【完結】愛してるから。今日も俺は、お前を忘れたふりをする

葵井瑞貴

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いつか手放す愛

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 芝生の上に仰向けに転がされ、ふかふかの絨毯みたいな草花のベッドに身をゆだねる。

 目を開けば、空にはまん丸い月が浮かんでいて、あぁ綺麗だな。このまま寝たら、気持ちいいだろうなぁ――なんてぼんやり考えていたのだ。
 
 しかし、そんな悠長な考えと余裕は、すぐさま消え失せた。

 考え事なんてさせない、とばかりに胸を吸われて、俺は「ん……」と小さく声を上げた。

 ユーリが胸の尖りを、最初は唇で柔らかく食み、次は舌を使い、最後はちくりとした疼きを感じる強さで吸う。
 
 甘い感覚が胸から腰に伝って、体の奥がきゅっと締まる。

 素直に快感を拾う自分の体が照れくさくて、俺は眉間にしわをよせるとぶっきらぼうに呟いた。

「そんな、とこ。いじっても、たのしくないだろーが」

 変な声が出ないように口元を手の甲で抑えながら、俺は自分の胸を弄ぶ恋人を見下ろす。
 
 彼は片方を口で、もう片方を手で触りながら、ちゅっと音を立てて胸にキスをして言った。

「楽しいよ。リオンがどんどん顔を真っ赤にして、ここを反応させるのが、すごくかわいい」

 胸にあった手が移動して、足の間に触れる。
 服の上から優しく揉みこまれて、手のひらで擦られ、腰が勝手にびくんと動いた。

 恥ずかしくて顔を背けながら、足を固く閉じる。

「かわいい言うな。男だ」

「ふふ、そうだね。じゃあ、男らしく足、もうちょっと開いてよ。触りにくい」

 触りにくいなんて言いながら、ユーリの手は無遠慮に足の間を強めに撫でる。
 そして、服と下着の中に手を潜り込ませると素肌に触れた。

「ふっ……きゅうに、さわんな」
 
 布を隔てず、直に感じるユーリの熱と手の感触に息が乱れる。
 
 ユーリは俺の憎まれ口を楽しむように微笑むと、一瞬の表情の変化も見逃さないとばかりに、こちらをじっと見つめてきた。
 瞳の奥には、先ほどよりも熱く、獰猛な色を宿している。

「やめ……見るな」

 見られた場所が、まるで火にあぶられたようにチリリと熱を持つ。
 
 恥ずかしくて、口を押えていた手を外して彼の目をふさごうと思った瞬間、先ほどまでやんわりと触れるだけだった中心を、きゅっと握りこまれた。

 「ぁ……」という無防備な高い声を上げて、俺は体を揺らす。
 そのまま、激しく追い立てるように手を動かされて、体が勝手に芝生の上で跳ねた。

「やだ……や、つよ、まっ、て……なぁっ、ま、って。んん!」

 再び口をふさごうとした両手を、ひとまとめにして頭の上で縫い留められる。
 
 普段なら、片手一本のユーリに負けるほど力は弱くないのに、ぐずぐずにとろけた腕には力が入らなくて。

 俺は、両手を拘束されたまま、なすすべもなく、ただ高みへと追い詰められていく。

「はぁ……ぁ……だめ、そこ、だめ」

「だめ?じゃあ、やめる?」

 耳元でユーリが「嫌なら仕方ないね」と低く意地悪な声で囁くと、激しく上下していた手をぴたりととめた。
 
 中途半端に高められ、腹まで反り返るほど熱く濡れた場所がヒクつく。
 じんわりと目の端に涙を浮かべながら、俺は、彼の手に自分のをこすりつけるように腰を動かした。

「とめるな……。こんな中途半端に、すんなよ」

「嫌だっていったのはリオンだよ?どうしてほしいの?素直に言ったら、楽になれるよ」

 笑みとともに意地悪な言葉を返されて、俺はぎゅっと目を閉じた。
 
「リオンは我慢しちゃう癖があるからね。素直に言って。ほら、何をしてほしい?」

「さわって、くれ」

「ん?どこを?ちゃんと言ってくれないと分からないよ」

「お、まえ。なんで、今日はそんなに言わせたがるんだよ!いじわるか!」

 目を開いて噛みつくように言うと、彼は「体に教えるって言ったでしょ」と爽やかに微笑んだ。
 そして、俺の反応した昂りに指を絡めると、優しくこすって、離してを繰り返す。
 
「ん……んっ、ぁ」

 もう少しでいけそうなのに、あと少しの所で刺激が足りない。

「ゆーり、もう、わかったから。なぁ、して。お願い」

 気持ちいいけど、達せない……甘い責め苦に、頭がおかしくなりそうだ。
 耐えきれなくなって、俺の目じりから涙がこぼれた。

 ぽろりとこぼれた雫を見た瞬間、ユーリが少し目を見開く。
 そして、俺の額にキスをした。

「ごめん、ちょっといじめすぎたかな。泣かないで、リオン」

「泣いてねぇよ。これは、苦しいとかじゃなくて、いや、苦しいんだけど、あんま気にするな」

 子供のようにぐずぐずと泣いてしまい、少し恥ずかしい。
 俯くように、ちょっと視線を落とすと、張り詰めたユーリのが見えた。
 
 布地を押し上げ、昂っている。
 彼は涼しい顔をしているが、同じ男だからわかる。きっと、すごく窮屈で苦しいはずだ。

 俺は「手、外して」と彼にお願いすると、少し体を起こして、自由になった右手で彼の昂りに手を伸ばした。
 
 そっと指先で触れると、彼が腰を揺らめかせた。
 俺の耳元で、熱い吐息をこぼす音が聞こえる。

 顔を覗き込むと、こちらを見ていた彼と至近距離で視線が交わった。
 


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