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番外編
⑨ ブリュエット Side マリールイーズの母
しおりを挟むコトが済んだ後、図ったように女性の悲鳴が響いた。
それに誘われ衆目が集まり既成事実が覆されえぬものとして広まっていった。
私は目をふさぎ、耳をふさぎ、全てを拒絶して、気付いたら自室でカジミールと向かい合っていた。
ただただ情けなくて、不甲斐なくて、申し訳なくて、そして恐怖と不快感がぶり返してきて、頭の中はもうグチャグチャだった。
そして、そんな私を優しく抱きしめてくれるカジミールにしがみ付きながら疲れ果てて寝てしまうまでずっと謝罪の言葉を口にしていた。
次の日目覚めると、カジミールはすでに屋敷にいなかった。
それ以来彼の訪れはなかった、手紙すら届かない中、ただ毎日届けられる送り主のわからない桔梗の花束だけが私の支えになった。
かの男はバルサン伯爵家の次男ウスターシュという名であったらしい、我が家としては醜聞になろうとも相手は伯爵家徹底抗戦のつもりで両親は動いていた。
しかし、王家より待ったがかかった。
ウスターシュとの婚姻を進めるようにとの王命が下った。
その知らせを持ってきたのは、あの日以来姿を見せなかったカジミールだった。
その日応接室に呼ばれ出向いてみるとお父さまとカジミールが向かい合って座っていた。お父さまに手招きされ横に座る。真正面に座るカジミールは随分とやつれて見えた。そんな私も、あれからまともに眠れない日々を過ごしているので人のことは言えないくらい顔色が悪い。
色々と聞きたいことがあったが難しい顔をする二人に気圧され何も言えなかった。
おもむろに口火を切ったのはカジミールだった。
「私は今日勅使としてここにいます、今から伝えることは王命となります心して聞くように。」
感情を一切排除した物言いに、緊張が走る。
「ブリュエット・ドーリッシュ公爵令嬢にウスターシュ・バルサン伯爵令息との婚姻を命ず。」
あまりの内容に固まってしまう。冗談だと言い出すのを期待してじっとカジミールを見つめるも、表情なくやつれた顔がじっと見返して来るだけだった。
助けを求めてお父さまの顔を見るも、首を横に振られる。
「これが正式な書状だ。」
そう言ってお父さまは目の前にあった書状を渡してきた。確かに書状にはウスターシュ・バルサンとの婚姻を命令する文言と国王のサインと玉璽が押されていた。
一気に心が絶望に染め上がった。書状を持つ手が震え、目の前が真っ暗になった。
気がつくと、目の前にいたはずのカジミールが横に座り片手を繋ぎながら私の肩を抱いていた。反対の手もお父さまの手に優しく包まれ、背中に添えられたお父さまの手の温もりを感じた。
「申し訳ありません、ウスターシュとの結婚をやめさせることができませんでした・・・。」
そう悔しさを滲ませて言った後、ポツリポツリと語り始めた。
************
うまくいったぜ
嬉|゚・*:ヾ(oゝ∀・)ノルンタッター ゚+。:゚.。.:*・゜
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