異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

文字の大きさ
上 下
107 / 196
第3章 スノービーク〜

リッキーの実家

しおりを挟む
リリーさんの実家を出てからリッキーは少しだけ俺の前を歩き、軽く話をしながら俺を自分の実家へと案内してくれている。

俺は眠ってしまったユーリを抱っこしたまま歩き、その後ろをセバスがついてきている。

辺りはリリーさんの実家のような、お金持ちの家だろう住宅が並んでいるが……まだリッキーは足を止めない。

とうとう一番奥にある、かなり広い敷地の屋敷の門前に着いた。

やはりこの屋敷は他の住宅よりも桁違いに敷地が広いので、領主の家なんじゃないかなと俺は思っている。

門前には門番が立っているのだが……かなり離れている時点でリッキーに気づいていたようで、ずっと敬礼ポーズのまま固まっている。

「「おかえりなさいませ、リッキー様!」」

門番の2人は敬礼したまま大声でそう言った。

「お前ら、うるさいぞ!もっと小さな声で話せよ!周りに響いて嫌なんだけど!」

「……はい、分かりました、この位の音量で宜しいでしょうか?」

そう言って門番達は普通に会話が出来るくらいまで音量を下げてくれた。



「……それなら良し。ところで父さん母さんは家にいるか?」

「はい、今日はお出かけなさっていませんので、お2人は屋敷の中にいらっしゃるはずです。さあ、こちらから中へどうぞ。お連れの方もご一緒にどうぞ。」

そう言って門番さんは門を開けてくれる。
俺達が中に入るとすぐに門扉を閉めて、また警備に戻った。

門番の1人が屋敷まで案内をしてくれ、屋敷に着くとメイドさんに俺たちの案内を頼み、自分も門番へと戻った。

俺はこっそりとリッキーにだけ聞こえるように「ここがお前の今の家なのか?」と聞いたら「ああ、俺の実家だ。」とリッキーは答えてくれた。……やっぱりか!

「お前、もしかしてこの街の領主の息子なのか?」

「……まぁ、一応な。だけど俺はこの街の次期領主にはならないぞ。絶対に、だ。」

俺達は前を歩くメイドさんに聞こえないくらいの小さな声で話しているんだが、聞こえてないよな?

「それって、他に兄弟がいるからか?」

「いや、違う。俺に兄弟はいない。いないんだが……同じ敷地に叔父一家が住んでいて、そこに従兄弟が2人いる。そいつらのどっちかが継ぐだろうさ。」

……なんか、複雑な家族関係だな。

もしやリッキーをいじめていた主犯って、そいつらか?

街の皆はそいつらに従っていたのか?

両親は気づいているのか?

気づいているんだとしたら、何で対策しない?

俺はいくつもの考えが頭の中でぐるぐるしていたんだが、そんな俺の頭をぽんぽんとリッキーが軽く叩いた。

「まぁ……気にするな。また皆でこの街を出発してしまえば、今までと同じ旅が待っているんだからさ。」

リッキーはそう言って、ウインクする。

まぁね、みんなとこの街にいる間だけ、って考えれば気にならなくなる……のかな?

そんなやりとりをしている間に応接間に到着したようだ。

「こちらで少々お待ちください。」

俺たちを案内してくれたメイドさんはそう言ってどこかへ行ってしまった。

「まあ、ソファーに座って待ってようぜ。」

リッキーは自分の家だからか、気兼ねなく振る舞っている。
座れと促され、俺もユーリを抱っこしたままソファーに並んで座った。

セバスはそんな俺の真後ろに無言で立っている。

どうやら「執事たるもの、無駄口を叩かない」と以前言っていたので、今は黙っているんだろう。

それから暫くするとドアが開き、かちっとした服装の男女が部屋の中に入ってきた。

服装が貴族っぽいから、たぶんリッキーの両親なんじゃないのか?と推測してみた。

「いや~、待たせたね。お帰り、リッキー!元気そうでホッとしたよ。いきなり「俺は冒険者になる!」って言ったかと思ったら、数日後には知らぬ間に1人で家を飛び出していったから、親としては生きた心地がしなかったよ。」

「そうよ?家を飛び出してから今日まで、一度もこの家に帰ってこなかったもの。私たちもとても心配していたのよ?」

リッキーの両親が急にいなくなったリッキーに対して文句?を言っていたが、当のリッキーはそれを苦笑いして聞いている。

なるほど、やっぱりそこは皆から聞いた通りだったんだね。

「ところで、お前が連れてきた人達を紹介してくれないか?」

リッキーのお父さんが俺達の方を見てから、リッキーに言った。

リッキーは小声で「正直に話して良いか?」と聞いてきたので、頷いて意思を示す。

「父さん、この部屋は盗聴とかされてないよな?特に叔父一家には。」

「ああ、大丈夫だと思う……が、気になるなら調べても構わないぞ?」

リッキーはお父さんの許可が出たので、少し部屋の中を調べだした。

しばらく調べるとリッキーなりに気が済んだらしく、またソファーへ戻ってきた。

ユーリもタイミング良く、ちょうどリッキーがソファーに座った時に起きてきた。

「何か起こるかも!」という本能が目を覚まさせたのかな?

「まだ紹介してなかったが、隣に座っているのがうちのグループに新しく入ったメンバーで、シエルっていうんだ。で、ここからが叔父一家に聞かれてはまずい話になる。実はシエルが抱えている子供は本当は人ではないんだ。そして、後ろに控えている人も、本当は人じゃない。」

リッキーがそう言うと、両親は少し首を傾げた。

「人じゃないって……じゃあ今、この目で見ている彼らは一体何なんだ?」

お父さんがそうリッキーに聞き返すと、リッキーが答える前にセバスとユーリが動き出した。

「では、まずは部屋の中を隔離いたしましょう。ユーリ様は結界をお願いいたします。」

「分かったよ~!」

まずはセバスがドアや窓の鍵をかけ、全ての窓のカーテンを引いた。

これで中に急に入ってくることも、窓の外から中を見ることもできない。

ユーリはその状態の部屋に結界を張った。念には念を入れて……だね!
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

【番外編】貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

譚音アルン
ファンタジー
『貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。』の番外編です。 本編にくっつけるとスクロールが大変そうなので別にしました。

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

処理中です...