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いつか手放す愛
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窮屈そうに張った前を、俺はそっと指でなぞる。
その瞬間、ユーリが噛みつくように唇を重ねてきた。
薄く口を開けると、熱い舌が差し込まれ、絡めとられる。互いの吐息が交わり、深く深く、暴かれる。
息つく間もないほど激しく貪られて、俺は目をぎゅっと閉じた。
口の中でユーリの舌が動くたびに、中途半端に愛撫を受けていた自分の昂ぶりと腰が、もどかしく揺れる。
腹の奥にたまった熱を吐き出したくて、どうにかなってしまいそうだ。
早く、彼のが欲しい。
「ん……ぁ、なぁ、もう……」
片手でユーリの胸を少し押して、唇を離す。
もう片方の手で彼の形を確かめるように触りながら、俺は小さな声で呟いた。
「これ……はやく、いれろよ」
普段なら、こんなこと言わない。自分からねだるなんて柄じゃない。けれど、もう我慢の限界だった。
ユーリは何も言わず、眉根を寄せて、耐えるように黙っていた。
彼の熱が、一瞬にして固さと大きさを増し、俺の手の中でビクビクと震えた。
ユーリも、感じている――そう思った途端、嬉しさと、照れくささがこみあげてくる。
伺うように彼の顔を見上げると、ユーリは少し口を開けるて、熱い吐息まじりのため息をついた。
そして、目にかかっていた前髪を片手でかき上げ、いつもより数倍低い声で唸るように囁く。
「優しくしようかなって思ってたんだけど、やっぱりやめる。煽ったのはリオンだからね。もう、泣いても止めないから」
ユーリは月明かりに瞳を爛々と輝かせると、俺の下着ごと、下半身に身に着けていた衣服を全てはぎ取った。
とっさに、あらわになった場所を隠すため足を閉じかけた俺を、いつもより強引な手つきで制する。
ユーリは俺の両ひざに手を置くと、左右に大きく開かせた。
ひんやりとした夜風が俺の昂ぶりを撫ぜる。
それさえも刺激になって、俺は羞恥と快感で半泣き状態になりながら、うろたえた。
「まて、やめ……やめろ、見るな」
「恥ずかしい?こっちも濡れて震えてるね。先からどんどん溢れてくるよ」
やだ、見るな、やめろ――うわごとのように言葉を繰り返す俺に、ユーリは微笑みをこぼすと、顔を伏せた。
ねっとりとした温かい口内に、一番敏感な部分が包まれる。
普段の癖で、声を我慢しようと口を押えかけた瞬間、ユーリが激しく頭を上下させて絞り出すように少し強めに、そこを吸った。
「あっ、あぁ、んっ……んん」
衝撃と暴力的なまでの気持ちよさに、俺はこらえきれず嬌声を上げた。
腹の奥にたまったものを、強引に吸い出される。
こんなに激しくされたことは、今までで一度もなかった。
ユーリが俺に奉仕したがるのはいつもの事だが、普段はもっとゆっくりで、優しく甘いとろかすような責めだ。
なのに今日は、いつもとは違う。
強引で、荒々しくて、激しい。
「んっ、ん……はぁ、あっ、やだ、つよ、ぃ。もっと、ゆっくり。まって、でるから、まっ、て」
卑猥な水音が聞こえるほど、ユーリは俺の熱を激しくいじめた。
舌を絡め、先端を円を書くようにしゃぶり、溢れる雫を舐め取っていく。
前の感覚に気を取られているうちに、後ろに指が挿入されていた。
痛みも違和感もなく、ただ俺の中にある弱い部分を目指して、ユーリの長い指が分け入ってくる。
「だめ、だって。あっ、あ、いま、さわられ、たら。おれっ、がまんでき、な」
