異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

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第4章 ネシア国〜

どうしたらいいのさ!?

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それからしばらく人が引けていくまで座席で座って待っていると、他の4人がやってきた。

「どうだった、試合?」

リッキーが俺に聞いてくる。

俺は苦笑いをして「確かにすごいとは思うけど、あの時の俺達よりは……な?」と答えた。

「やっぱりお前もそう思ったか。実は俺達もそう思ったんだよ。実際に命かけて戦うのとはやっぱり違うよなぁ。」

どうやらリッキー達もそう感じたらしい。


するとそんな俺達に近づいてきた人がいた。ヒューザだ。

「よぉ~、お前ら、ここらじゃ見かけないやつだなぁ?どこから来た?」

ヒューザが俺を見据えながら低い声で話しかけてきた。

それに対してスノーホワイトの4人は、ヒューザの視線を遮るように俺の前に立つ。

「……俺達はクレイン国のスノービークという街からきた者だ。それがどうかしたか?」

代表してスコットさんが警戒をしながらそう答えた。

「……なんだ、そこにいる銀髪の奴らはてっきり神聖法国の回し者かと思ったんだが、違ったんだな。」

するとそう言って、あからさまにヒューザの声が柔らかいものになり、ピリピリとした雰囲気もなくなった。

どうやら彼の国の所属だと思われたらしい。

……それにしても、どこに行ってもそう思われるのが面倒だなぁ。

「俺達はどちらかというとその国と敵対していると言っていいくらいだな。この前もいろいろとあったしな。」

そんな事を言ってリッキーさんが肩を竦める。

確かにスノービークを襲ったのも神聖法国の女神だったわけだし、その女神も直接俺に向かってきて消されたしね。

さらにその国の奴隷をみんな解放したわけだし、あの国にとっては「敵」認定されてるはずだ。

「なるほどな……疑ってすまなかった。この国の住人も、外に出たやつらはなかなか戻ってこなくて音信不通ってやつも少なくないんだ。そいつらが神聖法国に連れられていった……なんて噂もあったんだ。」

そうヒューズは苦々しげに言った。

「ああ、それは噂じゃなくて事実だ。俺達はあの国にいた奴隷を全て解放して、奴隷になっていた獣人はさっきここに連れてきたばかりだ。今頃は身分確認をし終わって帰宅しているんじゃないだろうか?」

スコットさんがそう言うと、ヒューザは驚いた顔をして俺たちを見回す。

「お前たち……いったい、何者だ?」

「俺達か?俺達はクレイン国のBランク冒険者『スノーホワイト』というチームだ。あ、この人だけは違うがな。」

そう言ってスコットさんはグリーさんの方を見た。

当のグリーさんは手をヒラヒラさせて「どうも~」なんて言っている。……軽いな、グリーさん。

「……そっちの執事っぽいのや幼児もチームメンバーなのか?」

訝しげな顔してヒューザは聞いてくる。

あ、まだ冒険者登録とかしてなかったね!
よかった、思い出せて。
後でルーシェさんに頼みに行こう!

するとセバスがきれいな姿勢で一礼するとヒューザに答えた。

「ええ、まだ正式には登録されてませんが、その予定です。私はどちらかというと……召使い、のようなものですかね?」

そう言って俺の方を見たが、俺はそんなふうに思ったことはないよ!仲間じゃないか!

俺がそう言うとセバスは嬉しそうな笑みを浮かべて「ありがとうございます」と言った。

そんなやりとりを見ていたヒューザは肩をすくめた。

「まぁそちらの事情はわかった。そして奴隷になっていた奴が帰ってきたってことだが、本当だろうな?」

「ああ、俺達が一緒に連れてきたから間違いない。入り口の部屋の中で身分確認をしていたから、少し時間はかかるだろうがな。」

するとヒューザは少しホッとしたような顔をして「じゃあ、俺は行く。またな。」と言い残して去っていった。

もしかしてあの中に知り合いでもいたのだろうか?
なんとなく、そんな気がした。



それから俺たちは闘技場の入り口に向かった。

外に出ると、呼び止める人がいた。

声のする方を見ると、先ほどチケットを売ってくれたお姉さんだった。

「すみません、呼び止めちゃって!実は皆さん強者じゃないかと見込んでなんですが、2日後から始まる次の大会に参加いたしませんか?」

まさかのお誘いだったのでみんなの顔を見ると、なんだか複雑そうだった。

「参加しないかとの誘いなんだが……我々は冒険者なんでな。普段魔物と対峙しているから手加減ってものが苦手なんだ。『うっかり』なんてあったらまずいだろう?『人』と対するにしても、大抵は盗賊なんかの悪者だからな。そういう意味で、参加はちょっと……な。」

スコットさんが申し訳なさそうにお姉さんにそう言った。

なるほど、確かにね!

俺もまだ人と戦ったことがないし、手加減できるかって言われたらどうだろう……?

今日の試合を見ても、致命傷になるような傷は互いに負わさないようにしていたのは見て取れた。

問題はあそこまで力を加減できるのか?ってところかもしれない。

するとお姉さんは俯きながら少し考えていたようだが、一つ頷くと顔を上げて俺たちを見た。

「では当日はこの国の巫女に来てもらいましょう。あの方なら瀕死でも何とかなさってくださるはずです!それなら参加されますよね!?」

……なんだろう、このグイグイくる感じは?
何故にこんなに押してくるんだ?

俺がそう思っていると、闘技場の方から先ほどの試合に出ていたクーガーがこちらにやってきた。

「おい、参加するのかどうか決まったか?」

「いえ……実は彼らは冒険者らしく、手加減が難しいとかでなかなか参加してくれないんです。」

お姉さんが苦笑いしながらクーガーにそう言うと、彼はこちらを見て鼻で笑った。

「はんっ!どうせお前ら、俺やヒューザに負けるからってそんなこと言って参加断ってんのか?馬鹿にすんじゃねぇぞ?俺らはお前らより強えんだから、気にしないでかかってこいよ!」

それを聞いた俺たちは困惑顔で顔を見合わせたが、セバスとグリーさんの2人はイライラを抑えきれなかったようだ。

「何やねん、われぇ?誰にもの言うてまんの?」

「そうですよ?我々の仲間が貴方なんかに負けるはずないじゃないですか。きちんと、正直に話しているのに、その言い草……。死にたいんですかね?」

いやいや、セバスっ!殺気抑えてっ!!ダダ漏れだから!

俺は慌てて2人を止めに入った。

……ほら、見てごらん!?
お姉さんがセバスの殺気に当てられて気絶しちゃったじゃないか!?
どうしたら良いのさ!


その時、抱っこされたままずっと黙っていたユーリが、ふと天を向いたかと思うと口を開いた。

「マ……じゃなくて、にぃに。その試合、出てもいいってさ!『万が一』があっても即死さえしなければ、お姉さんが言ってる『巫女』に何とかしてくれるように頼んでおくって言ってるよ!」

……ユーリよ。

君はたまにそういう事言うけど、いったい誰に言われているんだい?
……いや、言わなくていいけど!


とにかくそのユーリの発言で、俺たちは2日後から始まる『1週間区切りの大会』に出場が決まったのだった……。
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