上 下
15 / 15

エピローグ③ 終

しおりを挟む

お母さんの参戦で、お墓参りやら、折角だからと大掃除がはじまるやらで連休は一気に潰れて行った。

明日は帰るから、と今日はのんびり過ごそうとだらだらしていた。

「吉野~、お友達が来たわよ~。」

おばあちゃんの呼ぶ声が聞こえた。

お友達?この辺に友達と言える人はいなかったけど・・・。

首を傾げながら、玄関に向かうとソイツがいた。

驚き、呆然としていると、ソイツはんっと言いながら袋を突き出してくる。

意味がわからず、頭の中にクエスチョンマークが飛び交っていると、ソイツはその袋を押し付けてきた。
とりあえず、と中を覗けば大量の駄菓子と学校のプリントらしき紙が入っていた。

「何、これ?」

呆然と呟く。

「・・・好きだろ、それ。」

もう一度覗いて見れば、確かに袋の中のお菓子は私が好きなものばかりだった。

「え、好きだけど・・・。」

ソイツを見れば、気まずそうにそっぽを向いている。

二人の間に居心地の悪い沈黙が落ちる。

「・・・った。」

「え?」

沈黙を破ったのはソイツで、でも声が小さくてよく聞こえなかった。

「・・・かった。」

「ごめん、聞こえな・・・」

「だから、悪かった!」

突然過ぎて、頭が回らなかった。

「別に、変な意味はなくて、ただ桜はキレーだから、名前が一緒だったら喜ぶかなって。年明けてからお前元気なかったし。」

一気に捲し立てられた。

「・・・えっと、つまり、謝りにきたの?」

「おう。」

ソイツは、恥ずかしげに再びそっぽを向いていた。

「そっか。」

再び、沈黙が落ちる。
それを破ったのは、次は私。

「・・・私こそごめんね、怪我させちゃって。もう大丈夫なの?」

「おう、もうすっかり良くなって、部活だって出れてる。」

手足を動かしなが言う様子は、後遺症もなく本当に大丈夫そうだった。

「本当にごめん。」

「怪我のことは気にすんなって、母ちゃんも言ってたろ、丈夫なだけが取り柄だからさ、俺。それにそもそも余計なこと言った俺も悪かったんだし。」

明るくソイツは言う。

「ううん、違う悪いのは私だよ。あれは完全に八つ当たりだったから。」

「・・・うーん、でもさ、よくわかんねんだけど、俺があんなこと言わなけりゃ八つ当たりもしなかったんだよな?
だったら俺も悪くね?」

「そうかもしれないけど・・・」

「だったら、俺もお前も悪い。喧嘩りょーせーばいで、お互いにごめんでよくね?」

あっけらかんと言うソイツは、本気でそう思ってる。

「それで、いいのかな?」

「おう、お前と俺がそれでいいならいいさ。」

「そっか。」

「そうさ。」

そう言って、くすりと笑う。

再び沈黙が落ちたけど、さっきまでの居心地の悪さは無くなっていた。

そう言えば、玄関先で話すのもなんだし少し上がってもらおうかとソイツを見れば、何か言いたさげにソワソワしていた。

「どうかした?」

「ん?えーと、あの、さ。」

えらく歯切れの悪い返事とも言えない言葉が返ってくる。

「何?」

ソワソワしてばかりで、肝心の話をしようとしないからそろそろ一旦家に上がってもらおうと、口を開こうとした時。

「あのさ、俺、数学でわかんないとこがあんだけど、教えてくれね?」

ようやく出てきたのがこれ?
不思議に思いつつも、特に断る理由もない。

「うん、いいよ。」

「おう、サンキュ。」

でも、まだ何か言いたさげな様子は無くなっていなかった。

「あのさ、今日は教科書とかなんも持ってないんだ。」

「ああ、うん。どうせ学校に置き勉してるんでしょ。だったら今度学校で教えてあげるよ。」

そう言うと、ソイツはすごく嬉しそうな顔をして

「おう、それじゃ学校でな!」

そう、言った。

しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

野原のこ
2020.05.09 野原のこ

完結お疲れ様でした&毎日ありがとうございました!
タイトルの、はじまりをつげる花っていうのが絶妙ですね!
最後“ソイツ”にほっこりさせられましたw
また色々読ませていただきます(^-^)

かぜかおる
2020.05.11 かぜかおる

読了ありがとうございますヽ(^◇^*)/ ワーイ
応援もしていただき本当に励みになりました!
ラストは結構初期からこうしたいというのがあったので、ほっこりしていただけてよかったです
ヽ(∇⌒ヽ)(ノ⌒∇)ノ

また、新しい連載も始めましたのでゆっくり読んでいただけたらありがたいです!!

解除
野原のこ
2020.05.02 野原のこ

更新ありがとうございます!
今までの作品と雰囲気が違うので難産というのがわかる気がします(違ったらゴメンナサイ)
ご自分のペースで全然よいと思います!またお待ちしてますね!
応援の舞♪( ̄▽ ̄= ̄▽ ̄)♪

かぜかおる
2020.05.04 かぜかおる

こちらこそありがとうございます〜

ご指摘のとおりです!( ̄^ ̄) ドヤッ!
いつもと違うことしてみたら難産orz
←自業自得


とりあえず、書き終わる目処がたったので毎日更新します!
楽しんで頂けるように頑張ります〜!

(感想からきてくださったって、何書いたのかな〜って見に行ったのですが、あの感想でよく来てくださいました。・゚・(ノ∀`)・゚・。)

解除
野原のこ
2020.05.01 野原のこ

感想から追いかけてきちゃいました!今までの作品も楽しく拝見させていただきました(^-^)こちらの更新も楽しみにしてます!

かぜかおる
2020.05.02 かぜかおる

うわ〜〜、読んでくださってありがとうございます〜〜!!!

この子はなかなか難産なので、応援いただけてすごく励みになります!
喜びの舞 (ノ゚д゚)ノソイヤ!゙(ノ゚д゚)ノソイヤ!゙(*'Д')bギュン!゙(*'Д')b゙

解除

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

夫は平然と、不倫を公言致しました。

松茸
恋愛
最愛の人はもういない。 厳しい父の命令で、公爵令嬢の私に次の夫があてがわれた。 しかし彼は不倫を公言して……

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

婚約者の幼馴染?それが何か?

仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた 「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」 目の前にいる私の事はガン無視である 「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」 リカルドにそう言われたマリサは 「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」 ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・ 「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」 「そんな!リカルド酷い!」 マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している  この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」 「まってくれタバサ!誤解なんだ」 リカルドを置いて、タバサは席を立った

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。