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ヴァルッテリ Side
ある男の束縛
しおりを挟む「ええ、知っているわ。あなたからの、ヴァルからの愛を疑ってはいませんわ、でも・・・」
俺の声の大きさに驚きを見せたものの、それ以外にメグの心が揺れた様子もないまま言葉が紡がれる。
「でも?」
「・・・ずっと、不安でしたのいつしかあなたが誰かに盗られるのではないか、あなたが離れて行くのではないか、と。」
・・・気づいて、いなかった。
自分以外の誰かにとられてしまうのではないか、他の誰かに懸想して離れていってしまうのではないか。
そんな不安や嫉妬をメグも抱いているなんて思っていなかった。
そんな感情は自分しか持っていないと思っていた。
そのことに不謹慎ながらも喜びを抱いてしまう。
そして同時に、メグの不安を現実のものにしてしまった自分に嫌悪感を、後悔を抱く。
自分が抱いていた不安を、相手も抱いていたと気づかずに実現してしまったことに情けなさと申し訳なさでいっぱいになる。
「メグ、ごめ・・・。」
謝罪の言葉を口にしようとすれば、メグの指がそっと口に触れて、言い切る前に言葉が止まる。
「でね、気付いたの。あの日、あなたが中庭でエリナ・ハーヤネンに私の愚痴をこぼしているのを聞いた時に!」
「メグ?」
急に明るくなったメグの声音に驚く。
「そう!そもそも、私一人でヴァルのことを独占しようとするから不安になるのだわ!って。独占しているから、他の人が出てきた時に盗られたなんて感じてしまうのよ。はじめから3人、4人で共有していればそれが5人、6人に増えたって盗られたなんて思わないでしょう?」
「メ、グ?」
メグの言葉は聞こえているものの、頭が理解を拒絶する。
それでも満面の笑みを浮かべながら紡がれるメグの言葉は止まらなかった。
「ね?だからヴァルは変わらなくてもいいのよ。今まで通り国のために王太子として、私は婚約者としてやっていけばいいの、ただ、結婚式をする時に側妃も娶ってもらうだけ。側妃たちも大切にすればいいだけ。ヴァルだって私に子供ができなければ、どちらにせよ側妃を娶らなくてはいけないのだもの、覚悟はしているでしょう?」
愕然として、言葉が出なかった。
本当に目の前にいるのがメグなのか、確信がもてなくなる程の衝撃だった。
「だから、ね、私はヴァルを愛しているし、ヴァルも私を愛せばいいのよ。」
そう言ったメグの顔が近づいてきて、二人の唇が重なった。
なすがままにされる俺は、ただただ彼女の重みが、温もりが、確かにここにあるのだと、どこかに行ってしまわないようにと、彼女の体に回した腕に力をこめることしかできなかった。
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