愛を疑ってはいませんわ、でも・・・

かぜかおる

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アザーズ Side

わたくしのたいせつなおともだち

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わたくしにとってその事件の始まりは仲の良い友人とのお茶会でのこと、婚約者に懸想する相手ができたらしいとため息まじりにこぼされたことでしたわ。

わたくしたち貴族の婚約ほとんどが政略によるもの、お互いの相性を見るのが主流となっていますが、見ているのは男女としてではなく家や家庭を切り盛りする協力関係でいれるかどうかの相性ですの。

それもあってその方も懸想する方ができたことよりも、その懸想した方との逢瀬のために予定をキャンセルしたことなどが問題みたいでしたわ。

誰かに懸想するのは自由ですが、婚約者を蔑ろにしてはいけませんわよねぇ。

そして一緒にお茶ををしていた方の中でもう2名ほどわたくしの婚約者も、という方がいて、少しは冷静さを取り戻してくださればいいですわねと言い合いながらそのお茶会が終わったのですわ。


そのお茶会の数日後、わたくしは友人達と共に王宮の公開エリアのガゼポで持ち寄ったお菓子とおしゃべりを楽しんでおりましたの。
しばらく楽しい時間を過ごしていたのですが、ふと皆様の口数が減り目線が一方に集まりましたわ。つられてそちらの方を向くと、数名の殿方と一人のご令嬢が目に入りましたの。

その方々は周りの目線を集めていましたわ。
なぜならその方達は明らかに貴族、男性陣に至っては高位貴族であることが服装から分かるにも関わらず地面に直接腰を下ろしていたからですわ。ええ、平民でしたらそのようにする方がいますわ、ですが、貴族でそのような振舞いをする方はまずいません。
さらにはその男性達はあからさまに一名のご令嬢、服装から下位貴族でしょう、の歓心を得ようと争うように媚を売っているのです。

ただただ、見苦しかったですわ。
公共の場であのような振舞いをするなど、貴族は規範となるべき振舞いをすべきですのに本当に恥知らずな方々ですこと。

「あれは、もう駄目だわ。」

後ろからぽつり、と声が聞こえました。

「皆様ごめんなさい、気分が悪くなったのでお先にお暇させていただきますわ。また今度埋め合わせさせてくださいませ。」

パッと振り返った目線の先で声の主が帰り支度を整え、颯爽と去ってしまいましたわ。
急なことになぜ?と思っていると、再びかの方々の方をよく見るように促されましたの。

ああ、すぐに納得いたしましたわ。むしろなぜ気づかなかったのかと言えるくらいに。
お察しの通り、かの方々の中に今さっていった方の婚約者がいらっしゃいました。それどころか他のお友達の婚約者の姿も見受けられましたわ。

「あなた達はどうするの?」

「わたくしの方は様子見みたい、ただ今日のこの様子だとどうなるか分からないわね。後継を弟に変更になるかもしれないわ。」

「私はたぶんこのまま、かな。優秀な方だし、親類付き合いも難しい家だから。彼女が弁えている方ならそれなりの対応をして、弁えていない方なら無理やり別れさせるなりすることになると思う、かな。」

お二人とも目線を外さぬままに複雑そうにおっしゃいました。やはり直接、ああやって懸想する方と戯れている姿を見ると、話に聞くだけと違いいろいろ思うところがあるのでしょうね。
先に帰った彼女は跡取り娘ですし、裕福な高位貴族の家ですから婿入り希望の殿方が列をなして待っている状態なのであっさりと切り捨てられますけれど、他の方はそう簡単にはいきませんものね。

わたくしから話題を振ってしまいましたが、空気が少々重くなってしまいましたわ。

「今日はお暇いたしましょうか?」

そう言うと皆様同じ気持ちだったのでしょう、そのままお片付けして解散となりましたわ。

それにしても妙な出来事でしたわ。
貴族というのは幼い頃より、貴族らしく振舞うことを厳しく躾られます。それなのにあのように一人の女性に群がるような振舞いをするなど、失礼ながらご令嬢もそれほどの容姿をお持ちでは無かったですし。なぜあのように人目もはばからないような振舞いをなさっていたのかしら。
わたくしは公開エリアの管理人に少し注意して見ていただくように伝え、家に帰り着いてからはお父様にそのことを伝えました。


もしかの方々が意図的に何かなさっているのであっても、事件か何かに巻き込まれているのであってもうまく対処してくださいますでしょう。

かの方々に関してわたくしに出来ることはここまで、あとは友人達の気持ちを紛らわす何かを企画することにいたしましたわ。



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