気づいたら隠しルートのバッドエンドだった

かぜかおる

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番外編

② ブリュエット Side マリールイーズの母

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そんなこんなで、婚約者探しという慣れない貴族的なやりとりをここ何週間も続けて、さらには成果が出ないとなるとうっぷんも溜まるものである。

それを発散しに仮面舞踏会に来たものの、領地で馬を乗り回し、領民の子供たちと駆け回って成長した私には、お上品な会話とダンスとイケナイ男女のあれこれなど面白味も何にもないものだった。
これなら、早めに寝て朝駆けにでも行った方がましだった。

そんな後悔を胸に抱え、ため息をこぼしながら壁の花になるのも飽きてきた。
帰ろうにも、一緒に連れてきてくれた友人は楽しんでいるようでまだ帰りそうにない。楽しんでいるのを邪魔して帰りを急かすのも申し訳ない。

少し気分転換にバルコニーにでも出てみるか。

一人バルコニーに出てみれば、会場の喧騒が遠くなる。
心地いい風が肌を撫でる。

バルコニーから見下ろす庭には点々と明かりが灯され、恋人たちの逢瀬に役立っている。
そんなものを見るのもシャクなので、空を見れば満天の星。

ぼうっと空を眺めていると、背後から人の気配が近づいてきた。そちらに目を向けると、一人の男性が近づいてきた。

「お邪魔でしたかな、麗しのレディ?」

どこかねっとりとした声色が、不快感を煽る。

「いいえ、ちょうど戻るところでしたの。私は失礼いたしますから、どうぞごゆっくりなさって。」

和やかに言いながら、手に持った扇で口元と不快感を隠す。
長居は無用と歩き出そうとするが、

「そのようなつれないことを言わず、少しお付き合い願えませんか?」

と男は両手に持ったグラスをわざとらしく掲げてきた。
失敗した、私狙いでここに来たようだ。入り口は彼の後ろ、逃げるにも手の届く範囲に近づかなくてはならない。

「まあ、素敵なお誘いですこと。でもそろそろ戻らないと連れが心配しますの。」

「あなたを連れてきたレディは、いい人とお楽しみ中のようですよ。」

ぞくりと背筋が凍る。この男はどこから私を見ていたのか?
先ほどまでとは違う緊張が私を包む。

「あらまあ、彼女のことをご存知だったのね?
でも残念、少し遅れてやってきた方のツレ、よ。」

平静を装いながら、その場限りの嘘を並べる。

「約束をしていたのに遅れてくるからちょっとお灸を据えていたの。
そろそろ顔を見せないと泣き出しちゃうわ、その前に帰って上げないと可哀想でしょう?」

そう言って、焦っていた私はそれでも平静のつもりで男の横を通り過ぎようとした。

「ではお連れさまのところまで、エスコートさせてください。」

いつの間にか、グラスを片手に持ち替えていた男に腕を取られる。

「離してっ!」

グッと腕を掴んでいる手に力が加わった。痛くはないが、簡単には振り解けない強さで、この後どうなるのかと焦りと恐怖が浮かぶ。

「私の連れに、何かご用で?」

バルコニーの入り口から、凛とした男性の声が響いた。



************

なん、だと!?
∑( ̄Д ̄;)なぬぅっ!!
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