18 / 39
アザーズ Side
恋心なんてお粗末なもの
しおりを挟むコンコンッ
「開いている。」
扉をノックすれば素っ気ない返事が返ってきた。
無言で扉を開け中に入れば、向こうは向こうでこちらに背を向け何かしている。
・・・
「私が暗殺者だったらどうするつもり?」
そう声をかけて、ようやくこちらを振り返った。
その顔は相変わらずの不機嫌そうな顔で。
「跡取りでなくなった俺に暗殺者を送り込まれるだけの価値はないだろう。」
「・・・それもそうね。」
自虐のような言葉にそう応えてやれば、不機嫌そうな顔がさらに歪んだ。
「笑いにきたのか?」
「馬鹿にしにきたのよ。」
「・・・何が違うんだ・・・?」
「あなた、笑うほどの価値もないのよ。」
「・・・、はぁ。」
そうため息をつくと、部屋にあった応接セットに座り私にも座るよう促した。
「良いのかよ?元婚約者とはいえ男と二人きりになって。」
席を勧めておいて何を今更。
「どこかの誰かさんのおかげで、公衆の面前で婚約破棄された私は傷モノだもの。それに、あなたと私が犬猿の仲なのは有名な話だし。誰も邪推すらしないわ、今更。」
「そうか、悪かったな。」
「それは婚約破棄に関して?」
「ああ。」
流石に、婚約破棄のことくらいは悪く思ってるみたい。
「いいわよ、誰も許す気なんてないから。」
「・・・。」
なんとも言えない表情をしてる。
そんな顔をじっと見つめて、そう言えばしかめっ面以外をこんなにしっかりとみたことが無いな、と思う。
ああ、こんなにゆっくりとした時間を過ごすのも婚約して初めてのことかもしれない。
婚約を正式に解消してからってのが、なんて皮肉。
「何しにきたんだ?」
私がじっと見つめていることに居心地が悪くなったのか、そう言葉を発した。
「・・・ちょっと、聞きたいことがあって。」
「なんだ・・・?」
心当たりを探るように考え始めるけど、結局見つけられなかったのか不思議そうな顔をこちらに向ける。
「彼女のどこがよかったの?」
「は?」
私の問いに一瞬虚をつかれた顔をして、その後さらにほんの一瞬顔が歪んだ。
「彼女のどこが好きだったのかなと思って。」
そう言葉を続ければ、自嘲する様に顔が歪む。
「・・・っは、俺は魅了にかかってたんだぞ?好きも何も作られた感情だ。そんなこと聞いてなんになる?」
おどけた様に、自嘲する様に言葉をのべる。
「・・・それでも、好きだったのでしょう?」
魅了にかかっていた男どもは最初それを説明された時は真実の愛だなどとほざき反発していたが、冷静に自分の置かれた立場や周りからの目線に気づいてからは一気に掌返し子爵令嬢を悪様に罵り自身は被害者だと訴えた。
そんな中この男は反発をすることも、悪様に罵ることも、被害者だと弁明することも無かったのだ。
69
お気に入りに追加
3,714
あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。


王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!

殿下が私を愛していないことは知っていますから。
木山楽斗
恋愛
エリーフェ→エリーファ・アーカンス公爵令嬢は、王国の第一王子であるナーゼル・フォルヴァインに妻として迎え入れられた。
しかし、結婚してからというもの彼女は王城の一室に軟禁されていた。
夫であるナーゼル殿下は、私のことを愛していない。
危険な存在である竜を宿した私のことを彼は軟禁しており、会いに来ることもなかった。
「……いつも会いに来られなくてすまないな」
そのためそんな彼が初めて部屋を訪ねてきた時の発言に耳を疑うことになった。
彼はまるで私に会いに来るつもりがあったようなことを言ってきたからだ。
「いいえ、殿下が私を愛していないことは知っていますから」
そんなナーゼル様に対して私は思わず嫌味のような言葉を返してしまった。
すると彼は、何故か悲しそうな表情をしてくる。
その反応によって、私は益々訳がわからなくなっていた。彼は確かに私を軟禁して会いに来なかった。それなのにどうしてそんな反応をするのだろうか。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。


「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる