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番外編
③ クロヴィス Side 宰相子息
しおりを挟む「本日はお忙しい中お時間を取っていただきありがとうございます、義父上。」
「もう少しフランクな物言いでいいんですよ、親子なのですから。」
クスクスと笑いながらそう返され、肩の力が抜ける。
「善処しますが、義父上も丁寧な言葉遣いではないですか。」
「私の言葉遣いは誰に対してもこれですから、ですがあなたは違うでしょう。」
「そうですが・・・。」
「まあ、無理にとは言いませんができれば息子とは仲良くしたいのですよ、せっかくなのでね。
ところで本日は何のようでしょうか?」
雑談から本題に、再び力が入る。
「これを見てください。」
そう言って持ってきた書類、マリールイーズ嬢の不正についてまとめたものを渡す。
パラパラとめくったあと、始めからしっかりと目を通し始めた。
「少し待っていただけますか?確認しますので。」
義父が書類を確認する間、じっと待つ。
「ふむ、で私にどうして欲しいのですか?」
読み終わると早速そう問いかけてきた。
「義父上はどう思われますか?」
「しっかり調べてあるし、矛盾もない。十分罪に問えるのではないでしょうか。」
「それだけ、ですか?」
「そうですね、まとめ方が荒いのでどこかしらに提出するのであればもう少しまとめ方を考えた方がいいかもしれません。」
「それだけ・・・」
義父の顔を見れば、あの含みを持つときの笑顔が浮かんでいた。
「・・・違和感があるんです、調べれば調べるだけ彼女がクロだという情報しか出てこない、証拠だってしっかりとある、矛盾点はない。それなのに、どうしても納得ができないんです。」
「なるほど、だから私にこれを見せたのですね。」
「はい。」
義父の笑みが深まる。
「その勘を大事にしなさい。それがこれからのあなたの命運を左右するものになります。」
「それは・・・。」
「ですが、これ以上この件に深入りするのはやめなさい。これは、命令です。」
「・・・。」
「ああ、でも舞台はこちらで用意いたしますので、その準備はしておくように。」
何かがあるのは確実だが、何があるのかさっぱりわからない。
流石に、情報が少なすぎると思ったようだ。
「この件は30年以上追い続けている件に関わっています。余計な手出しをされて、それを全て無駄にして欲しくありません。」
静かだが、強い、言葉だった。
義父はふっと力を抜き、雰囲気が一気に柔らかくなる。
「よく調べられていますよ。正直予想以上です。あなたがここまで辿り着けるとは思いませんでした。追々わかりますが、それでも相手はもっとずっと上手です。あなたにはあなたの役割がありますから、今はこれで我慢してください。」
優しいが、これ以上話を続けるつもりはないとはっきりと示された。
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