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番外編

② クロヴィス Side 宰相子息

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そうして表向き穏やかな日々が続く中、問題?が浮上した。
アリスティド様には幼い頃に定められた婚約者がいる。氷姫の異名を持つ、ドーリッシュ公爵家の跡取り令嬢のマリールイーズ嬢だ。どうやらアリスティド様はそのマリールイーズ嬢の異母妹のセシル嬢に恋い焦がれているらしい。
どうやら婚約者同士のお茶会に何度かに一度セシル嬢が参加しているようなのだが、その時のアリスティド様の帰ってきてからの饒舌ぶりったら言いようがない。
それを、公務を手伝う関係でよく話すようになった第二王子のエルネスト様と指摘すると、どうやら自覚がなかったようで珍しく気が動転しているようだった。気づいていなかったのであればそのままにしておいた方が良かったかと一瞬考えがよぎったが、自覚なく動かれたり、変なタイミングで自覚するよりいいだろうと考え直す。それに自分の立場をよく理解しているアリスティド様が突飛な行動に出ることはないだろうという信頼もある。
とりあえず相談されないうちはそっとしておこうとエルネスト様と結論づけることとなった

正直、アリスティド様は趣味が悪いと思う。
マリールイーズ嬢も氷姫の異名を持つだけあって、無表情で何を考えているのかわからない方ではあるが、完璧な淑女の振舞いをされ、伴侶として申し分のない方だ。それが女性として魅力的かどうかはまた別問題ではあるが。
一方セシル嬢は、一言でいうと甘やかされた御令嬢。公爵家に正式に引き取られてから何年か経っているはずだが、一向に礼儀作法が身についておらず、会話も幼い。それに、婚約者同士の交流を深めるためのお茶会に数度に一度とは言え頻繁に参加するなど常識がない。自然体とでも言えば聞こえはいいかもしれないが、感情が全て顔に出てしまっている、マリールイーズ嬢のように無表情であるのも少し問題だが、それでも貴族として取り繕えるだけ無表情の方がましというものである。裏表なく感情豊かで、可愛らしい容姿は庇護欲をそそるとも言えるかもしれないが、恋情に発展するものではない。・・・これが教育の弊害だろうか。
一応、セシル嬢について調査しておいたが、変な繋がりもなく俺が抱いていた印象以上の情報は集まらなかった。

アリスティド様もいっときは熱病にかかったようになっていたが、何かあったのか、むしろ何も無かったからなのか自分の気持ちに折り合いを付けられたようで、学院に入る頃には将来の義妹としてセシル嬢にふさわしい距離で接するようになっていた。


そうしてあと一年ちょっとでアリスティド様が学院を卒業となった頃、アリスティド様が考え事にふけることが多くなった。
そして、そろそろこちらから動いた方がいいかと思い始めたところで、アリスティド様からある”お願い”をされた。

それはマリールイーズ嬢を調査すること。

前々からセシル嬢はマリールイーズ嬢に嫌がらせのようなことをされていると匂わせていたらしい、実際に学院に入ってから二人の様子を見ていると、嫌がらせではないがマリールイーズ嬢がセシル嬢にきつい物言いをしていたりしていた。普段の氷姫からは少々逸脱している振舞いに、改めてマリールイーズ嬢の資質を確認したくなったのと、セシル嬢からマリールイーズ嬢が不正を行っているのではないかと匂わせる言動があったとのこと。
一方的な話を信じる訳にも行かないが、もしセシル嬢の言う不正が事実ならば婚約を考え直さねばならない、と言い出した。

恋心が再燃、いや隠すのが上手くなっただけでずっと燃やし続けていたのかもしれない、とため息を吐きたくなる。
そもそも、マリールイーズ嬢は王族の婚約者、護衛というなの監視などがあるから不正などそう簡単には行えるものではない。それでも頼まれたのだからと調査を行い、並行してアリスティド様とセシル嬢の行動も改めて調査と既存の報告書の確認を行う。

報告書を見返してみれば、少しずつアリスティド様とセシル嬢の距離が近づいているのがわかる。一方でマリールイーズ嬢とは義務としての最低限の交流しかしていない。完全に私の見落としだが、少し嫌な噂も流れているようだ。嫉妬などとは想像できないが、マリールイーズ嬢も言葉がキツくなるのもさもありなんと言った様子に感じた。

だが、そのマリールイーズ嬢もクロであった。
調べれば調べるほど、真っ黒な証拠が上がってくる。これ以上ない証拠が集まってくるのにどこか違和感が拭えなかった俺は義父に相談してみることにした。
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