの?」
それは……。
睨むようなリカコさんの視線に、あたしが話しちゃったことを伝えようとしたのに、ジュニアが次の言葉を被せてくる。
「生徒会の3年にも告られてたでしょ? リカコ先輩モテモテモテ。
僕の情報網を甘く見ちゃ困るよね」
え。
「ええええぇぇぇっっ!」
「へえ」
あたしの隣ではイチが地味ぃに驚いているけど、そんなテンションどころじゃないって!
「そうなの? リカコさん」
思わず身を乗り出すあたしに、リカコさんが落ち着け。とばかりに手で制してくる。
「そういうのじゃないの。体育館の1件があった日に、ちょっと心配してくれて声をかけてくれただけよ」
「ああ。あの時の3年生か」
何やらカイリが思い当たったぞ。
「どんな人? 名前は?」
「背の高いヤツだったかな。確か、す……杉」
「はいはいはい」
ワクワクしちゃうあたしにリカコさんがパンッと手を叩いてその場を押さえにかかる。
「ほら、今日は本当にちゃんとした報告のある定例会なんだから。しっかりと気持ちを切り替えて頂戴。ジュニア、資料」
「にひひん。そんなに焦ることないのにぃ。ちょっとお茶でも飲んで落ち着けば?」
ノートパソコンを開きながらにまにま笑いのジュニアを、リカコさんが睨みつけた。
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