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第27話 外出禁止令を突破せよ!
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『視察の日まで、部屋から一歩も出ずに大人しくしていろ』
フェルナンにそう命じられ、私室に閉じ込められて早数日。
(このまま幽閉されていたら、情報収集できないわ。なんとかして外出禁止令を突破しなきゃ)
ベアトリスは瞳を潤ませ、か弱い乙女を演じてユーリスに泣きついた。
「うぅっ……このまま閉じ込められていたらノイローゼになりそうだわ……お願い、助けて、ユーリス……」
上目遣いで懇願すると、ユーリスは珍しく狼狽えた様子で答えた。
「わ、分かりましたから、泣かないでください。殿下に掛け合ってみます」
「ほんと!? ありがとう、ユーリス!」
ほどなくして、ユーリスがフェルナンを連れて部屋に戻ってきた。
「ヒマ、ヒマ、ヒマ」とブツブツ呟きながら落ち着きなく歩き回るベアトリスを見て、フェルナンが驚愕の面持ちでユーリスに問いかける。
「あいつは、どうしたんだ?」
「軟禁生活で精神的にかなり参っているようです。どうか外出の許可をお与えください。このままでは発狂しかねません」
「あの奇行、ただ事ではないな。頭がおかしくなっては困る。……致し方ない、外出を許可する。セレーナの名代として聖女の公務に復帰せよ!」
「よろしいのですか!?」
フェルナンの言葉に、ベアトリスは満面の笑顔を浮かべた。
「ああ、だが、くれぐれも周囲に身代わりだと見破られないように、細心の注意を払うのだぞ」
「はい、かしこまりました! ありがとうございます、殿下」
素直にお礼を言うと、フェルナンはやや面食らった様子で黙り込んだ。
そして「ふん、なかなか愛い顔をするではないか」と呟いたのだが、念願の外出に喜ぶベアトリスには聞こえていなかった──。
鼻歌を歌いながら聖女ローブを羽織る。
ご機嫌なベアトリスに、ユーリスも「良かったですね」と優しげな微笑を浮かべた。
「うん、ホントに良かったわ。このまま幽閉されていたら病んじゃうところだったもの」
(──というのは嘘だけど。軟禁程度じゃ、私は全然へこたれないわよ)
恩赦を与えられたとしても、世間から見れば自分は元罪人。身代わりを終えたら二度と王宮や神殿に立ち入ることできないだろう。
護衛騎士に監視されているため行動は制限されるが、今のうちに貴重な書物や記録を読んだり、それとなく呪具事件の聞き込みをしてみよう。
(行動開始よ──!)
まずベアトリスが向かったのは神殿内の蔵書室だった。
聖魔法について調べたいことがあったからだ。
(鉱山に追放された後はかなり力が落ちたのに、最近になって急に復活した……いえ、それどころか以前より強まっているのは、なぜかしら?)
文献を片っ端から読んでいると、ふと気になる研究資料を見つけた。
【聖女の力は心と密接に繋がっており、心身の成長により強化される。逆もまたしかりである。憎悪、復讐心、怒り、これらの感情は闇の力を強め、神聖力の減退を招く】
この内容を自身に当てはめてみると、追放され復讐心に駆られたことで神聖力が衰えたが、改心したことで蘇ったということだろう。
(力が強まり続けているということは、今の私はきっと聖女として正しい道を歩めているのよね?)
