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第4章 ネシア国〜
ネシア国に入ろう!
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「……お前たちは一体、何者だ?なぜ、竜の背中に乗ってこの国に来た?」
整列している大勢の騎士の中から、ひときわ縦も横も大きい獣人の騎士が前に進み出て聞いてきた。
「俺達は神聖法国に奴隷として捕らえられていた獣人達をこのネシア国に連れ帰って来ただけだ。それ以外の目的は……観光か?」
こちらの代表としてスコットさんが答える。
するとちょうど良くグリーさんの背中から降りてきた獣人達が、慌てた様子で俺達の前に立って庇おうとしてくれた。
「この人達の言うことは間違いないです。俺達は何年も神聖法国に『隷属の首輪』によって連れ去られて、農奴として働かされていました。でもほんの10日ほど前にこの方達が急に来て、俺達を転移魔法で連れ出してくれたんです。」
「そうです!俺達は『隷属の首輪』のせいで力が出せず、自力で逃げることができなかった……。そんな俺たちの命の恩人なんです!武器を下ろしてください!」
「あと、この竜は伝説の4属性竜の長の1人、風の属性竜の長です。我々を襲うことは無いそうですので安心してください!」
避難民たちは口々に俺たちやグリーさんをかばう発言をしてくれた。
騎士の代表の人も同族からそこまで言われると、一応は納得せざるを得なかったようで、背後にいる騎士たちに武器を降ろさせた。
「話は大体分かったが、お前たちは何故、急に彼らを助けに来たんだ?」
「それは、話すと長くなるが……」
そう言ってスコットさんが、俺達がスノービークに来てから助け出して3カ所に避難して体調を整えていたところまでの話を要約して話してくれた。
やっぱり兄さん、口下手な俺より話し上手だよね!
「……なるほど、神聖法国の神が、創造神から滅せられたと、そういうことだな?」
「ああ、シエルとユーリの話ではそういうことらしい。さすがにここからは見えなかったとは思うが、クレイン国にあるスノービークでは巨大な光の柱が天から降ってきたのは確認できた。ここまできょりがあるのにかくにんできたっていうことは、そうとう巨大なものだったのだろうと思う。」
するとそれまでずっと腕を組んで話を聞いていた代表者は、今度こそ納得した顔をしていた。
「我らの同胞の恩人に対してかなりの無礼を働いてしまい、心から申し訳ないと思う。許して欲しい。」
そう言って胸に手を当て、深々と頭を下げた。
「いや、分かってもらえたならそれで良いんだ。」
「そうそう、俺達はそのついでに初めてのネシア国を観光しようと思っているだけなんだが……良いかな?俺たち冒険者だから身分証あるぞ?」
「……あっ。ユーリ達の身分証……。」
俺の呟きを聞いていたリッキーは驚いた顔で俺を見た。
「えっ!?お前、何やってんだよ!スノービークに着いたらすぐやれば良かったのに!俺はてっきりもう発行してもらっているんだとばかり思っていたぞ!?」
「……ごめん、いろいろありすぎてすっかり忘れていたよ……。」
すっかりしょんぼりしてしまった俺の頭を、リリーさんが撫でて慰めてくれた。
「もうっ!今さらそんなこと言ったってしょうがないじゃない!打開策を考えなさいよ!」
「全く……人任せも良いところだぞ?……すみません、こっちのでかい銀髪の子供は冒険者カードがあるんですが、こっちの銀髪の子供とこっちのおじさんはまだ冒険者カードを作ってないから身分証がないんですけど、中に入ることは不可能ですか?」
そうリッキーから言われた代表者の人は少し悩んだようだが、一つ頷くと「入国税だけ払えば大丈夫だ。」と言ってくれた。
「あと、そっちの獣人たちの身分証は……ないだろうな。でもまあこの国の出身者なら戸籍があるから、入国の時に調べさせてもらうが良いな?」
「はい、もちろんです!奴隷になった時に身分証となるものや持ち物はすべて焼かれてしまったので、全く身分証明できるものを持っていないんです。だから逆に助かります。」
「了解した。ではすぐに戸籍関係の役所の人間を呼ぶから、それから入国手続を取りたいと思うが、良いな?」
「はい、分かりました。」
「では、それまでの間立ちっぱなしというのもなんたから、こちらの部屋で休まれるといい。……ちなみにその竜はどうすればよいのだろうか?」
代表者の人はそう言ってグリーさんを見上げる。
そうだよね、グリーさんはこの後どうするのかな?
「私もユーリ様たちと一緒に中に入らせてもらいまっせ。ちょい待っといてな~?」
グリーさんはそう言うと、光をまとって人化した。
グリーさんが人語を話すことに驚いていた騎士さんたちは、さらに驚いて開いた口が塞がらないようだ。
「……これは、驚いた!竜が人語を話すことにも相当驚いたが、まさか人型にもなれるとは……。さすが風の属性竜の長、というところなんだろうな。」
「へへん!凄いでっしゃろ?竜でこれができるのは高位の竜のみでんがな。だから数が少ないんや。ちなみに私は、たまにこの国に遊びに来させてもらってるんよ。まぁ、こそっとな!」
グリーさんはそう言ってウインクをした。
いや、何が「こそっとな!」なんだよ!
堂々と入ればいいじゃん!
