異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

文字の大きさ
上 下
167 / 196
第4章 ネシア国〜

クーガーのお兄さんはどこ!?

しおりを挟む

俺は、急に胸騒ぎがして思わず立ち上がる。

「どうしたんや、急に立って?」

「あ……もしだったらグリーさんとセバスも来てもらえませんか?」

「なんや?どないしたん?」

「ちょっと気になる事があって……」

俺はそう言うとグリーさんとセバスの手を引っ張って、神聖法国の奴隷が住まわされていた建物の前に転移した。

「……なんでこの建物の前に?」

グリーさんは首をひねって考えているが、俺は神聖法国に来る時はここをイメージして転移するからしょうがない。

「実は先ほどのクーガーのお兄さんの話を聞いていたら、なんか嫌な胸騒ぎがして……。もしかしてここに皆がいないから、あの中に行ってしまったんじゃないかって。」

俺はそう言うと後ろを振り向き、海の中に切り立った場所にある『神聖法国』を見た。

そこへ行くには細く切り立った坂道を登って行くしかなく、空を飛ぶ能力がないならば、あの道以外に通り道はない。

だからこそ、神聖法国の守りは鉄壁なのだ。
さらに『女神』がいたから尚更守りは厳重だった。

だがしかし、ついこの前俺がその『女神』と戦った時に『創造神』らしき者がその『女神』を消滅させてしまったので、あの国の守りは脆弱なものになってしまった。

だから避難民がこの国の別な場所に移動されてしまったと勘違いして、その守りの隙をついて単身突撃していないとも限らない。

俺はその事をグリーさんとセバスに告げると、探査魔法を神聖法国の方角に向けて使ってみる。もちろん全開でだ。

すると何らかの人らしき反応が、門を入ってすぐのところにかなりの人数あった。

動きの感じだと、どうも戦っているような感じがする。
1人と多数、って感じみたい。

俺は2人にそう伝えると、グリーさんが動いた。

「じゃあ私が偵察行ったるわ!」

グリーさんはそう言うと一瞬で姿が消え、門の近くに現れた。……あれは、いつ見ても仕組みわからないなぁ。



それからすぐにまたこっちに戻ってくると、「なんや獣人と兵隊が戦っとるわ。獣人はごっつう強いんやけど、それでも流石に相手の数がなぁ~。」

えっ、もしかして……?

「……急ぎましょう。私たち3人ならすぐですよ。」

そうセバスも行ってきたので、俺は頷いて2人の手を取り、転移魔法で戦闘の場所に直接現れた。

するとあまりの眩しさに周りが怯んでいる間に次々と兵士の意識を刈り取っていく。

殺すことまでしなくても、戦闘不能にしてしまえば良いからね。

俺達3人が次々と兵士を戦闘不能にしていると、離れて戦っていた獣人が俺たちの存在に気づいたようだ。

でもとりあえずは兵士を倒してからだと判断したらしく、こちらに寄ってくる気配はない。


かなりの数の兵士がいたはずだが、俺達3人が加わったことであっという間に全ての兵士を戦闘不能にすることが出来た。

するとそれまで何のリアクションもしてこなかった獣人が警戒しながらこちらに近づいてくる。

警戒してはいるが、先ほどまで一緒に兵士を倒していたのもあってか、人族だからといって完全否定はしていないようだ。

「……お前達、一体何者だ?」

その獣人はある程度の距離まで来るとそう聞いてきた。

「私たちはクレイン国のBランク冒険者『スノーホワイト』のメンバーの者です。あ、この人は違いますが。」

「はいな~。私はちゃいまっせ~。私は……」

セバスの言葉に続いてグリーさんが話す。

途中でグリーさんは言葉を切ると、倒れている人の少ないところで竜に戻った。

「……竜でっせ!どや、驚いたやろ?」

「……。」

そう言ってニシシッ!て笑ったグリーさん。

確かに驚いたと思うよ、口開けて呆然としてるから。

この獣人さん、多分クーガーのお兄さんなんじゃないだろうか?

獣人の種類は分からないが、少なくても同じ動物の顔をしている……気がする。

「ところであなたはどなたなんですか?私たちのことを聞いておいて話さない、なんてことありませんよね?」

セバスのその声を聞いてハッ!と戻ってきた獣人さん。

人の顔じゃないからよく分かりづらいけど、多分気まずい顔をしている気がする。

「疑ってすまなかった。てっきりその坊主の髪色でこの国の奴かと勘違いしたんだ。そうだよな、意識刈り取ってる時点で仲間じゃないよな。俺も気が立っていたから、すまなかった……。」

そう言うと、顔を歪めて深刻そうに俯いた。

俺たちはそれを見て互いに目を交わす。
代表して俺が声をかけることになった。

「あなたの名前は知らないですけど……もしかして弟さんのお名前はクーガーって言いませんか?」

「……っ!?」

その瞬間、彼はガバッ!と顔を上げて俺を見る。
驚いたその目は「なんでそれを知っているんだ?」と聞いているようだ。

改めてここにいた元避難民の、現在の詳しい情報を話すと、彼は始めは疑っていたものの、最後の方ではとても嬉しそうだった。

「そうか……やつらは先に国に帰っていたのか。そりゃあ、この辺を探していてもいるわけ無いよな。……ありがとうな、あいつらを解放してくれて。」

そう言って頭を下げる、クーガーのお兄さん。

「あっ、俺ずっと名乗ってなかったな。俺の名前はパニアだ。よろしくな!」

笑顔で手を差し出してきたので、俺もニコニコしながら握手した。

「シエル様、いつまでもここにいると彼らが目を覚ましてしまうかもしれません。早く転移しないと。」

「あっ、そうだね!じゃあみんな俺に掴まって!」

俺はパニアと手を繋ぎながら2人に声をかける。

2人はすかさず俺に掴まった。

その瞬間、俺はネシアの門の外に転移した。


そうそう、転移する瞬間に、俺と手を繋いでいたパニアさんが驚いて手を離しそうになったので、俺の方でギュッと握ったんだよね。……痛くなかったかな?
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

【番外編】貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

譚音アルン
ファンタジー
『貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。』の番外編です。 本編にくっつけるとスクロールが大変そうなので別にしました。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界で農業をやろうとしたら雪山に放り出されました。

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたサラリーマンが異世界でスローライフ。 女神からアイテム貰って意気揚々と行った先はまさかの雪山でした。 ※当分主人公以外人は出てきません。3か月は確実に出てきません。 修行パートや縛りゲーが好きな方向けです。湿度や温度管理、土のphや連作、肥料までは加味しません。 雪山設定なので害虫も病気もありません。遺伝子組み換えなんかも出てきません。完璧にご都合主義です。魔法チート有りで本格的な農業ではありません。 更新も不定期になります。 ※小説家になろうと同じ内容を公開してます。 週末にまとめて更新致します。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

処理中です...