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第4章 ネシア国〜
獣人の国ネシア
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「とりあえず君達はここにいる獣人達とは違って『観光』をするんだから、先に街の中に入って良いぞ。彼らはそれぞれ戸籍があることを確認してから中に入るのでかなり時間がかかるんだ。」
そう騎士の人に言われたので、俺達は先に中に入ることにした。
「ではお言葉に甘えて先に入らせてもらいます。皆さん、お元気で!」
「そうか、君たちには本当に世話になった。もうここには二度と帰ってこれないかと思って過ごしていたんだ。君たちには感謝してもしきれないほどの恩を受けたと思っている。もし何か我々にできることがあったら声をかけてくれないか?その時は、ぜひ協力させてほしい。」
避難者の1人がそう言って胸に手を当てて頭を下げる。
すると避難者全員が同じ格好をして頭を下げた。
「分かりました。その時は頼らせてもらいます。」
一つ頷いて、そうスコットさんが言った。
それから俺たちは部屋にある2つの出入り口のうちの1つ、街へと続くドアの方へと歩いていった。
その部屋から直接街の中に入ると、そこは全くクレイン国とは違い、雑然とした感じがする街だった。
ん~、なんて言えば良いんだろう……例えばクレイン国が日本みたいに整然としているとして、ネシア国はまるで地球の東南アジアや南米の片田舎の街みたいっていえば良いのかな?
街の道路はある程度整備されていて馬車が走りやすくなってはいるが、クレイン国と違ってレンガ敷きではなく、土をしっかり固めて平らにしているようだ。
その道路はどこもそんなに道幅は広くなく、道路の左右には布製(?)の屋根がある日本の商店街みたいになっていて、人々が賑やかに買い物したりしている。
その商店街みたいな店先には、よく海外の映像で見たことのあるような、果物や野菜、魚を山盛りにして売っている。
お肉に関しては、店先で天井から吊ってある鉤爪のようなフックに簡易解体したままの肉がぶら下がっていて、お客を見ているとどうやら1人(1家族?)が1頭分ずつ買っているようだ。
肉などの生鮮食品をそんな風に売っていて衛生面はどうなんだろうと気になってグリーさんに聞くと、どうやら山盛りに盛られている巨大な四角い器やフックが魔道具になっていて、保存するのにちょうどいい温度になるようになっているらしい。
例えばフックなんて、内側から凍らせる寸前まで肉を冷やしているそうだ。
そんな魔道具があるなんてびっくりだよね!
そして街中を歩いているのは老若男女全てが獣人で、純粋な人族は俺たちだけだったので物凄く注目を浴びてしまった。
観察していると、こちらの国の獣人は2種類いるようで、1つは人間の姿に獣耳や獣尾があるタイプ。
もう一つは、首から上だけ獣そのものなタイプだ。
どちらも体は人間そのもので、生活に不自由はなさそうだね!
ちなみにクレイン国では最初の方のタイプしかいなかったし、神聖法国に捕まえられていた人も全てそのタイプだった。
だから俺は2つ目のタイプの獣人がいるとは思っていなかったんだ。
「いろんな獣人がいっぱいいるね!あのクレイン国にはいないタイプの獣人って、もしかしてこの国を出ないのかな?」
俺は何気なくリッキーに聞いてみた。
するとリッキーは気まずげに俺を見る。
「あ~……大体の獣タイプの獣人はこの国から出ることは少ないんだが、ネシアを出る人が全くいないわけじゃない。俺達も滅多には見ないけど、獣タイプは見かけたことはある。だが……多分神聖法国に捕らえられた獣タイプの獣人は「選別」されてしまうんだと思う。あいつらはエルフも獣人も『人』だとは思っていないからな。流石にクレイン国やヒュサカ国はそんな差別的な事はほとんど無い。あるとすればクレインの上流階級の奴らの一部の『人族至上主義』な奴らだけだから、普通に生活している分には全く問題はないはずだ。」
……なんてこった。
見かけないのには理由があったのか……。
さっき別れたばかりの彼らも、もしかしたら帰ってこなかった仲間がいたのかもしれないと思うと切なくなった。
しょんぼりしてしまった俺を見て、左右から姉さんとリッキーが慰めてくれた。
それにしてもただ歩いているだけなのに物凄く注目を浴びるな……。
この国って、そんなに他国……いや、人間が来ることがないのかな?
すれ違う人も俺たちをジロジロと見ているし。
なんか少し居心地が悪いかも。
俺がそんな事を思って仲間を見ると、やはり皆もそうなのか、眉をひそめたりして笑顔がなかった。
「ほらほらシエルくん!そんなおもろない顔せんと、この街をもっと楽しもうや!せや、この街はあれや、闘技場があるんやで!1週間が一括りのトーナメント制で、最終的に勝ち上がるとえらい良いもん貰えるそうやで?皆で出場したり、見学せえへんか?」
えっ!?この国ってそんな娯楽があるの!?
俺は皆を見回すと、みんなも先ほどまでの顔はどこへやら、嬉しそうな顔をしていた。
「じゃあ、とりあえず闘技場に行こか?そこで詳しく話を聞こやないの!」
グリーさんは先頭を楽しそうに歩き出した。鼻歌まで歌っている。
その後ろを俺とユーリが歩き、その後ろにリッキーとリリーさん、スコットさんとエミリーさんが続いた。
しばらく歩くと巨大な石造りの建物が見えてきた。
まだまだ距離があるにも関わらずも大きいと感じるってことは、相当でかいんだろう。
日本の球場よりもでかいかもしれない。
俺はそれを見て、ワクワクが止まらなかった。
横を見ると、ほっぺを真っ赤にしながら興奮しているユーリがいた。
……もしかして俺も同じ顔をしているかも?
