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14話 新しい家、新しい仲間
しおりを挟む「ああ、今戻った。コイツを紹介する、イリヤとダリアードにも集まるように言え」
「う、うん。分かった……」
荒い口調に切り替わっているユーリの言葉で、その子はこの場から逃げ出すように家の中に入っていく。にっこりと笑ってもいないのに何故か怯えられてしまった。能面のような無表情にでもなっていたのだろうか、と自分の顔を触ってみる。……うん、表情筋は死んでいたようだ。
「君の黒髪に対して三人とも色々思うだろうが……辛かったら心を読むのはやめればいい。あとで必要なことは私が説明する」
『あーそういうことですか……まあ、大丈夫ですよ』
正直、髪の色や魔力の色についてどんな感情を向けられても、この世界の価値観がない私にとっては「そうですか」以外の感想が湧かない。差別、というのは本当にその意識がなければ何も思わないものだ。
黒髪に嫉妬されても、透明を蔑まれても、だからなんだという話である。蔑まれればその感情は不快だが、透明であることを恥じもしなければ苦痛にも感じない。同時に、この世界の人間の髪や魔力の色がどうであろうと、その色によって嫉妬も軽蔑も抱かない。
私は先ほどの少年の髪色を「綺麗だ」と思う。そこに魔力の色に関する意識は何もないけれど、これを伝えれば受け取る側はそれを純粋な賛辞とは思えず、「皮肉」や「憐み」だと感じるかもしれない。そこには“被差別者”の意識があるからだ。……これは厄介で、難しい問題である。差別する側だけでなく、される側も含めて双方に差別意識がなくならないと、いつまでもそこに“差別”が残り続けてしまう。
(元の世界でも根深い問題だったしね……私にはこっちの感覚は理解できないけど)
魔力の色が髪に反映されてしまう世界。魔力の量でできることに差があり、生きやすさが変わる世界。生まれ持った魔力の色で差別されてしまう世界。ここで生まれ育った訳ではない私には、おそらく一生理解できない意識をこの世界の人たちは持っている。
その人間がどういう価値観を持ち、どういう性格をしているか。私にとっての判断基準はそれだ。魔力の色などという、人間性が関係ない部分で人を判断などできるものか。……この世界は色の差別に溢れていて、誰も彼も生きづらそうだ。
『この世界の色に対する感覚、私にはありませんからね』
「……ああ、知ってる。だから君と話すのは心地いい」
そう言って彼は小さく笑い、扉に手をかけた。彼が開いてくれた扉から、私も家の中に入ろうとしたのだが――――大きすぎるリュックがつっかえて入れなかった。
『入れません』
「……まずは鞄の整理だな」
玄関先でリュックを開き、二人でせっせと中身を出す作業をしていたところ。家の奥から三人の姿が現れたので、一旦手を止めた。
若い女性と、大柄な男性と、先程の男の子。三人とも警戒するように私を見ていて、発せられる意思も拒絶が色濃く攻撃的だ。黒髪というだけでこうなるのだから、色に対する問題の根深さが窺える。
「ユーリ……なんでそんな奴連れて帰ってきたんだ?」
桜色の髪の隙間から、鮮緑の目が私を睨む。彼の大きな体に隠れチラリと白藍の髪が覗く程度しか見えない男の子はこちらを警戒しているし、白金の波打つ髪が美しい女性は横を向いて私を直視しないようにしている。
三人とも髪の色が淡く、私の黒髪に対して劣等感からくる敵意を抱いてしまうようだ。ここに来るのは魔力が薄い人間だけのはずなのに、何故黒髪が来るのかと。
「コイツはハルカ。魔力放出障害で、冒険者の荷物持ちをするところだったから連れ帰ってきたんだよ」
「はっ!? じゃ、じゃあ……そいつ、透明ってことか……?」
「ああ、そうだ。髪の色で注目されてたから、かなり酷かったぞ」
色判定を受けた広場では私の透明を蔑み嘲笑する空気で満ちていた。人が多くてごちゃごちゃしていたので分からなかったが、ユーリが言うには相当悪い空気だったようだ。
私が透明だ、と聞いた瞬間から三人の意識が変わった。桜色の髪の男はバツが悪そうに頭をかいて、私から目を逸らしている。事情を知らず睨んでしまったという罪悪感でこちらを見られないらしい。
そんな彼の体の後ろにいた白藍の髪の男の子は隠れるのをやめて、興味深そうに私を見るようになった。桔梗のような紫の瞳が輝いているのは、私が同年代に見えるからだ。先ほどと違って仲良くなりたそうな意思を感じる。
白金の髪の女性の方は――憐みの籠った緋色の目で私を見ている。まさか全く色がない人間がいるとは思わなかった、と考えているようだ。同じ女性として色々と世話を焼こうとも考えてくれてはいる。けれど。
