愛を疑ってはいませんわ、でも・・・

かぜかおる

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マルガレータ Side

婚約者とは②

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そんな婚姻拒否権を使うつもりかもしれないとなれば動揺してしまうのも必然と言えた。

「いえ、婚姻拒否権を使うかどうかは魅了解除後のヴァルッテリ殿下次第と考えております。」

「そう、それは良かったわ。」

場に少しだけホッとした空気が流れる。

「ですが、皆様ご存知の通り私とヴァルッテリ殿下が寝所を共にするようになってから次の殿下の誕生日で4年が経ちます。」

この国では婚約者等の婚姻が前提の関係であれば、お互いの同意の元の婚前交渉はタブー視されていない。
一応妊娠などの可能性があるので、一般的には体がある程度出来上がる18歳を迎えてからが推奨されているが。

そう、私とヴァルッテリ殿下は体の関係があった。お互いに好意を持っている婚約者なのだから自然なことといえば自然なこと。
まあそれも、エリナ・ハーヤネンに籠絡されるまでだけど。


「・・・何が言いたい。」

王に続きを促される。

「私とヴァルッテリ殿下は子をなすという点において相性があまり良くない様子。ヴァルッテリ殿下がどのような決断をなされるかわかりませんが、どちらを選ぶにせよ側妃は必要になるかと愚行致します。」

4年間子ができなければ、王や王太子は側妃を娶ることができる。権利ではあるが実際はほぼ強制的に娶ることとなる。
子を作るのも仕事の内なのだから、当然のこと。

ただし、普通は結婚してから4年だ。
それに私たちの場合、寝所を共にすると言ったって初めての時はお互いに14歳、結婚していないから毎晩ではないし、あっても月に一度位の頻度。さらにはお互いに避妊薬を飲んでいたのだから、相性も何もない。

それでもそれを全て知られていると知りながら口にする意味を、ここにいる人達は推察してくれるだろう。

「・・・愚息のこと、許せないか?」

王の問いに私は首を横に振る。

「許す、許さないの問題ではございませんわ。たとえ魅了の力が働いたとはいえ、私的な部分で私たちがお互いに理解し合い、満たされていればこの事態は避けられたはず。それが出来なかったということは、私では力不足、不十分であったということ。
私なりに最大限努力してきたつもりではありますが、結果が語っています。
私だけで支えることができないのであれば、他の方の手を取るしか無いかと、恥ずかしながらそう考えております。」

「そうか。」

口を挟む隙を与えずそう言い切れば、王から返ってきたのは残念そうなため息まじりの言葉。

「まあ、しょうがないわね。失態を犯したのはわたくしたちの愚息の方。今の状況で見放されてないだけましでしょう。
陛下、残念な気持ちはわたくしも同じですが、側妃候補の選定は決定しましょう。」

王は残念そうな顔をして何も言わないでいるが、王妃の言葉に反対する気はないのだろう。
否の声は上がらなかった。

王はロマンチストな方だから、私たちがお互いに好意を持つようになったことをことのほか喜んでいた。
それが、こんな結末になったことが口惜しいのだろう。

「ところで、魔導研究員としての勉強をしたいというのはどういうことかしら?」

「それは、・・・報告にも上がっておりますが、ヴァルッテリ殿下は私に不満があるようですから万が一に備えてですね。」

「それだけじゃないわよね。」

「ええ、わがままになってしまいますが、少し彼らから距離を置きたいのです。少しの間で良いので、何か別のことで気を紛らわせたいと思いお願いいたしました。」

「離れたいと思うほどに想っているのなら、側妃のことは考え直せんか?」

「陛下!」

「・・・いや、愚問であったな。許せ。」

陛下の悪あがきの問いに、王妃から叱咤が飛んだ。そして、私の表情を見て王は許しを乞うた。

「いえ、お気になさらないでください。」

それとしか、答えることはできなかった。


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