愛を疑ってはいませんわ、でも・・・

かぜかおる

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アザーズ Side

地獄の出口は近くにあるのかもしれない

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2話公開しています。この話は本日公開分2話目です。
更新通知などから来ている方はお気をつけください。


************





頭の中はぐちゃぐちゃで何も考えられていなかったけれど、足が向かった先はあの場所。

フラフラしながら、こぼれ続ける涙を止めることができないまま歩いていった。


・・・なんで・・・?

やっとたどり着いたそこには、いるはずのない人が居て・・・。


足を止めた私の方へ彼は向かって来て、そっと、私を抱きしめた。

「逃げよう、二人で。」

2度目の誘いを断れるほど、私は強くなかった。




そのまま侯爵家を飛びたした私たち。
私はなんの準備もしていなかったけれど、彼がきちんと用意してくれていて、来ている服を着替えて平民の格好で歩き出した。


愛の逃避行なんて言葉にすると綺麗だけど、実際は泥臭い。
でも、月並みだけど愛する人と一緒ならそんな困難も幸せだった。

体力のない私に合わせてゆっくり歩きながら進み、侯爵家に追われていたら軒先を借りるのも危険かもしれないからと野宿を繰り返す。
歩きながら空白の時間を埋めるようにいろいろなことを語り合った。
彼は私のもとに現れなくなってから、独立して行商になって修行していたらしい。そうしてやっと、苦労をかけるけど二人生きていくだけの算段がついたから迎えに来たのだ、と言っていた。
相変わらず彼の話す時間の方が長くて、私の方が短い。
すごくすごく、幸せな時間が過ぎていった。


家を出てひと月ほど経った頃、港町にたどり着いた。
ここから船に乗って国を出る。
国を出てしまえば、いかに侯爵家と言えども探し出すのが難しくなる。特に乗ろうとしている船は国を二つ挟んだ先に向かうから、余計に難しい。

日も沈みかけていたから、最初に宿を取ることに、この逃避行で初めての宿。
明日からは船だから、今日くらいゆっくり休もうという彼の気遣いが嬉しかった。

宿を決めて部屋に入るとすぐに彼は船の予定を確認してくるからと出かけていってしまった。
部屋は狭く大部分をベッドが占領してしまってる、腐っても侯爵家で暮らしていたから私の感覚の方がおかしいのかも。

ベッドに腰を下ろすとどっと疲れがのしかかってきて、ふっと眠りに落ちてしまった。



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