喘ぎながら必死に訴えるが、ユーリは手も口も一切とめなかった。
むしろ、こちらをギラギラした目で見つめながら、攻め手を激しくする。
中を探っていた彼の指が、ついに一点をこすり上げた時、俺は腰を突き上げて悲鳴のように高い声で喘いだ。
出したことのない声音が、口から勝手に漏れる。
「あっ、あっ……も、でる。おねが、い。だからっ、ぁ、口離して……ゆーり、ユーリ!」
前を苛め抜かれ、腹の中にあるそこを執拗に責められて、俺はがくがくと腰を振るわせて鳴いた。
足にも腹にも力が入り、全てを出すために意識が注がれる。
「も、だめ、んんッ。ぁっ……はっ。あぁっ」
芝生を握りこみ、体にひと際力が入った瞬間、一気に快楽がはじけた。
まぶたの裏で、白い光がぱちぱちと火花のように飛び散る。
「ぁぁっ……んっ」
薄く涙の膜がはった目を開けると、ユーリが男らしい突き出た喉ぼとけを上下させて、俺の放ったものを飲み干しているのが見えてしまった。
荒く息を吐きながら、俺が涙の滲む声で「ごめん」と呟くと、ユーリは「どうして謝るの?」と少し首を傾げる。
「俺……お前のこと、汚してる。綺麗なお前を、俺が、きたなくしてる」
上品で優雅な貴族。ユーリの体も、人生も、自分が汚した――そう呟くと、彼はすぐさま「違うよ」と即答した。
ぐったりと弛緩した俺の体を抱きしめ、自らの昂ぶりを縁に宛がいながら低い声で囁く。
ひくつく後腔の入り口を、濡れたユーリの先端が何度も往復する。
彼は俺の体に覆いかぶさると、耳を食みながら、言い聞かせるように静かな声音で囁いた。
「リオンが俺を汚してるんじゃない。逆。僕が、何も知らなかった君を汚して、こんな体にしたんだよ。ほら、いまも。こんな風に、ね――」
最後の言葉を言い終わる直前、ユーリは一気に俺の体を貫いた。
「っ――。あぁっ」
「くっ――」
互いに、衝撃で体をこわばらせる。
熱くて、ひどく凶悪なものが中でうごめいて、俺は深く息を吐いた。
ゆるく腰を打ち付けられて、喘ぎながら喉をそらせる。無防備に晒された喉ぼとけにユーリが噛みつくように唇を寄せ、跡をつけていく。
「リオン、目開けて。ここ、見て」
甘やかすように優しい声音で命じられ、言われるがままに瞼を持ち上げた。
ここ――と示された場所。今まさに二人が繋がっている部分を見てしまい、俺は恥ずかしさに、思わず、音にならない吐息だけの声をこぼした。
ユーリは、こちらに見せつけるように一層いやらしい動きで腰を使うと、頬を上気させて艶やかに笑った。
「これでも、自分が僕を汚してるなんて言える?ふふ、言えないよね。君は今、僕にいやらしいことされて、穢されてるんだよ」
頭の中に刻み込むように、ユーリが低い声を、吐息ごと俺の耳に吹き込む。
「可哀そうなのは、君の方だ。ここで気持ち良くなれるよう、僕に教え込まれて。ほら、もう僕なしじゃ、まともに気持ちよくなれないんじゃない?」
「ぁ……んっ、ん」
前と中を、ゆるゆると刺激され、戯れにズンと強く叩きつけるように奥を貫かれる。
緩急つけた卑猥な責め。滴る色気を纏った恋人の姿。
目と、耳と、肌――彼と触れ合うすべての場所から快楽を与えられ、俺は抗うことをやめて、素直にユーリに身を預けた。
「だから、もう二度と。自分が僕を穢して不幸にしてるなんて考え、抱かないでね。わかった、リオン?」
「わかった」
「ほんとうに?」
「んっ、わかった、から。もっと、動けよ……」
「これはお仕置きも兼ねてるからね。僕を忘れて離れようとするなんて、二度と許さない」
ユーリは俺の両ひざを肩にかけると、ぐっと体重をかけて最奥に先端を当ててきた。
