愛を疑ってはいませんわ、でも・・・

かぜかおる

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マルガレータ Side

報告書

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「マルガレータ?彼女は私の婚約者であることを笠に着て小難しいことを言うだけのつまらない、姦しいだけの女だ。愛しているのは君だけだよ、エリナ。」

王宮の中庭の東屋で、溺れそうなほどに甘い声音で囁いていたのは私の婚約者だった。

それを聞いた私の中で、張り詰めていた糸がプツンと音を立てて切れた。



エリナ・ハーヤネン子爵令嬢の名が初めて報告書に載ったのは半年前のことだった。

王宮には一般公開エリアや、貴族公開エリアがありこれらのエリアは執務エリアや王族の住居エリアと違い簡単な手続きや身分証明で入ることができる。

国の権威や財力を示すためもあり、しっかりと手入れをされた庭園などがあるこのエリアは様々な身分や立場の人々が気楽に利用する憩いの場である。それと同時に、下位貴族の女性にとっての出会いの場でもあった。

貴族女性にとっての出会いの場は夜会やお茶会もあるのだが、招待されるもしくは招待された人と同伴しなくてはならず人脈が必要になる。そして同時に、夜会や茶会は格というものがありそれに見合うだけのドレスや装飾品を揃えなくてはならず、財力も必要になる。

それに比べてこの王宮の公開エリアであれば格もなく、むしろ気合の入った格好は逆に浮いてしまうこともあり、気軽に入れて様々な身分の人と出会う機会がある格好の場所だった。

この公開エリアは憩いの場ということもあり、厳格なマナーを要求されることもない。それを要求したならば逆に白い目で見られる場所でもあった。

とはいえ、限度はもちろんある。
下位貴族の女性が高位貴族の男性との出会いを求めて、行き過ぎた行動をしてしまうこともままあることで、目に余る行動をする令嬢には注意が行われると共に報告書が上がってくる。もちろん、時には男性が女性にということもあるのだが。

その報告書に名前が載っていたのが、エリナ・ハーヤネン子爵令嬢であった。

彼女が他の女性達と違ったのは、瞬く間に高位貴族の男性、しかも将来国を背負って立つことが期待されている令息達、を籠絡してしまったことだった。
その中に私マルガレータの婚約者である、王太子ヴァルッテリも含まれていた。

高位貴族の令息が次々に籠絡されるという異常事態にエリナ・ハーヤネン子爵令嬢の調査が行われ、結果報告書があげられたのが3ヶ月ほど前のこと。


他国の間諜や、特定の貴族による介入などの裏はなし。

ただし、魅了の魔法が使用されていることが確認された。

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