俺はちょっと不機嫌になったが、グリーさんの話を聞いて苦笑いをしている代表者を見たら「まぁ良いか!」と思えたので良しとしよう。
それから俺たちは戸籍関係の役所の人が来るまで椅子のある部屋で座って待ち、思ったより時間はかかったが、なんとか全員中に入ることができた。
整列している大勢の騎士の中から、ひときわ縦も横も大きい獣人の騎士が前に進み出て聞いてきた。
「俺達は神聖法国に奴隷として捕らえられていた獣人達をこのネシア国に連れ帰って来ただけだ。それ以外の目的は……観光か?」
こちらの代表としてスコットさんが答える。
するとちょうど良くグリーさんの背中から降りてきた獣人達が、慌てた様子で俺達の前に立って庇おうとしてくれた。
「この人達の言うことは間違いないです。俺達は何年も神聖法国に『隷属の首輪』によって連れ去られて、農奴として働かされていました。でもほんの10日ほど前にこの方達が急に来て、俺達を転移魔法で連れ出してくれたんです。」
「そうです!俺達は『隷属の首輪』のせいで力が出せず、自力で逃げることができなかった……。そんな俺たちの命の恩人なんです!武器を下ろしてください!」
「あと、この竜は伝説の4属性竜の長の1人、風の属性竜の長です。我々を襲うことは無いそうですので安心してください!」
避難民たちは口々に俺たちやグリーさんをかばう発言をしてくれた。
騎士の代表の人も同族からそこまで言われると、一応は納得せざるを得なかったようで、背後にいる騎士たちに武器を降ろさせた。
「話は大体分かったが、お前たちは何故、急に彼らを助けに来たんだ?」
「それは、話すと長くなるが……」
そう言ってスコットさんが、俺達がスノービークに来てから助け出して3カ所に避難して体調を整えていたところまでの話を要約して話してくれた。
やっぱり兄さん、口下手な俺より話し上手だよね!
「……なるほど、神聖法国の神が、創造神から滅せられたと、そういうことだな?」
「ああ、シエルとユーリの話ではそういうことらしい。さすがにここからは見えなかったとは思うが、クレイン国にあるスノービークでは巨大な光の柱が天から降ってきたのは確認できた。ここまできょりがあるのにかくにんできたっていうことは、そうとう巨大なものだったのだろうと思う。」
するとそれまでずっと腕を組んで話を聞いていた代表者は、今度こそ納得した顔をしていた。
「我らの同胞の恩人に対してかなりの無礼を働いてしまい、心から申し訳ないと思う。許して欲しい。」
そう言って胸に手を当て、深々と頭を下げた。
「いや、分かってもらえたならそれで良いんだ。」
「そうそう、俺達はそのついでに初めてのネシア国を観光しようと思っているだけなんだが……良いかな?俺たち冒険者だから身分証あるぞ?」
「……あっ。ユーリ達の身分証……。」
俺の呟きを聞いていたリッキーは驚いた顔で俺を見た。
「えっ!?お前、何やってんだよ!スノービークに着いたらすぐやれば良かったのに!俺はてっきりもう発行してもらっているんだとばかり思っていたぞ!?」
「……ごめん、いろいろありすぎてすっかり忘れていたよ……。」
すっかりしょんぼりしてしまった俺の頭を、リリーさんが撫でて慰めてくれた。
「もうっ!今さらそんなこと言ったってしょうがないじゃない!打開策を考えなさいよ!」
「全く……人任せも良いところだぞ?……すみません、こっちのでかい銀髪の子供は冒険者カードがあるんですが、こっちの銀髪の子供とこっちのおじさんはまだ冒険者カードを作ってないから身分証がないんですけど、中に入ることは不可能ですか?」
そうリッキーから言われた代表者の人は少し悩んだようだが、一つ頷くと「入国税だけ払えば大丈夫だ。」と言ってくれた。
「あと、そっちの獣人たちの身分証は……ないだろうな。でもまあこの国の出身者なら戸籍があるから、入国の時に調べさせてもらうが良いな?」
「はい、もちろんです!奴隷になった時に身分証となるものや持ち物はすべて焼かれてしまったので、全く身分証明できるものを持っていないんです。だから逆に助かります。」
「了解した。ではすぐに戸籍関係の役所の人間を呼ぶから、それから入国手続を取りたいと思うが、良いな?」
「はい、分かりました。」
「では、それまでの間立ちっぱなしというのもなんたから、こちらの部屋で休まれるといい。……ちなみにその竜はどうすればよいのだろうか?」
代表者の人はそう言ってグリーさんを見上げる。
そうだよね、グリーさんはこの後どうするのかな?
「私もユーリ様たちと一緒に中に入らせてもらいまっせ。ちょい待っといてな~?」
グリーさんはそう言うと、光をまとって人化した。
グリーさんが人語を話すことに驚いていた騎士さんたちは、さらに驚いて開いた口が塞がらないようだ。
「……これは、驚いた!竜が人語を話すことにも相当驚いたが、まさか人型にもなれるとは……。さすが風の属性竜の長、というところなんだろうな。」
「へへん!凄いでっしゃろ?竜でこれができるのは高位の竜のみでんがな。だから数が少ないんや。ちなみに私は、たまにこの国に遊びに来させてもらってるんよ。まぁ、こそっとな!」
グリーさんはそう言ってウインクをした。
いや、何が「こそっとな!」なんだよ!
堂々と入ればいいじゃん!
俺はちょっと不機嫌になったが、グリーさんの話を聞いて苦笑いをしている代表者を見たら「まぁ良いか!」と思えたので良しとしよう。
それから俺たちは戸籍関係の役所の人が来るまで椅子のある部屋で座って待ち、思ったより時間はかかったが、なんとか全員中に入ることができた。
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