そのまま、さっきの穏やかな優しい責めを忘れさせるくらい、激しく腰を振り立てる。
「あっあっ、んっ、おまえ、きゅうに――」
「言ったでしょ。お仕置きだって。んっ、ふふ、乱れてるリオン、すごく綺麗だよ。黒い髪も目も、全部僕のものだ。誰にも渡さないし、手放さない。君の記憶も、体も、心も、すべて僕に頂戴?ねぇ、いいって言って」
男らしく力強い動きの反面、ユーリの表情はとても切なげだった。
声は掠れて、必死に俺を手放すまいと求める気持ちが伝わってくる。
俺は激しく揺さぶられ、弱い部分を暴かれ喘ぎながら、必死に両手を伸ばした。
ユーリの首に腕を絡めると、正面から抱き着くように彼を引き寄せる。
「ユーリ、んっ、ごめん。俺もう、にど、と。離れないよ」
「リオン……リオン。好き、好きだよ。愛してる。いなくならないで。ずっと、僕の一番側にいて」
「いる、ずっと、いるっ、から。あっ、んっ、んん……」
抱き合ったまま口づけをして、中にあるユーリの熱に酔いしれる。
俺の弱い場所を知り尽くした彼が、内壁にある一点を集中して捏ね上げた瞬間、俺は喉の奥から掠れた声を上げて、二度目の絶頂を迎えた。
体が勝手にこわばり、中にあるユーリ自身をきつく食いしめる。
「くっぅ――」
いつもは達する時もあまり声を上げないユーリは、珍しく掠れた吐息交じりの声をこぼすと、俺の中に熱いしぶきをぶちまけた。
「んっ……ぁ、つい」
「ごめ、なかに、だしちゃった……」
謝りながらも、ユーリは一滴も外にこぼさないとばかりに腰を何度も打ち付けて、全てを俺の中に放った。
「あとで、僕が綺麗にかきだすね」
「いい。自分でやる」
「んー、たぶん、君は気を失ってるだろうから、自分でやるのは無理じゃないかな」
爽やかに微笑んで恐ろしいこと言う恋人に、俺は「え」と返した。
「おま、こんな所でまだやるのか」
俺の問いかけに、ユーリは「何言ってるの」と言って微笑んだ。
「まだまだ、これからだよ」
「う、うそだろ……。なぁ、まっ、まって」
未だ俺の中に陣取っているユーリ自身が再び力を取り戻すのを感じて、俺は頬を赤らめながら、顔を真っ青にするという、なんともチグハグな表情をした。
とっさに逃げようとした俺の腰を掴んで、彼がにっこり笑う。
「さて、リオン。休憩は終わりだよ。もっと、気持ちよくしてあげる」
「もう、もういい!十分、満足しましたので結構です!抜きやがれこの野郎!」
「あはは、それだけ元気なら、まだまだ大丈夫だね」
「あっ。やめ、たすけ、たすけてくれっ!あっあっ、んっ、ゃ、ああっ」
優雅で狂暴な獣、もとい俺の恋人が満足したのは、それから数時間後。
うっすら空が白み始める頃だった。
朝の爽やかな風と、自分を抱きしめる腕に身をゆだねながら、俺はゆっくり目を閉じた。
「おやすみ、僕の愛しいリオン。ちゃんと綺麗にして運ぶから、安心してお眠り」
「ん……おやすみ。俺も、お前が……だいすきだ」
眠りに落ちる直前、俺の額に柔らかなものが触れた。
(幸せ、だな)
優しく尊い温もりに包まれながら、ゆっくり眠りの淵に落ちていく。
しっかり手を繋いで、今度は二度と離さないように。
愛しているから自分が側に居ても良いのか不安になる。
でも……。
――こんなに愛されて。求められて。手放すなんて無理だ。だったら俺は、ユーリに相応しい人間になろう。
隣にある温もりに頬をすり寄せ、リオンはもう一度「愛してる」と囁いた。
【作者あとがき】
本作をお手に取り、ここまで読んで下さって、ありがとうございます!
