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アザーズ Side
恋心なんてお粗末なもの
しおりを挟むコンコンッ
「開いている。」
扉をノックすれば素っ気ない返事が返ってきた。
無言で扉を開け中に入れば、向こうは向こうでこちらに背を向け何かしている。
・・・
「私が暗殺者だったらどうするつもり?」
そう声をかけて、ようやくこちらを振り返った。
その顔は相変わらずの不機嫌そうな顔で。
「跡取りでなくなった俺に暗殺者を送り込まれるだけの価値はないだろう。」
「・・・それもそうね。」
自虐のような言葉にそう応えてやれば、不機嫌そうな顔がさらに歪んだ。
「笑いにきたのか?」
「馬鹿にしにきたのよ。」
「・・・何が違うんだ・・・?」
「あなた、笑うほどの価値もないのよ。」
「・・・、はぁ。」
そうため息をつくと、部屋にあった応接セットに座り私にも座るよう促した。
「良いのかよ?元婚約者とはいえ男と二人きりになって。」
席を勧めておいて何を今更。
「どこかの誰かさんのおかげで、公衆の面前で婚約破棄された私は傷モノだもの。それに、あなたと私が犬猿の仲なのは有名な話だし。誰も邪推すらしないわ、今更。」
「そうか、悪かったな。」
「それは婚約破棄に関して?」
「ああ。」
流石に、婚約破棄のことくらいは悪く思ってるみたい。
「いいわよ、誰も許す気なんてないから。」
「・・・。」
なんとも言えない表情をしてる。
そんな顔をじっと見つめて、そう言えばしかめっ面以外をこんなにしっかりとみたことが無いな、と思う。
ああ、こんなにゆっくりとした時間を過ごすのも婚約して初めてのことかもしれない。
婚約を正式に解消してからってのが、なんて皮肉。
「何しにきたんだ?」
私がじっと見つめていることに居心地が悪くなったのか、そう言葉を発した。
「・・・ちょっと、聞きたいことがあって。」
「なんだ・・・?」
心当たりを探るように考え始めるけど、結局見つけられなかったのか不思議そうな顔をこちらに向ける。
「彼女のどこがよかったの?」
「は?」
私の問いに一瞬虚をつかれた顔をして、その後さらにほんの一瞬顔が歪んだ。
「彼女のどこが好きだったのかなと思って。」
そう言葉を続ければ、自嘲する様に顔が歪む。
「・・・っは、俺は魅了にかかってたんだぞ?好きも何も作られた感情だ。そんなこと聞いてなんになる?」
おどけた様に、自嘲する様に言葉をのべる。
「・・・それでも、好きだったのでしょう?」
魅了にかかっていた男どもは最初それを説明された時は真実の愛だなどとほざき反発していたが、冷静に自分の置かれた立場や周りからの目線に気づいてからは一気に掌返し子爵令嬢を悪様に罵り自身は被害者だと訴えた。
そんな中この男は反発をすることも、悪様に罵ることも、被害者だと弁明することも無かったのだ。
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