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アザーズ Side
側妃と王妃のお茶会③
しおりを挟む「・・・あら、まあ。」
とっさに出たのは、こんなに意味のない言葉。
「あの、聞かせていただきたいです。王妃様は陛下が側妃を娶られることをどうお思いですか?もちろん他にも色々と問題がありますが、陛下や王妃様のお気持ちに背いてまで王太子様の尻拭いをする必要はないと思います。」
ハンナマリもそんなことを気にしてくれていたのね。
驚きの後は、想像していなかった気遣いにおかしさがこみ上げてくる。
「ふふふっ、3人ともありがとう。私のことを気遣ってくれているのね。ふふ、ふ、ふふふ、そうなのね、あなたたちはその話を信じているのね。」
3人の気持ちは嬉しいながらも、笑いが抑えきれなかった。
「王妃様?」
「ふふっ、ごめんなさいね。そうよね、皆しっかりしているからいつの間にか忘れていたけど、3人とも息子と同年代だったものね。それじゃあその話を信じてしまってもしょうがないわね。」
私の言葉に、3人とも頭にハテナマークが浮かんでいるわ。
3人同時にこんな顔をしているなんて珍しいわね。
「はあ、そうね、3人の気遣いはありがたいのだけど、私と陛下は相思相愛でも何でもないわよ。愛情は確かにあるけど、男女のそれというよりは家族のそれね。」
「・・・そうなのですか?」
ライサがじっと窺うように尋ねてくる。
「ええ、そうよ。」
「でも、陛下は違うのでは?唯一の妃と宣言されて、実際に今まで側妃を娶られていませんし、王妃様のことを愛しておられるのでは?」
ライサが重ねて問いかけてくる。
「それはないわね。妃は確かに私だけだけれどそれなりに遊び、と言っていいのかしら、娼館に行ったり娼婦を呼んだりはあるわよ。後々面倒に発展することもあるし、あの人の気質から女官や貴族の令嬢に手を出すなんてことはなかったけれどね。」
あけすけに言ってしまえば、3人とも驚いた顔をしている。
「本当は側妃を娶るという話もあったのよ。私が息子を産んだ後、産後の肥立ちが悪くて二人目は難しいと診断された時にね。
ただ、あの頃は西の隣国で起きた戦争の余波が大きくてこの国も近隣諸国も一触即発って状態で選べる令嬢がいなかったのよ。私の婚姻も、私が18歳になってからの予定が15歳の時に早まるくらい色々と難しい時期でね。
結局、陛下の弟である大公家に男児が生まれたことで後継問題はとりあえず解決というか後回しにできるようになったから、側妃を娶らないことになったの。
とはいえ、それで対外的に王子が1人で側妃を娶らないのもちょっと問題があるから、私と陛下は相思相愛で他に妃は娶る気はないと公言するようになったし、唯一の妃だと宣言したの。」
「・・・」
「ふふっ、当時のことを知っている人間は口には出さないけれど私たちに男女の情が無いことは知っているから、私たちの気持ちを心配されるなんてちょっと新鮮だったわ。」
ふふ、それにしてもちょっと甘やかしすぎちゃったかしらねぇ。
いえ、私が甘え過ぎてしまってのかしら。2人のことでテンパってしまっていたとはいえ反省すべき点ね。
それにしても、私たちが理想の夫婦と言われているのは知っているし、そう振る舞ってきたけどそれをそのまま信じるのもどうかしら。あとの2人はともかくとして、ハンナマリも信じているようだったし。
まあ、陛下も顔面詐欺なのよね。バカ息子にそっくりで美しく華やかな顔立ち、唯一違うのが垂れ目なところ、それが全体で見ると優しくて誠実そうに見えるのよねぇ。
それも間違ってはいないけど、あくまで生身の男性よ。
「・・・それでも、長年連れ添った伴侶が他の女性と一緒になるのは嫌じゃないのですか?娼館に行くのと側妃を娶るのは違うのではないでしょうか?」
ライサがこんなにも追求してくるのは珍しいわね。
その声はどこか必死で微かな期待が込められている気がするのだけど、そんなに純愛に憧れているのかしら?
「まあ、3人の前では情けない姿ばかり見せているし、相談ばかり持ちかけているけれど・・・」
そこで言葉を切った私は、まとっていた空気を変える。
空気がピンと張り詰め、3人が息を飲む。
「私は王妃ですもの、たかが側妃ごときで揺らぐものではなくってよ。」
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