皆様の閲覧、お気に入りや感想が執筆と投稿の励みになりました。
本作は、アルファポリス様で書く初めてのBLで、至らない所も多くあり、根気よく読んで汲み取って下さる読者の皆様には、なんとお礼を申し上げたらよろしいのか……。
感謝してもしきれません。
投稿するたび、お気に入りや感想を頂くたび、毎回PC前で「ありがとうございます」と頭を下げておりました。
心の底より感謝申し上げます。
本作はもう少し続く予定だったのですが、一旦ここで短編完結いたします。
続きを待っていて下さった読者様がいらっしゃいましたら、大変申し訳ございません。
BL作品を読むのは物凄く大好きなのですが、書くのは本当に難しい……。
もっと沢山読んで、研究しなきゃいけないなと痛感致しました。
よりBLについて勉強してスキルアップしてから、いつか、このリオン達のお話しの続きに再挑戦したいと思っております!
某少年ジャ○プの主人公のように、修行期間を経てレベルアップして帰ってきますので、もしよろしければ、またお手に取って頂けると幸いです。
再度になりますが、本作をお手に取り、お気に入りや感想で応援してくださった読者の皆様。
誠にありがとうございました。
また皆様と作品を通して、お目にかかれると幸いです。
その瞬間、ユーリが噛みつくように唇を重ねてきた。
薄く口を開けると、熱い舌が差し込まれ、絡めとられる。互いの吐息が交わり、深く深く、暴かれる。
息つく間もないほど激しく貪られて、俺は目をぎゅっと閉じた。
口の中でユーリの舌が動くたびに、中途半端に愛撫を受けていた自分の昂ぶりと腰が、もどかしく揺れる。
腹の奥にたまった熱を吐き出したくて、どうにかなってしまいそうだ。
早く、彼のが欲しい。
「ん……ぁ、なぁ、もう……」
片手でユーリの胸を少し押して、唇を離す。
もう片方の手で彼の形を確かめるように触りながら、俺は小さな声で呟いた。
「これ……はやく、いれろよ」
普段なら、こんなこと言わない。自分からねだるなんて柄じゃない。けれど、もう我慢の限界だった。
ユーリは何も言わず、眉根を寄せて、耐えるように黙っていた。
彼の熱が、一瞬にして固さと大きさを増し、俺の手の中でビクビクと震えた。
ユーリも、感じている――そう思った途端、嬉しさと、照れくささがこみあげてくる。
伺うように彼の顔を見上げると、ユーリは少し口を開けるて、熱い吐息まじりのため息をついた。
そして、目にかかっていた前髪を片手でかき上げ、いつもより数倍低い声で唸るように囁く。
「優しくしようかなって思ってたんだけど、やっぱりやめる。煽ったのはリオンだからね。もう、泣いても止めないから」
ユーリは月明かりに瞳を爛々と輝かせると、俺の下着ごと、下半身に身に着けていた衣服を全てはぎ取った。
とっさに、あらわになった場所を隠すため足を閉じかけた俺を、いつもより強引な手つきで制する。
ユーリは俺の両ひざに手を置くと、左右に大きく開かせた。
ひんやりとした夜風が俺の昂ぶりを撫ぜる。
それさえも刺激になって、俺は羞恥と快感で半泣き状態になりながら、うろたえた。
「まて、やめ……やめろ、見るな」
「恥ずかしい?こっちも濡れて震えてるね。先からどんどん溢れてくるよ」
やだ、見るな、やめろ――うわごとのように言葉を繰り返す俺に、ユーリは微笑みをこぼすと、顔を伏せた。
ねっとりとした温かい口内に、一番敏感な部分が包まれる。
普段の癖で、声を我慢しようと口を押えかけた瞬間、ユーリが激しく頭を上下させて絞り出すように少し強めに、そこを吸った。
「あっ、あぁ、んっ……んん」
衝撃と暴力的なまでの気持ちよさに、俺はこらえきれず嬌声を上げた。
腹の奥にたまったものを、強引に吸い出される。
こんなに激しくされたことは、今までで一度もなかった。
ユーリが俺に奉仕したがるのはいつもの事だが、普段はもっとゆっくりで、優しく甘いとろかすような責めだ。
