警視庁の特別な事情2~優雅な日常を取り戻せ~

綾乃 蕾夢

文字の大きさ
上 下
41 / 121

時代が俺に追いついてきた

しおりを挟む
「そこまで」

 カイリの声に、あたしの拳を掴んでいたジュニアがパッと手を開く。

 デコ痛い。
 両手でおデコをさするあたしに、ジュニアがにこっと笑った。

「ちゃんと予備動作を見て動けてる。動体視力も悪くない。
 でも、カエは目先の動きにとらわれがちなんだ。次に相手がどう出るか。
 一手先を感じなくちゃ」

「んー。一手先かぁ」
 脳しんとう狙ったのに、バレてたもんなぁ。
「カエの場合は、最終的に急所狙いで来るとは思っていたけどね」

 むむむ。
「でも……それってさ、あたしと何度か手合わせしているからこそ分かるクセじゃないの?」
「うん。イチは攻撃を避ける時、左に跳びやすいとか、カイリの一撃目は必ず上段蹴りだとかね」

「そうなの?」
 リカコさんが左右を見る。
「考えたことなかった」
 イチがあぐらをかいた足を引き寄せる。
「ミートゥー」

 まぁ、分かってないからこそのクセなんだろうけどね。

「何回か交戦すると、見えてくるよ。クセの強い相手ほど、回避しやすい。今の反省を踏まえてもう一回戦行ってみる?
 代謝が上がってるからさっきよりは良い動きが出来ると思うよ」

「うん。お願いします」


 結局、3戦。
 結果1勝も出来ないままの終了になっちゃった。

 しかし。

「身体がキッツい」
 文字通り道場の畳にひっくり返る。
 汗ダクだし、足もパンパンに張ってすでに筋肉痛。

「いやぁ。よく動いた」
 カイリの声とまばらな拍手。

 首を回すと、その隣に拍手をしながらちょこんと座る2人の女の子。
「ちっち、りったん。いつからそこに居たの?」

 上半身を起こして、剣道教室の小学生ににこっと微笑むけど、あまりの疲労にちゃんと笑えていたかは不明。

「香絵ちゃん先生カッコよかったよ」
 ショートカットで快活に笑うちっちがちょっと内気なお下げ髪のりったんと共に近づいて来る。

「ありがとう。負けちゃったけどね」

「ねえねえ、この中に香絵ちゃん先生の彼氏っているの?」
 唐突にこっそりとちっちが耳打ちしてくる。
 ええええ?

「どしたの、急に」
 ちょっとあせあせしちゃったけど、ちっちの目的はあたしの思うところとは違うみたい。

「あの背の高い人。イケメンだね。背の高い人好き」

 いけめんんんんんん?
 そう言えば随分ぴったりとカイリの隣に座ってたけど。
 背が高ければとりあえずいいってこと?

「りぃは香絵ちゃん先生と試合してた人。にこにこしてて、優しそう」
 りったん。にこにこしてるからって、優しいとは限らないんだよ……。

 あれ。
「えと。あそこの髪の短いお兄さんは?」
 イチの方は向かないように、コソッと二人に聞いてみる。

「えー。なんか、顔が怒ってそうで怖い」
 りったんもうんうんと頷く。
 んー。基本無愛想だからねー。
「たまぁに優しい顔するんだよ」

「なんのフォローをしてるのよ」
 くすくすと笑いながら、リカコさんがタオルを差し出してくれた。

 だって、ねぇ。

 急にすくっと立ち上がったカイリが髪をかきあげる。
「ふっ。時代が俺に追いついてきたか……」
 あ。聞こえてたのね。
 深雪といい、ちっちといい。カイリがモテ期なのかなぁ?

 にこっと笑ったリカコさんがカイリを指差した。
「誰か、海に沈めてきて」
「あいあーい」

 ジュニアがスパンと足払いをかけ、倒れて来た後頭部をイチがキャッチする。
「おぅのおおおぉぉう。ごめんなさぁい」

 足をジュニアにかかえられ、普通に運び出されそうになって泣くカイリにちっちがポツリと呟いた。

「なんか、ウザ」
 低学年にも言われるようじゃモテ期は一生こないかもね。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~

紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。 行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。 ※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お昼寝カフェ【BAKU】へようこそ!~夢喰いバクと社畜は美少女アイドルの悪夢を見る~

保月ミヒル
キャラ文芸
人生諦め気味のアラサー営業マン・遠原昭博は、ある日不思議なお昼寝カフェに迷い混む。 迎えてくれたのは、眼鏡をかけた独特の雰囲気の青年――カフェの店長・夢見獏だった。 ゆるふわおっとりなその青年の正体は、なんと悪夢を食べる妖怪のバクだった。 昭博はひょんなことから夢見とダッグを組むことになり、客として来店した人気アイドルの悪夢の中に入ることに……!? 夢という誰にも見せない空間の中で、人々は悩み、試練に立ち向かい、成長する。 ハートフルサイコダイブコメディです。

かの子でなくば Nobody's report

梅室しば
キャラ文芸
【温泉郷の優しき神は、冬至の夜、囲碁の対局を通して一年の祝福を与える。】 現役大学生作家を輩出した潟杜大学温泉同好会。同大学に通う旧家の令嬢・平梓葉がそれを知って「ある旅館の滞在記を書いてほしい」と依頼する。梓葉の招待で県北部の温泉郷・樺鉢温泉村を訪れた佐倉川利玖は、村の歴史を知る中で、自分達を招いた旅館側の真の意図に気づく。旅館の屋上に聳えるこの世ならざる大木の根元で行われる儀式に招かれられた利玖は「オカバ様」と呼ばれる老神と出会うが、樺鉢の地にもたらされる恵みを奪取しようと狙う者もまた儀式の場に侵入していた──。 ※本作はホームページ及び「pixiv」「カクヨム」「小説家になろう」「エブリスタ」にも掲載しています。

赤い部屋

山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。 真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。 東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。 そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。 が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。 だが、「呪い」は実在した。 「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。 凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。 そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。 「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか? 誰がこの「呪い」を生み出したのか? そして彼らはなぜ、呪われたのか? 徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。 その先にふたりが見たものは——。

ガールズバンド“ミッチェリアル”

西野歌夏
キャラ文芸
ガールズバンド“ミッチェリアル”の初のワールドツアーがこれから始まろうとしている。このバンドには秘密があった。ワールドツアー準備合宿で、事件は始まった。アイドルが世界を救う戦いが始まったのだ。 バンドメンバーの16歳のミカナは、ロシア皇帝の隠し財産の相続人となったことから嫌がらせを受ける。ミカナの母国ドイツ本国から試客”くノ一”が送り込まれる。しかし、事態は思わぬ展開へ・・・・・・ 「全世界の動物諸君に告ぐ。爆買いツアーの開催だ!」 武器商人、スパイ、オタクと動物たちが繰り広げるもう一つの戦線。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...