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マルガレータ Side
心の裡②
しおりを挟む「ええ、知っているわ。あなたからの、ヴァルからの愛を疑ってはいませんわ、でも・・・」
「でも?」
「・・・ずっと、不安でしたのいつしかあなたが誰かに盗られるのではないか、あなたが離れて行くのではないか、と。」
そう、ずっと、ずっと不安だった。
ヴァルは、ヴァルッテリ殿下は昔から女性に人気だった。美しく目を引く容姿に、その身分。
長じてからは次期国王にふさわしい立ち振る舞いに風格が備わって行った。
一方私は、腐っても公爵家の娘なのだから美しい容姿ではあるものの、どこか地味で華やかさのない顔立ち。
王太子の婚約者としての教育もあって、男性顔負けの知識で議論を交わす、女らしさなど縁のない可愛げのない女だ。
ヴァルからの愛を疑ってはいない。全身で、言葉で愛してると伝えてくれるのだから。
だから、不安だった。
今までは、幼かったから交流も限られていた。だから、私がよく見えるのではないか。
今はまだ気付いていないけれど、身長が伸び、声が低くなり、体がしっかりとしてきたヴァルが少し手を伸ばすだけで手をとってくれる女性が列をなしている。そのことを、社交の機会が増えてきたことで、気付いてしまうのではないか。
私よりももっと美しく、賢く、華やかで、女性らしい女がたくさんいることを。
そうでなくても、婚姻を結んでから4年子ができなければ、側妃を迎えることになる。
さらに、ヴァルは二人以上の子、できれば王子を成すことが期待されている。私が産むことができなければ、たとえ子供がいても側妃を迎えることになってしまう。
それに私は耐えられるのだろうか?
他の女とヴァルを共有するなど、耐えられるだろうか?
そんな不安がずっと私の中に渦巻いていた。
「メグ、ごめ・・・。」
ヴァルが何か言おうとしているのを人差し指をヴァルの口に当てて止める。
「でね、気付いたの。あの日、あなたが中庭でエリナ・ハーヤネンに私の愚痴をこぼしているのを聞いた時に!」
「メグ?」
「そう!そもそも、私一人でヴァルのことを独占しようとするから不安になるのだわ!って。独占しているから、他の人が出てきた時に盗られたなんて感じてしまうのよ。はじめから3人、4人で共有していればそれが5人、6人に増えたって盗られたなんて思わないでしょう?」
「メ、グ?」
「ね?だからヴァルは変わらなくてもいいのよ。今まで通り国のために王太子として、私は婚約者としてやっていけばいいの、ただ、結婚式をする時に側妃も娶ってもらうだけ。側妃たちも大切にすればいいだけ。ヴァルだって私に子供ができなければ、どちらにせよ側妃を娶らなくてはいけないのだもの、覚悟はしているでしょう?」
笑顔でそう言い切れば、ヴァルの顔にはまさに絶句と言わんばかりの表情をしていた。
「だから、ね、私はヴァルを愛しているし、ヴァルも私を愛せばいいのよ。」
そう言って、ヴァルの唇に私のそれを重ねた。
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