なのに今日は、いつもとは違う。
強引で、荒々しくて、激しい。
「んっ、ん……はぁ、あっ、やだ、つよ、ぃ。もっと、ゆっくり。まって、でるから、まっ、て」
卑猥な水音が聞こえるほど、ユーリは俺の熱を激しくいじめた。
舌を絡め、先端を円を書くようにしゃぶり、溢れる雫を舐め取っていく。
前の感覚に気を取られているうちに、後ろに指が挿入されていた。
痛みも違和感もなく、ただ俺の中にある弱い部分を目指して、ユーリの長い指が分け入ってくる。
「だめ、だって。あっ、あ、いま、さわられ、たら。おれっ、がまんでき、な」
喘ぎながら必死に訴えるが、ユーリは手も口も一切とめなかった。
むしろ、こちらをギラギラした目で見つめながら、攻め手を激しくする。
中を探っていた彼の指が、ついに一点をこすり上げた時、俺は腰を突き上げて悲鳴のように高い声で喘いだ。
出したことのない声音が、口から勝手に漏れる。
「あっ、あっ……も、でる。おねが、い。だからっ、ぁ、口離して……ゆーり、ユーリ!」
前を苛め抜かれ、腹の中にあるそこを執拗に責められて、俺はがくがくと腰を振るわせて鳴いた。
足にも腹にも力が入り、全てを出すために意識が注がれる。
「も、だめ、んんッ。ぁっ……はっ。あぁっ」
芝生を握りこみ、体にひと際力が入った瞬間、一気に快楽がはじけた。
まぶたの裏で、白い光がぱちぱちと火花のように飛び散る。
「ぁぁっ……んっ」
薄く涙の膜がはった目を開けると、ユーリが男らしい突き出た喉ぼとけを上下させて、俺の放ったものを飲み干しているのが見えてしまった。
荒く息を吐きながら、俺が涙の滲む声で「ごめん」と呟くと、ユーリは「どうして謝るの?」と少し首を傾げる。
「俺……お前のこと、汚してる。綺麗なお前を、俺が、きたなくしてる」
上品で優雅な貴族。ユーリの体も、人生も、自分が汚した――そう呟くと、彼はすぐさま「違うよ」と即答した。
ぐったりと弛緩した俺の体を抱きしめ、自らの昂ぶりを縁に宛がいながら低い声で囁く。
ひくつく後腔の入り口を、濡れたユーリの先端が何度も往復する。
彼は俺の体に覆いかぶさると、耳を食みながら、言い聞かせるように静かな声音で囁いた。
「リオンが俺を汚してるんじゃない。逆。僕が、何も知らなかった君を汚して、こんな体にしたんだよ。ほら、いまも。こんな風に、ね――」
最後の言葉を言い終わる直前、ユーリは一気に俺の体を貫いた。
「っ――。あぁっ」
「くっ――」
互いに、衝撃で体をこわばらせる。
熱くて、ひどく凶悪なものが中でうごめいて、俺は深く息を吐いた。
ゆるく腰を打ち付けられて、喘ぎながら喉をそらせる。無防備に晒された喉ぼとけにユーリが噛みつくように唇を寄せ、跡をつけていく。
「リオン、目開けて。ここ、見て」
甘やかすように優しい声音で命じられ、言われるがままに瞼を持ち上げた。
ここ――と示された場所。今まさに二人が繋がっている部分を見てしまい、俺は恥ずかしさに、思わず、音にならない吐息だけの声をこぼした。
ユーリは、こちらに見せつけるように一層いやらしい動きで腰を使うと、頬を上気させて艶やかに笑った。
「これでも、自分が僕を汚してるなんて言える?ふふ、言えないよね。君は今、僕にいやらしいことされて、穢されてるんだよ」
頭の中に刻み込むように、ユーリが低い声を、吐息ごと俺の耳に吹き込む。
「可哀そうなのは、君の方だ。ここで気持ち良くなれるよう、僕に教え込まれて。ほら、もう僕なしじゃ、まともに気持ちよくなれないんじゃない?」
「ぁ……んっ、ん」
前と中を、ゆるゆると刺激され、戯れにズンと強く叩きつけるように奥を貫かれる。
緩急つけた卑猥な責め。滴る色気を纏った恋人の姿。
目と、耳と、肌――彼と触れ合うすべての場所から快楽を与えられ、俺は抗うことをやめて、素直にユーリに身を預けた。
「だから、もう二度と。自分が僕を穢して不幸にしてるなんて考え、抱かないでね。わかった、リオン?」
「わかった」
「ほんとうに?」
「んっ、わかった、から。もっと、動けよ……」
「これはお仕置きも兼ねてるからね。僕を忘れて離れようとするなんて、二度と許さない」
ユーリは俺の両ひざを肩にかけると、ぐっと体重をかけて最奥に先端を当ててきた。
そのまま、さっきの穏やかな優しい責めを忘れさせるくらい、激しく腰を振り立てる。
「あっあっ、んっ、おまえ、きゅうに――」
「言ったでしょ。お仕置きだって。んっ、ふふ、乱れてるリオン、すごく綺麗だよ。黒い髪も目も、全部僕のものだ。誰にも渡さないし、手放さない。君の記憶も、体も、心も、すべて僕に頂戴?ねぇ、いいって言って」
男らしく力強い動きの反面、ユーリの表情はとても切なげだった。
声は掠れて、必死に俺を手放すまいと求める気持ちが伝わってくる。
俺は激しく揺さぶられ、弱い部分を暴かれ喘ぎながら、必死に両手を伸ばした。
ユーリの首に腕を絡めると、正面から抱き着くように彼を引き寄せる。
「ユーリ、んっ、ごめん。俺もう、にど、と。離れないよ」
「リオン……リオン。好き、好きだよ。愛してる。いなくならないで。ずっと、僕の一番側にいて」
「いる、ずっと、いるっ、から。あっ、んっ、んん……」
抱き合ったまま口づけをして、中にあるユーリの熱に酔いしれる。
俺の弱い場所を知り尽くした彼が、内壁にある一点を集中して捏ね上げた瞬間、俺は喉の奥から掠れた声を上げて、二度目の絶頂を迎えた。
体が勝手にこわばり、中にあるユーリ自身をきつく食いしめる。
「くっぅ――」
いつもは達する時もあまり声を上げないユーリは、珍しく掠れた吐息交じりの声をこぼすと、俺の中に熱いしぶきをぶちまけた。
「んっ……ぁ、つい」
「ごめ、なかに、だしちゃった……」
謝りながらも、ユーリは一滴も外にこぼさないとばかりに腰を何度も打ち付けて、全てを俺の中に放った。
「あとで、僕が綺麗にかきだすね」
「いい。自分でやる」
「んー、たぶん、君は気を失ってるだろうから、自分でやるのは無理じゃないかな」
爽やかに微笑んで恐ろしいこと言う恋人に、俺は「え」と返した。
「おま、こんな所でまだやるのか」
俺の問いかけに、ユーリは「何言ってるの」と言って微笑んだ。
「まだまだ、これからだよ」
「う、うそだろ……。なぁ、まっ、まって」
未だ俺の中に陣取っているユーリ自身が再び力を取り戻すのを感じて、俺は頬を赤らめながら、顔を真っ青にするという、なんともチグハグな表情をした。
とっさに逃げようとした俺の腰を掴んで、彼がにっこり笑う。
「さて、リオン。休憩は終わりだよ。もっと、気持ちよくしてあげる」
「もう、もういい!十分、満足しましたので結構です!抜きやがれこの野郎!」
「あはは、それだけ元気なら、まだまだ大丈夫だね」
「あっ。やめ、たすけ、たすけてくれっ!あっあっ、んっ、ゃ、ああっ」
優雅で狂暴な獣、もとい俺の恋人が満足したのは、それから数時間後。
うっすら空が白み始める頃だった。
朝の爽やかな風と、自分を抱きしめる腕に身をゆだねながら、俺はゆっくり目を閉じた。
「おやすみ、僕の愛しいリオン。ちゃんと綺麗にして運ぶから、安心してお眠り」
「ん……おやすみ。俺も、お前が……だいすきだ」
眠りに落ちる直前、俺の額に柔らかなものが触れた。
(幸せ、だな)
優しく尊い温もりに包まれながら、ゆっくり眠りの淵に落ちていく。
しっかり手を繋いで、今度は二度と離さないように。
愛しているから自分が側に居ても良いのか不安になる。
でも……。
――こんなに愛されて。求められて。手放すなんて無理だ。だったら俺は、ユーリに相応しい人間になろう。
隣にある温もりに頬をすり寄せ、リオンはもう一度「愛してる」と囁いた。
【作者あとがき】
本作をお手に取り、ここまで読んで下さって、ありがとうございます!
