109 / 128
第2章 エルフの隠れ里〜
えっ、誰???
しおりを挟むそれから俺達は少し雑談した後、泊まる部屋へと案内してもらうことになった。
その間に俺たちの泊まる部屋の準備をしてもらうようだ。
しばらくしてメイドさんが準備ができたと告げに来たので、俺たちは席を立つ。
「じゃあまた夕食の時に。その時には弟の家族も一緒に食事することになるから、彼らのことはその時に紹介するよ。……君たちの本当のことは内緒で、ユーリくんは『弟』、セバスさんは『護衛』で構わないかね?」
「ええ、それで構いませんとも。シエル様とユーリ様のことは私がお守りするつもりですので、『護衛』というのは本当のことですし。」
ユーリ達を紹介した後、すぐに人化したセバス。
やはりその姿のほうがしっくりくるそうだ。
ユーリもとても眠そうだったので、寝る前に人化してもらった。
この部屋を出る時には夢の中にいることだろう。
「母さん、無理をするなよ?世間的にはまだ若いとはいえ、40歳だろ?」
「まだ若いって……40歳っていうのは若くないわよ?」
「そうだぞ、母さんはお前を15歳で産んだんだ。貴族の結婚っていうのは早婚が通常だからな。お前は男だから良いが、もし今のお前の歳で女だったらとっくにどこかの貴族に嫁入りして子供を産んで育てている頃だぞ?」
「……。」
両親の話にリッキーは黙ってしまった。
多分リッキーは、日本での出産年齢のことが頭にあるから「全然平気だ」と思ったのだろう。
たがここではお父さんが言ったように、女性は15歳には婚約者がいると結婚するんだろう。
これからはそういう「日本との違い」でリッキーも、覚醒したら姉さん達も、ギャップを感じるようになるんだろうな。
「ところであなた達の結婚はまだなの?」
「……何のことだよ?」
「とぼけないで、あなたとリリーさんの話よ。リリーさんももういい年齢よ?早く結婚してあげなくちゃ可哀想よ?」
「……はぁ。まぁ、そのうちにな。」
リッキーはため息をついて母親からの話を終わらせる。
……。
……その話、聞いてないよ?
どういう事?
俺がそんな事を考えながらリッキーを見ると、目で「後でな」と言われた気がする。
とりあえず俺たちはメイドさんに案内されて部屋に向かう。
リッキーは自分の部屋に向かうだけなんだが……同じ方向ということは、近くの部屋になっているのかもしれないな。
しばらく歩くと目的地に到着したようだ。
案の定、リッキーの部屋の隣が俺たちの部屋だった。
俺達は3人一緒の部屋で良かったよ。
中に入るとベッドが2つ並んている。
どうやら俺とユーリは同じベッドを使うと思われたらしい。
まぁ、使うけどな!
寝ているユーリをベッドに寝かし、俺とセバスが部屋でくつろいでいるとノックする音がして、リッキーの声で「中に入るぞ」と問いかけがあった。
「別に勝手に入って良いよ、お前なら。」
「いや、一応そこは聞いてからじゃないとな。」
中に入ってきたリッキーがそう言う。
「ところでさっきの話、聞いてないんだけど?どういう事?妹のようなものだってリリーさんの前で言っていたのに本人も否定しなかったよね?」
「あいつは親の決めた婚約者なんだよ、一応な。小さい頃から一緒に遊んだりしていたのもあって、お互いにそんな感情なんか無いんだが……まさか転生してもあいつと結婚することになるなんて、考えてもいなかったよ。」
「……そりゃあ、すごい偶然だねぇ。姉さん相手だと苦労すると思うけど、頑張れ!一度は結婚生活を送れたんだから、この世でも上手くやれるさ!」
俺はリッキーの話を聞いて、そう言ってサムズアップをする。
そうだよ、『あの姉さん』と一度は添い遂げたんだ、ここでも上手くいくさ、多分。
「……あれ?じゃあもしかしてだけど、スコットさん達も……?」
「あっちはどうだろうな?よくはわからないが……まぁ記憶が戻ったらくっつくだろうな、あの2人すごく仲睦まじかったから。」
そっか、そういうこともあるんだね。
どうなるんだろうなぁ、兄さんたち。
そんな事思っていると、廊下をバタバタ走っていく音がした。
……なんだろう???
その音がしたとき、リッキーがうんざりしたような顔をした。
「あの音になんか聞き覚えがあるのか?」
「……ああ、ここにいた時はしょっちゅうな。」
そう言って肩をすくめた。
するとドア越しに隣の部屋の前から大きな声がした。
「おいっ、リッキー!帰ってきたんなら俺たちに真っ先に挨拶に来るのが筋だろう!なんで挨拶にもこねぇんだ?あぁ!?」
「そうだぞ!次期領主になる俺たちに頭下げに来るのが先なんじゃねぇのか!?なんで現領主の親父に顔出して、俺たちのところに来ねぇんだ!」
俺はそれを聞いて目を丸くする。
言っていることがめちゃくちゃだ。
普通は今の領主であるリッキーのお父さんのところに顔出せばそれで済む。
なぜならその息子であるリッキーが、普通なら次期領主だからだ。
それに現領主のお父さんはリッキーが領主になることを諦めていない。
つまり、どう考えても彼らが言うことはおかしいのだ。
彼らの中では、リッキーは次期領主にならないことが決定しているのだ。
「……なんか、聞かなくても分かるような気がするが、あえて聞こう。誰だ、あいつら?」
俺が目の据わった顔でリッキーに聞くと、リッキーは苦笑いして肩を竦める。
「あれらが俺の従兄弟たちだよ。……そう、俺がこの街を出たくなり、そして戻ってきたくなくなるように仕向けた張本人たちだ。」
……はぁ~、やっぱりかぁ~……。
402
お気に入りに追加
1,364
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~
白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」
マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。
そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。
だが、この世には例外というものがある。
ストロング家の次女であるアールマティだ。
実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。
そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】
戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。
「仰せのままに」
父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。
「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」
脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。
アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃
ストロング領は大飢饉となっていた。
農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。
主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。
短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる