異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

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第4章 ネシア国〜

避難民を自国へ帰そう!

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避難民を一時避難で3つの街に転移させてから約10日が経った。

エルフの里とローランの街の方は移動させた日から一度も避難民と会ってないからよく分からないが、少なくても今は、このスノービークでみんな伸び伸びと生活を送っている。

最初の頃は気を使って物凄く遠慮して自分の行動を制限していたが、身体が回復してくるのと時を同じくして、徐々に『自分』というものを取り戻していったのだ。

だが、産まれた時から奴隷として搾取される側だった子供たちは、今だに奴隷仲間たち以外と接する時は自分を卑下して遠慮をしているように見受けられる。

産まれてから今までの人生とは全く違う生活や行動をしろと言われても、それは難しい事なのだろう。

こればかりは時間と周りの努力によってしか変わることができないと思う。


今日は避難民のみんなをグリーさんの背中に乗せて移動してもらうので、まずは4属性竜の長達がいる山の頂上付近の広場へと、全ての避難民を連れて行くことから始めないとね!

とりあえずスノービークにいる避難民を領主の屋敷の前にある広場に集まってもらっている。

ちなみにこの街に残りたいという人は僅かだがいたよ。


さて、ウォールさんからの避難民達への激励の言葉を聞いてから出発だ!

「今日は皆さんがここに来て10日目になります。だいぶ体調も良くなってきたようなので、他の避難場所の代表と話し合って、そろそろ皆さんの国へと送り届けることになりました。どういう風に送り届けるのかというと、まずはシエルくんがあの山の頂上付近にある4属性竜の長達の場所へと転移させます。その後、何回かに分けて風の属性竜の長であるグリー殿にそれぞれの母国へ送り届けてもらいます。こちらに残る人はお別れの挨拶をしておいてくださいね。」

ウォールさんが避難民の皆を見回しながら、これからの予定を伝えてくれた。

それから暫く時間を取り、その間に運んでもらう時のグループ分けもしてもらった。


それから俺はまず、この街の避難民を4属性竜の長達がいる広場へと連れて行った。

するとそこにはもうルーシェさんが連れてきただろうエルフ達と獣人、その他の人族が揃っていた。

そしてその避難民達の前には人型へと変化した長たち4人が立っていた。

どうやら皆はドラゴンがいるかと思って緊張していたようだが、人が立っているだけなので竜はどこかとキョロキョロしている。
皆が揃うとルーシェさんがグリーさん達に声をかけた。

「皆さんとは初めましてやな~。私が風の属性竜の長、グリーいうんや。よろしくなぁ~!」

どうやらまずは運んでくれるグリーさんから挨拶をしてくれるようだ。

皆は狐につままれたような顔をしているが、それはしょうがない。
たぶん怖がらせないように人型になっているのだろうから。

「私は火の属性竜の長、レッカというわ。よろしくね。」

「僕は水の属性竜の長、アクアっていうよ!よろしくね。」

「私は土の属性竜の長、アースという。よろしく。」

他の3人も一度に自己紹介をする。

すると避難民の中から4人に声をかける人がいた。

「少しお聞きしたい事があるのですが……『4属性竜の長』というからてっきり竜なのだと思ってましたが、あなた達は獣人でもない人族ですよね?どういう経緯で4属性竜の長に選ばれたのでしょうか?」


おおっと……まるっきり見た目で判断して言っちゃったねぇ。

俺は苦笑いすると4属性竜の長たちの方を見る。

先ほどの発言を聞いて、レッカさんは眉間にしわを寄せ、アクアさんは苦笑いをし、アースさんは変わらず無表情だ。

するとグリーさんがニヤニヤした顔で一歩前に出た。

他の3人はかなり後ろへ下がり、スペースを作る。

「な~るほど!うちらのことを勘違いしてまんなな~。じゃあ、改めて。……よろしくなぁ~、人間たちよ。」

グリーさんは話している途中で急に元の姿へと戻った。

すると避難民たちは、そのあまりの変貌に悲鳴を上げたり腰を抜かしたりした。

「ハッハッハッハ~!驚いたでっしゃろ?なっ?なっ?なっ?」

グリーさんは楽しそうに笑いながら皆を見やり、振り向く。

すると残りの3人も竜へと変化した。

「これが私たちの本来の姿。驚かせないようにと人型へと変えていたのだよ。」

「でも、それが仇になったねぇ。」

「私なんてカチンときちゃったわ!」

「落ち着け、レッカ。お前は本当に怒りやすい奴だな……。」

「分かってるわよっ!!」

アースさんが竜の姿で大きなため息をつくもんだから、近くの地面から土埃が舞った。

……すごいな、竜のため息!?

4人(4竜?)を見ていた避難民たちは恐怖で震えている。
するとルーシェさんが避難民へ声をかけた。

「大丈夫ですよ、彼らは人族を襲いませんから。神竜様に誓いを立ててますので。」

それに対し4人は頷く。

「せやから安心してな~。それに私の口調からも分かるでっしゃろ?私、ヒュサカに長いこと住んでましたんや。あそこ、おもろいでんな~。また遊びに行きまっせ!その時はよろしゅうな~。」

グリーさんはそう言うと、竜の姿で人間の騎士の様に胸に手を当て、お辞儀をしてみせる。

おおっ、凄いね、竜がやると迫力あるよ!

それを見たり聞いたりした避難民たちは、一様にホッとした顔をした。

これから彼の背中で運ばれていくのに、お互いギクシャクしていては気まずいよね!

「ほんなら……近いところから行きまっか?近い所だと……この国の王都の近くの森でっか?確かエルフの村でっしゃろ?」

グリーさんはルーシェさんの方を見て聞いた。

「ああ、そうだよ、グリー。あの辺の森だ。本当は私が連れていけば問題ないんだろうが……ちょっとそれには別な問題があるから、私が嫌だ。だからグリーに頼みたい。」

するとそれを聞いてキョトンとしたグリーさんは、何か思い当たることがあったのかニヤニヤしだした。

「さぁ~て、何があったのやらぁ~?まっ、詮索はしませんけどなぁ?」

それを聞いたルーシェさんは苦虫を潰したような顔をした。……ホント、何があったの!?

俺はすんごく気になったが、多分ルーシェさんには嫌なことなんだろうから、いつか話してもらえる時が来たら聞こうかな!

そんなやり取りの後、早速グリーさんはエルフ達を運ぶことにしたようだ。

エルフ達の人数はそんなに多くないので、一度で運べそうだ。

エルフの皆がグリーさんの背中に乗りこんで座るとグリーさんは一度大きく羽ばたき、その途端にその巨体がフワリ……と浮き上がる。

そして更に羽ばたくと、斜めに上昇しながら一気に遠くへ飛んでいった。

背中に乗っている人達が何とも無いところを見ると、たぶん風の抵抗とか転落防止の為に結界を張っているのだろう。



それにしても……いつ見ても不思議だよねぇ。

たった一度の羽ばたきであの巨体が浮き上がるんだよ?

それは絶対に日本……いや地球では見ることの出来ない現象だ。

多分、それは魔力が関係しているんじゃないか、と俺は思っている。

どういう原理なのか知りたいよね!
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