愛を疑ってはいませんわ、でも・・・

かぜかおる

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アザーズ Side

側妃と王妃のお茶会①

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美しい花が咲き乱れる庭園に、女性たちの涼やかな声が響いている。

王宮内の一角、特に選ばれたものしか入ることを許されない領域は、国一番の美しさを保っている。
その中で涼やかな声を上げる花たちもまた、この国随一の女性の集まりだった。

王妃と王太子妃、そして王太子の側妃の3人で開かれたお茶会は、女性同士の諍いの影もなくなごやかな様相だ。

「息子とは最近どうかしら?」

5人が揃い、定型の挨拶が交わされた後、王妃が4人に向けて言った。

「変わらずよくしていただいておりますわ。」

「恙無く過ごさせていただいております。」

「私もですわ。」

王妃に視線を向けられた側妃3人はスラスラと当たり障りのない答えを返す。

「マルガレータちゃんはどう?またあの子が馬鹿なことしていない?」

王妃の問いに、1人答えを返していなかった王太子妃が美しい笑みを浮かべて答える。

「ええ、よくしていただいていますわ。皆さんと同じように優しくしていただいております。」

彼女もまた当たり障りのない答え。
それに、ふう、と王妃がため息をついたところで、1人の侍従がお茶会が開かれている場所に来ているのが見えた。

「あらまあ、随分と早いお迎えねぇ。」

王妃のその言葉が聞こえたのか、侍従は少々居心地が悪い様子を見せる

「まあいいわ、マルガレータちゃん行ってらっしゃい。」

「・・・よろしいのですか?」

「ええ、あなたが嫌でなければ早く行っておあげなさい。」

「ありがとうございます。申し訳ありませんが、お先に失礼いたします。」

そう言うと王太子妃はスッと立ち上がり、一礼をしてお茶会の場を辞した。



ほぅ、とため息をつきながら、いそいそと足早に去っていく義娘の後ろ姿を見送る。

息子とのことを尋ねれば頬をピンクに染めていた純真な少女はいなくなってしまった。
それでも、こうやって呼び出しをされれば喜び勇んで向かう義娘の姿を見るとあのバカ息子の頭を引っ叩きたくなってしまうわね。

「よろしかったのですか?」

そう声をかけてきたのは側妃の1人ハンナマリ。

「ええ、久々だったしね。それに後であなたたちが叱ってくれるのでしょう?」

少し茶目っ気を出しウィンクながら言うと、案の定ハンナマリがニヤリと笑う。
そして、いい獲物を見つけたという顔をしたマーリトが口を開いた。

「ええ、今日の夜伽はわたくしの番ですから、しっかりと躾けておきますわ。」

そしてもう1人のライサも笑みを浮かべて頷いていた。


バカ息子が婚約者だったマルガレータちゃんとの婚姻の直前に他の女にうつつを抜かしたせいで、2人がおかしくなってしまった。
マルガレータちゃんは結婚早々に側妃を娶ることを望むようになり、バカ息子はマルガレータちゃんをそばから離そうとしなくなったの。

2人とも公務は完璧にこなしていたこともあって、どうしようもなく手をこまねいていた私たち。
今回のようにお茶会の途中で呼び出すバカ息子を止めることもできないくらい私も陛下も不甲斐なくなっていたわ。


そんな空気を打ち破ってくれたのは、婚儀の直後に娶ることになった3人の側妃達だった。


バカ息子同様に、魅了の力を持った娘に惚れ込んだ婚約者に婚約破棄をされ行き場を失っていたハンナマリを中心にバカ息子の根性を叩き直し、恥ずかしながら2人のことになると不甲斐なくなる私にも忌憚ない意見をくれる3人。

マルガレータちゃんの公務をも支えてくれる3人は今ではなくてはならない存在になってくれているわ。

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