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性格悪いよっ!
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いやいやいやいや。
今までそこそこ色んな連中と戦って来たけど、こんなにあからさまに「手」を出してくるようなやつは初めて。
一定の距離をとって徐々に後ろへ下がっていく。
正直近づきたくない。近づきたくないいぃぃぃっ!
「そんなにあからさまに引くことないだろ? 俺傷ついちゃうなっっ」
一気に間合いを詰めてくるキバが放つ蹴り足を身体を仰け反らせ、バク転で距離を稼ぐ。
左腕っちょっとキツいな。でもスピードなら負けてない。
どんなにパワーのある拳だって、当たらなければただの腕回し運動だ。
左側から入る上段蹴りを身をかがめてかわすと、舞うような足さばきに中段の回し蹴りが飛んでくるっ!
身長の低いあたしなら、上段蹴りをやり過ごすと踏んでの合わせ技かっ。
小柄なあたしにとって、中段は一番カバーがしにくい。
左前腕で受けたつもりのキバの脛が、肌を叩く音と共に二の腕をかする。
「んっっ!」
痛みに腕が弾かれたっ!
「やっぱり銃創があるんだろう?」
楽しそうに踏み込み、伸びる腕があたしの左腕を追ってくる。
性格悪いよっ!
足を留め、キバの腕の内側を真下から蹴り上げるっ。
「ってぇ!」
つま先の一点集中! 弾いた腕が跳ね上がった。
おかしい。身体つきや捌き方を見ても、カイリ程じゃないけどパワー系のはず。
あたしが吹き飛ばないギリギリのところでパワーセーブしてる?
「あんまりおイタしてると、優しくしてやれないぜっ!」
一気に殺気が膨れ上がり、蹴り足が執拗に左腕を狙ってくる。
空気を裂く音がその威力の程を感じさせ、避けるあたしの腕に風を残していった。
###
飛び退いたイチを追ってアギトが迫る。
「そんな顔するなよっ」
喉元を狙うアギトの上段蹴りを体身を反らしギリギリのところでかわすと、隙間からイチが膝を振り上げるっ!
(この小僧っ、俺の動きが完全に見えてる)
もちろんジュニアと組手を数多くこなして身につけたスキルだ。
イチの膝を首を振ってかわすと互いが間合いを取る。
アギトの視線がチラリとキバを見た。イチの視界の中で腕を弾かれるカエが顔をしかめる。
「わかりやすい弱点だな」
目の前に迫ったアギトの上段蹴りがイチの胸を捉えたっ!
「くっっ!」
息が詰まり動きの止まったイチの首に手が伸びる。
パシィッ!
手刀で払う手の甲に痛みが走り、紅い筋が宙に弧を描いた。
「こんな血の色なんだ。安心しろよ。刻むのは身体だけ。可愛いお顔には傷は付けねぇよ」
医療用メスのようなシルバーのナイフから紅い雫が滴った。
###
視界の隅で、イチが手を押さえて跳びずさるのが写った。
腕を血が流れていく。
「イヤだねぇ。我が兄ながら、流血が好きとか男がいいとか理解できないよ」
キバの攻撃を避けては睨み合う。イチの傷も気になるけど、現状打開の手立てがない。
足を負傷する前に合流して逃走した方が得策か。
ついイチの動向に目がいってしまう。
「気になる?」
踏み込んでくるキバの動きに反応が遅れた。腕をクロスして後方にアスファルトを蹴る!
キバの放った上段の強烈な蹴りに、一気に加速した身体がガードレールに激突したっ!
今までそこそこ色んな連中と戦って来たけど、こんなにあからさまに「手」を出してくるようなやつは初めて。
一定の距離をとって徐々に後ろへ下がっていく。
正直近づきたくない。近づきたくないいぃぃぃっ!
「そんなにあからさまに引くことないだろ? 俺傷ついちゃうなっっ」
一気に間合いを詰めてくるキバが放つ蹴り足を身体を仰け反らせ、バク転で距離を稼ぐ。
左腕っちょっとキツいな。でもスピードなら負けてない。
どんなにパワーのある拳だって、当たらなければただの腕回し運動だ。
左側から入る上段蹴りを身をかがめてかわすと、舞うような足さばきに中段の回し蹴りが飛んでくるっ!
身長の低いあたしなら、上段蹴りをやり過ごすと踏んでの合わせ技かっ。
小柄なあたしにとって、中段は一番カバーがしにくい。
左前腕で受けたつもりのキバの脛が、肌を叩く音と共に二の腕をかする。
「んっっ!」
痛みに腕が弾かれたっ!
「やっぱり銃創があるんだろう?」
楽しそうに踏み込み、伸びる腕があたしの左腕を追ってくる。
性格悪いよっ!
足を留め、キバの腕の内側を真下から蹴り上げるっ。
「ってぇ!」
つま先の一点集中! 弾いた腕が跳ね上がった。
おかしい。身体つきや捌き方を見ても、カイリ程じゃないけどパワー系のはず。
あたしが吹き飛ばないギリギリのところでパワーセーブしてる?
「あんまりおイタしてると、優しくしてやれないぜっ!」
一気に殺気が膨れ上がり、蹴り足が執拗に左腕を狙ってくる。
空気を裂く音がその威力の程を感じさせ、避けるあたしの腕に風を残していった。
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飛び退いたイチを追ってアギトが迫る。
「そんな顔するなよっ」
喉元を狙うアギトの上段蹴りを体身を反らしギリギリのところでかわすと、隙間からイチが膝を振り上げるっ!
(この小僧っ、俺の動きが完全に見えてる)
もちろんジュニアと組手を数多くこなして身につけたスキルだ。
イチの膝を首を振ってかわすと互いが間合いを取る。
アギトの視線がチラリとキバを見た。イチの視界の中で腕を弾かれるカエが顔をしかめる。
「わかりやすい弱点だな」
目の前に迫ったアギトの上段蹴りがイチの胸を捉えたっ!
「くっっ!」
息が詰まり動きの止まったイチの首に手が伸びる。
パシィッ!
手刀で払う手の甲に痛みが走り、紅い筋が宙に弧を描いた。
「こんな血の色なんだ。安心しろよ。刻むのは身体だけ。可愛いお顔には傷は付けねぇよ」
医療用メスのようなシルバーのナイフから紅い雫が滴った。
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視界の隅で、イチが手を押さえて跳びずさるのが写った。
腕を血が流れていく。
「イヤだねぇ。我が兄ながら、流血が好きとか男がいいとか理解できないよ」
キバの攻撃を避けては睨み合う。イチの傷も気になるけど、現状打開の手立てがない。
足を負傷する前に合流して逃走した方が得策か。
ついイチの動向に目がいってしまう。
「気になる?」
踏み込んでくるキバの動きに反応が遅れた。腕をクロスして後方にアスファルトを蹴る!
キバの放った上段の強烈な蹴りに、一気に加速した身体がガードレールに激突したっ!
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