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ヴァルッテリ Side
ある男の驚愕
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「あなた方は、エリナ・ハーヤネンによって魅了の魔法がかけられています。」
王宮の一室にエリナ・ハーヤネンを取り合う男たちが集められ、言われたのがこの言葉だった。
その意味を理解した瞬間、スッと血の気が引いた。
さっきまで恋敵とここにいた男たちに敵意を向けていたのに、そんな感情一気に消え去った。
エリナ・ハーヤネンへの想いと共に。
あまりのショックに震える体を叱咤して、メグのところへ向かおうとした。
しかし、この部屋を出ることすらする前に止められた。
まるで俺の行動を読んでいたかのように、魅了の魔法が抜け切るまでは会いたくない、とメグ自身が言っていると伝えられた。
そこからが地獄だった。
またメグが誰か他の男にかっさらわれてしまうのではないか、他の男に懸想してしまうのではないか、あの焦りが頭をもたげる。
前とは違う、メグの俺に対する印象はゼロどころかマイナスだろう。
今何かに誘惑されたら、躊躇なくそちらになびいてしまうかもしれない。
不安と焦りに苛まれる日々を過ごした。
魔法が抜けていき、頭が冷静になればエリナ・ハーヤネンに向けていた感情が、メグへの感情を投影させていたものに過ぎないことが分かる。
悔やんでも悔やんでも悔やみきれない。
色々な感情で頭がおかしくなりかけた頃、やっと魔法が抜けきった。
メグに会いにいきたいはやる気持ちを押さえ込み両陛下、両親と面会する。
「この度は私の未熟さゆえに、ご心配ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」
そう言って頭を下げると、間髪入れずに王妃からの言葉が飛んできた。
「全くだわ、大いに反省なさい。」
王妃の物言いに王も苦笑しているが、同じ気持ちなのだろう。
「はい、申し訳ありませんでした。」
反論のしようもなく俺が悪いので、ただただ頭を下げる。
「まあ、治療中の事も聞いている。あまりとやかく言わずとも何をすべきは分かっているだろう?マルガレータ嬢の元へも早くいきたいだろうし、必要なことだけ話してしまおう。」
俺の焦りなどお見通しなのだろう、本題に入ってくれる。
それが、あんな話とは思わなかったが。
「ヴァルッテリ、落ち着いて聞け。お前の側妃候補の選定が始まっている。」
「・・・は?」
「だからな、お前の、側妃候補の、選定が、始まっている。」
「いえ、区切って頂かなくてもわかります。そうではなくて、は?え?なぜ側妃候補の選定が?まだ先の話でしょう?」
訳が分からなかった。魅了される前は側妃を持たないと公言していたし、少なくとも結婚して4年は猶予があるはず。
こんな早くに側妃候補の選定などおかしすぎる。
「混乱するのは分かるが、落ち着け。」
「理由を説明してください。」
「マルガレータちゃんが望んだのよ。」
「え?」
「だから、マルガレータちゃんが望んだの。」
背筋がすうっと冷えていく。
「な、んで、せい、ひ、は?」
言葉が、まともに出てこない。
どくどくと、耳元で心臓の音がうるさいくらいに鳴り響く。
「それはあなた次第だそうよ。あなたがマルガレータちゃんを望んでも、あの女を望んでも、どちらにせよ側妃は必要だから候補を選定して欲しいと言うのがマルガレータちゃんの意見ね。」
王妃の言葉は途中からあまりよく聞こえていなかった。
ただ、メグが俺の妃になることを拒否していないことに安堵し、側妃を望むメグに言い知れぬ不安を覚える。
そこから、王と王妃が何か話していたようだが、もう俺の耳には何も入ってこなかった。
その様子に話しても無駄だと思ったのか、王から退出の許可が出た。
「二人できちんと話し合いなさい。」
部屋を退出する俺の背にその言葉がかけられた。
王宮の一室にエリナ・ハーヤネンを取り合う男たちが集められ、言われたのがこの言葉だった。
その意味を理解した瞬間、スッと血の気が引いた。
さっきまで恋敵とここにいた男たちに敵意を向けていたのに、そんな感情一気に消え去った。
エリナ・ハーヤネンへの想いと共に。
あまりのショックに震える体を叱咤して、メグのところへ向かおうとした。
しかし、この部屋を出ることすらする前に止められた。
まるで俺の行動を読んでいたかのように、魅了の魔法が抜け切るまでは会いたくない、とメグ自身が言っていると伝えられた。
そこからが地獄だった。
またメグが誰か他の男にかっさらわれてしまうのではないか、他の男に懸想してしまうのではないか、あの焦りが頭をもたげる。
前とは違う、メグの俺に対する印象はゼロどころかマイナスだろう。
今何かに誘惑されたら、躊躇なくそちらになびいてしまうかもしれない。
不安と焦りに苛まれる日々を過ごした。
魔法が抜けていき、頭が冷静になればエリナ・ハーヤネンに向けていた感情が、メグへの感情を投影させていたものに過ぎないことが分かる。
悔やんでも悔やんでも悔やみきれない。
色々な感情で頭がおかしくなりかけた頃、やっと魔法が抜けきった。
メグに会いにいきたいはやる気持ちを押さえ込み両陛下、両親と面会する。
「この度は私の未熟さゆえに、ご心配ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」
そう言って頭を下げると、間髪入れずに王妃からの言葉が飛んできた。
「全くだわ、大いに反省なさい。」
王妃の物言いに王も苦笑しているが、同じ気持ちなのだろう。
「はい、申し訳ありませんでした。」
反論のしようもなく俺が悪いので、ただただ頭を下げる。
「まあ、治療中の事も聞いている。あまりとやかく言わずとも何をすべきは分かっているだろう?マルガレータ嬢の元へも早くいきたいだろうし、必要なことだけ話してしまおう。」
俺の焦りなどお見通しなのだろう、本題に入ってくれる。
それが、あんな話とは思わなかったが。
「ヴァルッテリ、落ち着いて聞け。お前の側妃候補の選定が始まっている。」
「・・・は?」
「だからな、お前の、側妃候補の、選定が、始まっている。」
「いえ、区切って頂かなくてもわかります。そうではなくて、は?え?なぜ側妃候補の選定が?まだ先の話でしょう?」
訳が分からなかった。魅了される前は側妃を持たないと公言していたし、少なくとも結婚して4年は猶予があるはず。
こんな早くに側妃候補の選定などおかしすぎる。
「混乱するのは分かるが、落ち着け。」
「理由を説明してください。」
「マルガレータちゃんが望んだのよ。」
「え?」
「だから、マルガレータちゃんが望んだの。」
背筋がすうっと冷えていく。
「な、んで、せい、ひ、は?」
言葉が、まともに出てこない。
どくどくと、耳元で心臓の音がうるさいくらいに鳴り響く。
「それはあなた次第だそうよ。あなたがマルガレータちゃんを望んでも、あの女を望んでも、どちらにせよ側妃は必要だから候補を選定して欲しいと言うのがマルガレータちゃんの意見ね。」
王妃の言葉は途中からあまりよく聞こえていなかった。
ただ、メグが俺の妃になることを拒否していないことに安堵し、側妃を望むメグに言い知れぬ不安を覚える。
そこから、王と王妃が何か話していたようだが、もう俺の耳には何も入ってこなかった。
その様子に話しても無駄だと思ったのか、王から退出の許可が出た。
「二人できちんと話し合いなさい。」
部屋を退出する俺の背にその言葉がかけられた。
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