異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

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第4章 ネシア国〜

闘技場に行こう!

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グリーさんが連れてきてくれた闘技場の建物は遠くで見ていた時よりも迫力があり、まるでイタリアにあるコロッセオを高さそのままで何倍にも大きくしたような感じだ。

とにかく、でかい!としか言えない。

なんでそんなにでかいのか、それは入り口に近づくにつれて理由が分かった。

どうやら相当な人気らしく、周囲にはものすごい人だかりができていて、どこが入口から繋がっている列なのか全然わからない。

「凄いね、グリーさん!こんなに人が集まっているなんて!これって、もしかしてまだ中には入れないのかな?」

するとグリーさんが首を振る。

「ちゃいますよ~。今はちょうど試合が終わって、休憩の時間帯ですわ。ほんで皆、休憩がてら周囲の屋台に来てはるんです~。この人達はみんな観客でっせ?凄いでっしゃろ?」

そうなんだ!今は休憩なんだね!
じゃあチケットとかすぐに買えたりするのかな?

グリーさんに聞くと、すぐにチケット売り場まで連れて行ってくれた。

「すんまへんが、今日って試合まだ見れまっか?」

グリーさんがチケット売り場のお姉さんに聞くと、お姉さんは頷いて「見れますよ!」と言った。

「ほんなら観戦チケットを買いたいんやけど、今日って何日目でっか?」

それを聞いてお姉さんはグリーさんが初めてではないことを知ったようだ。

「えっとですね、今日は最終日で次の試合で優勝者が決まります。また、明日からの試合の参加者を募集しているところですので、腕に自信のある方は参加されてみてはどうですか?」

「ほんまでっか!?次が最終試合やなんて、ついてまんなぁ~!参加するかどうかは別にして、次の試合なのチケットを8人分頼みまっせ!……支払いはコチラ!」

そう言って、グリーさんは俺を指さした。

……って、支払い、俺かいっ!

そう思ったが、見たいのは間違いないので財布を取り出す。

支払おうとしたところでスコットさんが止めた。

「シエル、ここは最年長者の俺が払うから気にしなくて良いぞ。」

「えっ、良いの?」

「ああ、そんなの普通に出せるくらい稼いでいるからな。気にするな。」

スコットさんはそう言って頭を撫でた。

ありがとう、兄さん!

「それでは8人分合計で金貨2枚と銀貨4枚になります。」

なるほど、1人分は銀貨4枚なんだね!

ローランの宿屋が1人分1泊銀貨1枚だったのを考えるとすんごく高いとは思うが……そこはやはり最終試合だからなのかな?

とりあえずスコットさんがみんなの分のチケット代を出してくれた。

「はい、お買い上げありがとうございました!こちらが今大会の最終戦のチケットになります。お席は自由席のみですので、お好きな席をどうぞ!前の試合から続けて見られる方もおりますので、何かしらの荷物が置かれていたらその席は『利用者あり』となりますのでよろしくお願いします。」

お姉さんの言葉になるほどと思う。

でもそれができるのって、悪い人がいないからってことだよね?

良い席で見たいからってその荷物をどかしてしまう人もいるんじゃないだろうか?

そう思ってお姉さんに聞くと、どうやら座席に荷物や人が座ると簡易のシールドがかかるそうだ。

なんでそんな事になっているかというと、盗難とかの防止もあるが、それ以上に試合の余波とかが観客へ被害を出さないようにらしい。

どうやってその座席の使用者か判断するのかというと、1回座るとその人の魔力を登録するらしい。

もちろん、一試合ごとにリセットされるから座り直す手間はかかるけど、たったそれだけで座席確保できるなら楽だよね!


とりあえず俺たちはチケット売り場から離れ、座席を探しに向かった。

やはり最終試合は人気があるようでかなり座席に物が置かれている。

「こりゃあみんな一緒に座るのは無理ですわ。分かれて座らんとあきませんなぁ~。」

グリーさんがこの座席の状況を見てそう言う。

確かにあちこち2つずつくらいしか空いてない。

しょうがないのでエミリーさんとスコットさん、リッキーとリリーさん、俺とユーリ、グリーさんとセバスの4つに分かれた。

「……ユーリ様と一緒に見たかったのに……。」

グリーさんが先ほどから小さい声でブツブツなんか言っている。

それをセバスが呆れた顔で「だったら4人座れる席を見つけてきなさいな。」と言ったことで、グリーさんはやる気(?)を出して探し始めた。

それからしばらくすると、風のように消えたグリーさんが前列のとても良い席を見つけてきてくれた。

「こっち、こっち!ええ席確保できましたわ!」

そう言ってどんどん前に向かう。

……えっ、こんなに前で良い席確保できたの!?

俺は驚いたが、なるほど、ちゃんと確保できていた。

座席にはグリーさんが結界を張って誰も座れないようにしていたのだ。

その席の周りにはたくさんの人がいて、グリーさんの結界を叩いていたが、うんともすんともできなかったようだ。

「……あんたら、一体何してはるの?」

席のところに行くとグリーさんが低い声で話しかけた。

「お前か、この変なのを座席にかけたのは!早く解除して譲れ!」

大柄な熊の獣人の男性がグリーさんに向かってそう言う。

……あれ?全席自由席で早いもの勝ちじゃなかったのかな?

そう言われたグリーさんは「先に確保したのはこちらでんがな。あんたらじゃ無いわ。」と言い返す。

「何だと~!良い気になりやがって!じゃあ力ずくで奪ってやる!」

そう言ってグリーさんに殴りかかってきた。

だがグリーさんはヒョイッと避けるとその男性の背中を押して転ばせる。

そしてその背中を足で踏みつけた。

まるで軽く踏んでいるようにしか見えないのだが、その男性は手足をバタバタさせるだけで全く身動きが取れないようだった。

「全く……自分と相手との力の差をはかれないようなら、この世界では長く行きられまへんで~。」

そう言って足をどけた。

すると真っ赤になった熊の獣人は今度は小さなユーリを狙いに来た。

これなら人質にとっていう事をきかせられると思ったのだろう。

その男性がユーリに手を伸ばした時、2人の間にグリーさんが現れ、男性のその腕を取るとおもむろに折った。

えっ!?やり過ぎじゃない!?

俺はそう思ってグリーさんを見たが、目が据わってブチギレているのが分かった。

「何や、われぇ~?大事なユーリ様に手を出そうなんざ百年早いわ!出直してこいや!」

そう言うと、男性を突き放した。

その男性は顔を青くして腕を抱えると、そそくさと逃げだした。

「……これだけで済んで良かったと思ってもらわんとなぁ、なあセバス?」

「ええ、あなたがやらなければ私は殺す準備をしていたところでしたよ。」

えっ、マジで!?

そう思って振り返ると酷薄そうな顔をしたセバスと目が合った。……いや、俺、違うから!

「まぁ、なにはともあれ席に座りまっか。今度こそ席を自分のものにしませんとなぁ?」

周りの席についている人達の目をものともせず、グリーさんはそう言う。

いや~……無事に席を確保できて良かったけど、2人のユーリへの気持ちが重いのも確認できた出来事だったよ……。
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