皆様の閲覧、お気に入りや感想が執筆と投稿の励みになりました。
本作は、アルファポリス様で書く初めてのBLで、至らない所も多くあり、根気よく読んで汲み取って下さる読者の皆様には、なんとお礼を申し上げたらよろしいのか……。
感謝してもしきれません。
投稿するたび、お気に入りや感想を頂くたび、毎回PC前で「ありがとうございます」と頭を下げておりました。
心の底より感謝申し上げます。
本作はもう少し続く予定だったのですが、一旦ここで短編完結いたします。
続きを待っていて下さった読者様がいらっしゃいましたら、大変申し訳ございません。
BL作品を読むのは物凄く大好きなのですが、書くのは本当に難しい……。
もっと沢山読んで、研究しなきゃいけないなと痛感致しました。
よりBLについて勉強してスキルアップしてから、いつか、このリオン達のお話しの続きに再挑戦したいと思っております!
某少年ジャ○プの主人公のように、修行期間を経てレベルアップして帰ってきますので、もしよろしければ、またお手に取って頂けると幸いです。
再度になりますが、本作をお手に取り、お気に入りや感想で応援してくださった読者の皆様。
誠にありがとうございました。
また皆様と作品を通して、お目にかかれると幸いです。
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作者さまありがとうございます!
黒月禊様、本作品をお手に取り、感想もお寄せ下さって誠にありがとうございます。
サイトから離れていたため、せっかく素敵な感想を頂いていたのに気付かず返信が遅れてしまい、大変申し訳ございません。
こちらこそ、沢山ある素敵な作品の中からお手に取ってくださり、本当に……心の底から嬉しいです!
執筆を続けるエネルギーになります。ありがとうございます!
これからも少しずつ物語の続きを書いていきますので、また物語や感想欄等を通してお会いできると幸いです!
このたびは、素敵な感想ありがとうございました!
とても感動したお話でした😭
涙を流して読んでいたら家族に心配されてしまいました(//∇//)
感想を書くのは慣れていないので文がおかしかったらすみませんm(*_ _)m
これからも応援しています!頑張ってください!
スルメ36様、感想をお寄せ下さり誠にありがとうございます!
小説サイトを離れており、感想を頂いていることに気がつかず返信が遅れましたこと、誠に申し訳ございません……。
いえいえ!とても温かく優しい応援を頂けて、本当に嬉しく『また執筆頑張るぞ!!』と元気が出ました!
貴重なお時間を割いて作者に言葉を掛けて下さり、誠にありがとうございます!!
少しずつ執筆再開致しますので、また物語を通してスルメ36様にお会いできると嬉しいです。
このたびは感想ありがとうございました!
いや好き♡
ライライ様、このたびは感想ありがとうございます。
しばらくサイトを離れていたため返信が遅くなってしまい大変申し訳ございません。
好きと言って頂けて嬉しいです!♡
また少しずつ執筆再開しますので、本作や他の作品など、またどこかでお会いできると幸いです。
誠にありがとうございました!!