思案しながらページを捲っていると、ふいに人の気配がしてベアトリスは顔を上げた。
聖女見習いが数人こちらの様子を窺っており、目が合った瞬間、慌ててうつむく。
「わたしになにかご用……?」
「あっ、憧れのセレーナ様がどのような本を読んでいるのか気になってしまって。不躾に申し訳ございません!」
「いいえ、謝らなくて大丈夫……良ければ、こちらで一緒に読書をしましょう」
「よろしいのですか!?」
「ええ、もちろん」
見習いたちが無邪気に駆け寄ってくる。
彼女らが抱えている本を見て、ベアトリスは「あら、それって聖女認定試験のテキスト?」と尋ねた。
「はい。私たち筆記試験を受けるつもりなんです」
「そうなのね。わたしで良ければ、分からないところを教えるわ……遠慮なく、聞いてね」
「あ、ありがとうございます!」
見習たちが緊張の面持ちでペコペコ頭を下げる。
同じテーブルで読書会を始めたものの、彼女たちは完全に萎縮しており全く話しかけてこない。
その様子に、逆に気を遣わせてしまったのかもと申し訳ない気持ちになってくる。
(う~ん、打ち解けるにはどうすれば良いのかしら)
セレーナに化けているからといって、中身は口下手なベアトリス。
すぐに社交性が身につくはずもなく、場を和ませるような話題など思いつかない。
し~んとした空間で居心地の悪い思いをしていると、それまで黙って壁際に控えていたユーリスが小さな紙を差し出してきた。
そこには達筆な字で『趣味』という単語が書かれている。
(なにこれ? 暗号??)
フェルナンにそう命じられ、私室に閉じ込められて早数日。
(このまま幽閉されていたら、情報収集できないわ。なんとかして外出禁止令を突破しなきゃ)
ベアトリスは瞳を潤ませ、か弱い乙女を演じてユーリスに泣きついた。
「うぅっ……このまま閉じ込められていたらノイローゼになりそうだわ……お願い、助けて、ユーリス……」
上目遣いで懇願すると、ユーリスは珍しく狼狽えた様子で答えた。
「わ、分かりましたから、泣かないでください。殿下に掛け合ってみます」
「ほんと!? ありがとう、ユーリス!」
ほどなくして、ユーリスがフェルナンを連れて部屋に戻ってきた。
「ヒマ、ヒマ、ヒマ」とブツブツ呟きながら落ち着きなく歩き回るベアトリスを見て、フェルナンが驚愕の面持ちでユーリスに問いかける。
「あいつは、どうしたんだ?」
「軟禁生活で精神的にかなり参っているようです。どうか外出の許可をお与えください。このままでは発狂しかねません」
「あの奇行、ただ事ではないな。頭がおかしくなっては困る。……致し方ない、外出を許可する。セレーナの名代として聖女の公務に復帰せよ!」
「よろしいのですか!?」
フェルナンの言葉に、ベアトリスは満面の笑顔を浮かべた。
「ああ、だが、くれぐれも周囲に身代わりだと見破られないように、細心の注意を払うのだぞ」
「はい、かしこまりました! ありがとうございます、殿下」
素直にお礼を言うと、フェルナンはやや面食らった様子で黙り込んだ。
そして「ふん、なかなか愛い顔をするではないか」と呟いたのだが、念願の外出に喜ぶベアトリスには聞こえていなかった──。
鼻歌を歌いながら聖女ローブを羽織る。
ご機嫌なベアトリスに、ユーリスも「良かったですね」と優しげな微笑を浮かべた。
「うん、ホントに良かったわ。このまま幽閉されていたら病んじゃうところだったもの」
(──というのは嘘だけど。軟禁程度じゃ、私は全然へこたれないわよ)
恩赦を与えられたとしても、世間から見れば自分は元罪人。身代わりを終えたら二度と王宮や神殿に立ち入ることできないだろう。
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【聖女の力は心と密接に繋がっており、心身の成長により強化される。逆もまたしかりである。憎悪、復讐心、怒り、これらの感情は闇の力を強め、神聖力の減退を招く】
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「いいえ、謝らなくて大丈夫……良ければ、こちらで一緒に読書をしましょう」
「よろしいのですか!?」
「ええ、もちろん」
見習いたちが無邪気に駆け寄ってくる。
彼女らが抱えている本を見て、ベアトリスは「あら、それって聖女認定試験のテキスト?」と尋ねた。
「はい。私たち筆記試験を受けるつもりなんです」
「そうなのね。わたしで良ければ、分からないところを教えるわ……遠慮なく、聞いてね」
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その様子に、逆に気を遣わせてしまったのかもと申し訳ない気持ちになってくる。
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