さっきまでのあんなに沈んだ気持ちがこんなに浮上するなんて……元気づけてくれてありがとう、グリーさん!
そう騎士の人に言われたので、俺達は先に中に入ることにした。
「ではお言葉に甘えて先に入らせてもらいます。皆さん、お元気で!」
「そうか、君たちには本当に世話になった。もうここには二度と帰ってこれないかと思って過ごしていたんだ。君たちには感謝してもしきれないほどの恩を受けたと思っている。もし何か我々にできることがあったら声をかけてくれないか?その時は、ぜひ協力させてほしい。」
避難者の1人がそう言って胸に手を当てて頭を下げる。
すると避難者全員が同じ格好をして頭を下げた。
「分かりました。その時は頼らせてもらいます。」
一つ頷いて、そうスコットさんが言った。
それから俺たちは部屋にある2つの出入り口のうちの1つ、街へと続くドアの方へと歩いていった。
その部屋から直接街の中に入ると、そこは全くクレイン国とは違い、雑然とした感じがする街だった。
ん~、なんて言えば良いんだろう……例えばクレイン国が日本みたいに整然としているとして、ネシア国はまるで地球の東南アジアや南米の片田舎の街みたいっていえば良いのかな?
街の道路はある程度整備されていて馬車が走りやすくなってはいるが、クレイン国と違ってレンガ敷きではなく、土をしっかり固めて平らにしているようだ。
その道路はどこもそんなに道幅は広くなく、道路の左右には布製(?)の屋根がある日本の商店街みたいになっていて、人々が賑やかに買い物したりしている。
その商店街みたいな店先には、よく海外の映像で見たことのあるような、果物や野菜、魚を山盛りにして売っている。
お肉に関しては、店先で天井から吊ってある鉤爪のようなフックに簡易解体したままの肉がぶら下がっていて、お客を見ているとどうやら1人(1家族?)が1頭分ずつ買っているようだ。
肉などの生鮮食品をそんな風に売っていて衛生面はどうなんだろうと気になってグリーさんに聞くと、どうやら山盛りに盛られている巨大な四角い器やフックが魔道具になっていて、保存するのにちょうどいい温度になるようになっているらしい。
例えばフックなんて、内側から凍らせる寸前まで肉を冷やしているそうだ。
そんな魔道具があるなんてびっくりだよね!
そして街中を歩いているのは老若男女全てが獣人で、純粋な人族は俺たちだけだったので物凄く注目を浴びてしまった。
観察していると、こちらの国の獣人は2種類いるようで、1つは人間の姿に獣耳や獣尾があるタイプ。
もう一つは、首から上だけ獣そのものなタイプだ。
どちらも体は人間そのもので、生活に不自由はなさそうだね!
ちなみにクレイン国では最初の方のタイプしかいなかったし、神聖法国に捕まえられていた人も全てそのタイプだった。
だから俺は2つ目のタイプの獣人がいるとは思っていなかったんだ。
「いろんな獣人がいっぱいいるね!あのクレイン国にはいないタイプの獣人って、もしかしてこの国を出ないのかな?」
俺は何気なくリッキーに聞いてみた。
するとリッキーは気まずげに俺を見る。
「あ~……大体の獣タイプの獣人はこの国から出ることは少ないんだが、ネシアを出る人が全くいないわけじゃない。俺達も滅多には見ないけど、獣タイプは見かけたことはある。だが……多分神聖法国に捕らえられた獣タイプの獣人は「選別」されてしまうんだと思う。あいつらはエルフも獣人も『人』だとは思っていないからな。流石にクレイン国やヒュサカ国はそんな差別的な事はほとんど無い。あるとすればクレインの上流階級の奴らの一部の『人族至上主義』な奴らだけだから、普通に生活している分には全く問題はないはずだ。」
……なんてこった。
見かけないのには理由があったのか……。
さっき別れたばかりの彼らも、もしかしたら帰ってこなかった仲間がいたのかもしれないと思うと切なくなった。
しょんぼりしてしまった俺を見て、左右から姉さんとリッキーが慰めてくれた。
それにしてもただ歩いているだけなのに物凄く注目を浴びるな……。
この国って、そんなに他国……いや、人間が来ることがないのかな?
すれ違う人も俺たちをジロジロと見ているし。
なんか少し居心地が悪いかも。
俺がそんな事を思って仲間を見ると、やはり皆もそうなのか、眉をひそめたりして笑顔がなかった。
「ほらほらシエルくん!そんなおもろない顔せんと、この街をもっと楽しもうや!せや、この街はあれや、闘技場があるんやで!1週間が一括りのトーナメント制で、最終的に勝ち上がるとえらい良いもん貰えるそうやで?皆で出場したり、見学せえへんか?」
えっ!?この国ってそんな娯楽があるの!?
俺は皆を見回すと、みんなも先ほどまでの顔はどこへやら、嬉しそうな顔をしていた。
「じゃあ、とりあえず闘技場に行こか?そこで詳しく話を聞こやないの!」
グリーさんは先頭を楽しそうに歩き出した。鼻歌まで歌っている。
その後ろを俺とユーリが歩き、その後ろにリッキーとリリーさん、スコットさんとエミリーさんが続いた。
しばらく歩くと巨大な石造りの建物が見えてきた。
まだまだ距離があるにも関わらずも大きいと感じるってことは、相当でかいんだろう。
日本の球場よりもでかいかもしれない。
俺はそれを見て、ワクワクが止まらなかった。
横を見ると、ほっぺを真っ赤にしながら興奮しているユーリがいた。
……もしかして俺も同じ顔をしているかも?
さっきまでのあんなに沈んだ気持ちがこんなに浮上するなんて……元気づけてくれてありがとう、グリーさん!
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