愛を疑ってはいませんわ、でも・・・

かぜかおる

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ヴァルッテリ Side

ある男の求愛

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王宮内を駆けずり回りやっと見つけた。

「メグっ!」

呼べば振り返る彼女の顔に喜色が浮かんでいると感じるのは俺の願望だろうか。
半年以上ぶりに対峙するメグは女性らしさが増して、ますます魅力的な女性になっていた。

抱きしめて、大声で赦しを請い、愛を乞いたい。

ただ、もうこれ以上公衆の面前で失態を犯すわけにはいかない。

はやる気持ちを抑えきれないまま、メグの手を取り足早に自分の居室に向かう。


部屋に入ると、メグが息も絶え絶えになっていた。

「ヴァルッテリ殿下、何を?」

俺のペースで歩いてしまったのだから当然と、謝罪の言葉を口にしようとした時にメグの言葉が耳に入った。

「ヴァルだ。」

気がつけばメグを自分の腕の中に囲い込み、そう口にしていた。
ドクドクと耳元でうるさいばかりに心臓の音が聞こえる。

「ヴァルッテリ殿下?」

ドクンッ、と心臓の音がひときわ大きく鳴り響く。

ダメなのだろうか。
遅すぎたのか。

もう、前のように戻れないのだろうか。

絶望で目の前が真っ暗になりそうだった。

「メグ、ヴァル、だ。」

なんとか、声を絞り出した。

ただ、もう一度ヴァルッテリ殿下と他人行儀に呼ばれたら自分がどうなるのかは分からなかった。

腕の中でもぞもぞと動くと、メグが顔をあげた。

「ヴァル?」

それだけで、嬉しさがあふれんばかりにこみ上げてきて、もう絶対に離してなるものかとギュウギュウに抱きしめる。

「メグ!メグ!!」

何度も何度も名前を呼んでしまった。

気づくと、メグが俺の腕をペシペシと叩いていた。

「ヴァ、ヴァル、い、息、でき、な、い」

ハッとなって、慌てて腕の力を緩めるけれど、メグを開放する事もできなかった。
このままメグが腕の中に居る幸せを噛み締めたかったけれど、そうは行かない。
きちんと謝罪をしなくては。

メグが息を整えきったタイミングを見計って、声を掛ける。

「メグ、話をしよう。」

そのまま、メグを抱えてソファに座りメグを横抱きにして膝の上に座らせる。
前は当たり前だった距離感。

本当はメグを座らせて、俺は跪いて許しを請うべきなのだろうけど、メグが逃げられないようにと思うと自然とこう座っていた。

「メグ、ごめん。どう謝れば良いのか分からないのだけど、本当に最低なことをした。謝っても謝っても、許されることじゃないのはわかってる。申し訳のしようもない。」

頭を下げて、誠心誠意心を尽くす。

「お気になさらないでください。」

「メグ?」

メグの両手がそっと俺の顔を包み、頭を上げさせた。

「私は大丈夫ですから。」

そう続けるメグの顔には笑みが浮かんでいた。

その笑顔にどこか違和感を感じる。
その違和感が何なのか掴めなくて焦りを感じた。

「そんな訳ない!俺が間違った、メグを傷つけた。ごめん、本当にごめん。」

メグの顔をよく見ながら、重ねて謝罪する。
違和感が何なのか、必死に探る。

「大丈夫ですよ。心が移ろうことなど誰にでもあることですもの。」

その言葉に、ゾッとした。

今までと、根本的に違うのだと。

それは俺の謝罪を受け入れるのではなく、過ちを受け入れる言葉だった。

いや、過ちが正義なのだと認める言葉。

「違う!違うんだ!!ごめん、俺が悪かったから、もう絶対に間違わない。メグ以外の誰にも心を移さないと誓うから!」

そんなもの必要ない、そんな言葉をもらうくらいなら、怒り、罵り、泣き喚かれた方が何倍も良かった。
そうしてくれれば、まだ犯した過ちを償う余地があるのだから。

「あらあら、いけませんわ。あなたは次期国王となられるお方、できるかも分からない誓いなど簡単に口にすべきではありませんわ。」

そう、コロコロと笑いながら言うメグに、目の前が真っ暗になる。

「どう、すればいい?どうすれば、メグにまた愛してもらえる?」

なんとか、なんとか絞り出した言葉。
言いながらも本当に声が出て、伝わっているのかも自信がもてなかった。

虫がいいことはわかってる。裏切ったのは俺の方。
どれほどメグを傷つけたのか計り知れない。
それなのに、愛を乞うなどどれほど傲慢なのか。

それでもメグに愛されない未来などありえない。

メグは俺の様子など意に介さないように、キョトンとした顔をしながら首を傾げる。

「ヴァルッテリ殿下のお心のままに。それに、いつ私がヴァルのことを愛していないなど言いました?私は変わらずあなたの事を愛しているわ。」

「なら、ならなんで側妃の選定を願い出た?両陛下から聞いた。メグから側妃の選定を願い出たと、愛してくれているのならなぜ!?愛してる、メグのことを愛してるんだ!信じてくれないかもしれないけど、信じるのが難しいかもしれないけど、嘘じゃない、心からメグのこと愛してるんだ。」

子供の駄々っ子よりひどい叫びが口を吐いて出た。

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