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アザーズ Side
王と王妃の夜更け
しおりを挟む「なあ」
「ねえ」
夜更けの国王夫妻の寝所、寝支度を調え軽い酒とつまみを嗜みながら寛ぐ。
王と王妃という立場上、本当の意味で二人きりになれる唯一と言ってもいい時間。
普段であれば身分というしがらみを横に置き、フランクに語り合うはずのこの時間だが、今日は二人とも口が重い。
何度目かの沈黙の後やっと言葉を発したのは、王と王妃、同時だった。
「何でしょうか?」
先を譲るのは王妃の方。
これはいつものことで、押しのあまり強くない王は親しい人間しかいないような場では同じ話題や議題だと自分の意見などを述べずに同意して話を終わらせてしまうことがままある。
そのため先に話をさせて、とりあえず意見などを出させておくのが習慣になっているのだ。
譲られた王は視線を彷徨わせ、どう言えばいいか迷っている様子だった。
それでも、やっと意を決したのか王妃の目を見ながらこう切り出す。
「・・・側妃を娶ってもいいだろうか?」
「あらまあ、どなたを見染められましたの?おめでたいことですわね。」
王妃の間髪入れない返しに、慌てる王。
「い、いや、そういう訳では、なくてだな・・・。」
慌てふためきしどろもどろになっている様子に、王妃が吹き出してしまう。
「・・・分かってて言ったのか。」
笑いの止まらない王妃に、拗ねた様子でじとっとした目を向ける王。
「ふふっ、ごめんなさい。あなたがあまりに慌てるから。」
王妃の笑いがやっとおさまってきた。
息を整え、真剣な目を王に向ける。
「私もそれを相談しようと思っていました。あなたがいいのであれば、その話を進めましょう。」
「・・・甘いだろうか?」
瞳に浮かんだ微かな迷いと、呟くような言葉。
「甘いでしょうね。でも、国を荒らさない範囲で幸せを望むのも、願うのも許されないなんてことはないと思うわ。」
返ってきたのは、自信に満ちた言葉と微笑みだった。
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