全員が、ほんの少し。自分たちより色のない人間を見て、優越感や安心感のようなものを持っている。自分たちより可哀相だから優しくしてあげよう、という意識にそれが滲んでいるのだ。
自覚もない程に無意識で薄い、深層心理にあるくらいのものだけれど、自分より色が薄い人間がいてほっとしてしまうような。……この世界で、色の差別を常に体感しながら生きていたら仕方がない気はする。
(うーん、皆拗らせてるなぁ。悪い人たちじゃなさそうだけど……ユーリさんからはこれ、感じなかったな)
ユーリは私を不憫に思っていたが、異世界人で超能力者だと明かす前でも“透明”に対する差別意識はなかった。自分の方が優れている、という感情は一切なかったのだ。彼と他の人たちでは“色”の認識が少し違うのだろうか。……王族だから、それもありえる。
「ハルカは遠い異国の出身らしくてな。この国の言葉は話せないが、意味は分かってるみたいだから意思の疎通はできる。一応、これから言葉は教えてやるつもりだ」
「あ、それなら僕が教えてあげる!」
にこにこと笑いながら男の子が前に出てきた。怯えていた時とは様子が百八十度回転していて、随分友好的だ。
「僕はセルカ。名前も似てるし、年も同じくらいだよね? よろしくね、ハルカ!」
さて、ここで問題です。この世界で十四、十五歳くらいに見える私と同じ年くらいだという彼はいくつでしょうか。答えは簡単、十四歳の思春期の少年だ。……高校生くらいには見えるのだけど。この世界の人たちは皆、背が高い。
女性ですら170㎝くらいはあるだろう。白金の髪の女性もそれくらいの背丈で、胸と尻のボリュームがあって、腰はよく引き締まっている肉感的美女なのだ。迫力がすごい。そして彼女が特別な訳ではなく、街で見た女性は大体こんな感じだった。
ユーリも背が高いと思っていたが、桃髪の男性などは2m近いのではないだろうか。この世界ではたしかに、私は子供に見えても仕方がないなと納得する。……これは身長の話だ。私は日本人女性の平均身長しかないが、体形は標準であって決して凹凸がない訳ではない。
「私はイリヤよ。こっちの大きいのはダリアード。貴女のことを誤解して睨んだのが申し訳なくって目を合わせられないだけで、害のあるやつじゃないから安心して」
「お、おい、なんだよその紹介は……ったく……悪かったな。ここじゃ色の薄さで迫害されるこたぁないから、安心しろ」
こくり、と頷いて答える。彼らは透明である私に同情し優しくしようとしてくれているのが少し申し訳ない。確かに私は魔力を持っていないけれど、非力な訳でもない。自分の状況を悲観してもいない。
必要に迫られない限り、彼らに素性を明かすことはないだろう。……少し、彼らと一線を引くユーリの気持ちが分かった気がする。本当のことを言えないと、どうしても距離ができる。彼らが自分に向ける感情は“魔力放出障害の透明な人間”に向けられているもので、“異世界人で超能力者の明日見遥”に対するものではないから。
「ここ、部屋がたくさんあるのよ。私の隣の部屋を使うといいわ、案内するからついてきて。何かあったらいつでも相談しにきていいから」
「イリヤ、ついでにあちこち案内してやれ。ハルカ、荷物の片づけは俺がやっておくから気にせず行ってこい」
ユーリの言葉遣いが変わっているのが少し奇妙な感覚だった。いつも丁寧語で話している人が、人前では横柄な態度を取っているような、そんな違和感がある。内弁慶の逆といえばいいだろうか。
この世界の言語表現については何も知らないのだけれど、この口調は平民の言葉遣い。そして昨日まで私と話している時に使っていたのは貴族の言葉遣いであるらしい。学ばなければしっかり理解はできないが。
『何かあれば異能で話しかけてくれ。……これは伝わっているか?』
『伝わってますよ。この家の中くらいならどこにいても会話できますから、ユーリさんも用がある時は呼んでくださいね。暫くは精神感応を使い続けますから』
『……君の力は本当に便利だな』
便利だが、それはこの力を拒絶しない相手の場合のみである。心を読まれても平気なユーリが特殊なのだ。
今まではユーリと二人きりだったけれど、これからは他に三人いる。この三人の思考も常に読むことになるので、それは申し訳ない。……でも、誰にも言わなければそれはなかったも同然だと言われている。この力で何かを知っても、私はそれを心の内にしまっておくつもりだ。
「ハルカ、こっちよ。男は二階、女は三階に部屋があるから」
