愛を疑ってはいませんわ、でも・・・

かぜかおる

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アザーズ Side

最後の別れなんてお粗末なもの

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「お前はこれからどうするんだ?」

物思いに耽ってしまっていたから、少し驚いた。

「私?」

「ああ。あいつとの婚約話は蹴ったんだってな。」

あいつとは、この元婚約者の従兄弟。
元は領地で補佐をする予定だったのが、一連の騒動の結果後継となることが決まった。
そしてその時に一応は私との婚約話が出たのだ。

「まあね、私だってあの二人の仲を引き裂きたいとは思わないし。」

ただ、その従兄弟には婚約者がいた。
二人は私たちと違って仲睦まじい。
私自身領地にお邪魔した時には二人に大いに助けられていたこともあるし、二人を引き裂きたくは無かった。

私たちの婚約が家同士の繋がりのためであれば、それでも婚約はなされたのだろうけど、私とこの元婚約者の婚約は私の能力が買われてのモノだったから従兄弟に十分に能力があるのにわざわざ私が婚約者になる必要は無い。

元婚約者がやらかしたことも踏まえて、今回は私の希望が通った。

「・・・、王太子の側妃にならないかという話がきてるの。それを受けるつもり。」

「は?・・・いいのか?だって、王太子も・・・。」

私の話を聞いて、驚いた顔をしてる。

「まあ、魅了にやられた浮気男の妻になるのは正直はまっぴらごめんだけど。でも、側妃になれば公務にたずさわれる。
今から領地経営とかにたずさわれる様な家を探しても見つかるか分からないし、そもそもあれだけ大っぴらに婚約破棄された私を引き取ってもらえるかも分からないしね。
今更普通の嫁になるくらいだったら多少我慢しても公務にたずさわれる側妃の方が何万倍もいいわ。」

元婚約者はそう言う私の顔をじっと見つめていた。

「・・・そういうところなんだろうな・・・。」

「ん?何が?」

ぽつり、こぼれた言葉。

「そういうところが、俺とお前の違いなんだろうな。」

「・・・どういうこと?」

元婚約者は苦笑いの様な顔を浮かべる。

「すごいよお前は。
俺は、後継から外す、と言われた時いろんな感情が浮かんできたけど、正直、何より一番、ほっとした。」

・・・その言葉に、私は何も返す言葉が浮かばなかった。

「・・・」

「・・・」



「なあ、そろそろ帰った方がいいんじゃ無いか?」

無言の時間が幾分か過ぎた後、そう言われて窓の外を見ると大分陽が傾いていた。

「・・・そうね、そろそろ帰らせてもらうわ。」

そう言って私は立ち上がり、扉の方に向かう。

「なあ、お前のこと、生意気だと思ってたけど、嫌いじゃ無かった。」

私の背にかけられたのはそんな言葉で。

「あなたのこと、馬鹿だと思ってたけど、嫌いでは無かったわ。」

扉を開けながらふり返りもせずに返したのはそんな言葉。


元婚約者に与えられた罰は辺境の警備隊での生活、おそらく魅了にかかった者の中でトップを争うこの罰は公衆の面前でやらかしたことと後継問題のためだろう。
辺境はこの辺りより自然環境が厳しく、野獣も多い。その上隣国から難民が流れてくる関係もあって治安も悪くなっている。

さして剣の才能があるわけでは無い、体が特別丈夫というわけでも無いこの元婚約者とおそらくこれが最後の別れ。
最後に交わしたのがこんな会話だなんて、なんとも私たちらしいのかもしれない。


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