イリヤに案内されて施設の中を見て回る。二階と三階はホテルのように部屋が並んだ階層で、二十室は空きがあっただろうか。一人に一部屋私室が与えられるようで、私は三階にあるイリヤの隣の部屋を使うことになった。畳四畳くらいの小さな部屋だが、寝泊りするには充分だ。
この施設はかなり広い。厨房、食堂、浴室など大人数が使うことを想定されて作られているのだろう。私を含めて五人で住んだとしても寂しく感じる。……ユーリは、色の薄い人たちを本気で助けたくてここを作ったのだとよく分かった。
(よく、他人にそこまで優しくできるなぁ……そんな心の余裕、なさそうなのに……)
ユーリの思考を読んだ時、彼が家族からどんな扱いを受けたのかもなんとなく伝わってきた。存在を無視される、というのはかなりつらいはずだ。人間は一人だけでは生きていけない。本当に誰とも会わず、会話もせず、一人きりだと発狂してしまうのだという話も聞いたことがある。……彼はよくそうならなかったな、と思う。
他人と関わりたくないという私でさえも、この世界でユーリに話しかけたくらいだ。本当の孤独というのは恐ろしいものである。
(むしろ、だからこそ、なのかな。優しいのは)
私は感情に疎いので、本当のところは分からない。でも、ユーリは優しすぎるから――それは、心の傷がそうさせるのではないかと思う。
体の傷と違って目に見えないその傷には薬を塗ることができない。感情を直接やり取りしていても、そんな核心に触れるような話はしていないし、聞けるような仲にもなっていない。でも、私のような異質な存在にも優しくて、私の好意を喜ぶ様子を見ているとあながち間違いでもない気がする。……あの人は、とても傷ついている人なのではないかと。
(私が……もっと感情豊かで、人の感情に敏感だったらなぁ……友達になったのに、慰め方も分からないね)
私にできることは、彼の心を感じ取り喜ぶようなことをしてあげるくらいではないだろうか。……よし、やっぱりたくさん褒めたり、感謝を伝えたり、友達として好きだと好意を示していくことにしよう。ユーリはそうすると戸惑いながらも嬉しそうなので、喜んでくれるに違いない。
『いま、寒気がしたんだが気のせいか?』
精神感応に訴えかけてくるユーリの心の声が聞こえてきた。急に寒気がしたらしい。二時間程度しか寝ていないから体調を崩しかけているのではないだろうか。そうだとしたら大変だ。
『睡眠不足のせいじゃないですか? ちゃんと休んだ方がいいですよ』
『……そういう感じではないんだが』
ならどういう感じなのだろうか。尋ねようとしたら、目の前にしなやかで細い指の綺麗な手が出てきて、ひらひらと揺れる。……ちょっと驚いた。イリヤに案内されている途中だったな、そういえば。
「ハルカ、何をぼーっとしてるの? 疲れてる?」
考え事をしたりユーリと話したりしていたからイリヤに心配されてしまったようだ。とりあえず首を振って大丈夫だと伝えておく。疲れている訳ではない、ただちょっと別の方向に思考が飛んでいただけだ。
「そう、大丈夫なの。……貴女、喋らないのに何を言いたいのかなんとなく分かるのよね」
それはまあ、超能力者で精神感応使いだから当然だ。
精神感応で動作に意思を乗せるのは、直接脳内に言葉を送るのとは違って感情までは伝わらない。何をしたいのか、何を伝えたいのかなんとなくわかる程度ではあるが、筆談が必要ない程度にはコミュニケーションが取れて便利だ。……話せないことに変わりはないので、込み入った話はさすがにできないが。
「ねえ、イリヤ! ハルカ! お昼ご飯は魔物の肉だよ!」
そろそろ荷物の整理も終わっているだろうからと玄関に向かおうとした時、セルカが嬉しそうに走ってそれを伝えに来た。リュックから取り出した火山猪の肉に感動していたのは知っていたが、わざわざ伝えにくるほど嬉しかったらしい。
ちなみに、ダリアードは現在厨房にて魔物の肉の前で鼻歌を歌いながら包丁を握っていて、ユーリは急に走り出したセルカを追って速足でこちらに向かってきている。
「魔物の? 高級品じゃない。どうして魔物の肉なんて……」
「ユーリはハルカが倒したんだって言ってたけど、本当?」
念動力で捩じ切ったので本当だが、それは言っていいことなのだろうか。……ユーリが言ったんだから、いいんだろうけれど。
「魔力放出障害って力が強いんだよね? どれくらい強いの?」
宝石のように紫の瞳を輝かせてこちらを見るセルカと、信じられないという顔をしているイリヤの二人と向こう側に、ようやくユーリの姿が見えた。
……もしもしユーリさん。これ、どうしたらいいんですか?
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