88 / 196
第2章 エルフの隠れ里〜
いろんな街へ行ってみよう!1
しおりを挟む俺は驚いて隣にいたルーシェさんを見る。
するとルーシェさんはまるで「ドッキリ大成功!」とでも言いそうな顔で俺を見ていた。
「そう、ここはスノーホワイトの出身地、スノービークだよ。エルフの隠れ
「お前たち、スコットたちを知っているのか!?ヤツらは元気にしているのか!?」
あまりに勢いよく俺に向かってくるので、間にルーシェさんが立ち塞がってくれる。
「ああ、もちろん知っているとも。僕はギルマスだからね。それにこの子も最近スノーホワイトに加入した新人君だよ。よろしくね。」
ルーシェさんにそう言われて、門番2人は俺を凝視しだした。
なんか気まずい……。
「挨拶はまた今度彼らと一緒に来た時にでもゆっくりとしてくださいね。今はちょっと時間ないので、入り口ですぐに帰ってすみません。」
ルーシェさんが門番さん達にそう言うと、門番さん達はハッとして俺を凝視するのをやめた。
「そういえばテスト中だと言っていたな。じゃあ自己紹介は次回ここに来た時にでもしてもらうとして、奴らが元気に無事でいるのかだけでも答えてくれないか?」
「そのくらいなら大丈夫ですよ。彼らはとても元気に生活をしていますよ。」
それを聞いた門番さん達はホッとした顔をした。
「いや、それなら良いんだ、それなら。あいつら、ここを出ていってから一度も帰ってきやしなくてな。あいつらによろしく言っておいてくれ。」
「わかりました。ちゃんと彼らには伝えておきますね。じゃあ元の場所に戻りましょうか。」
ルーシェさんは俺の手を握ると転移魔法を使うよう促してきた。
俺は集中して元の光景を思い浮かべて、そこに2人が立っている映像を思い描く。
そして心の中で『転移!』と呟くと、次の瞬間には元の場所へ戻ってきていた。
「はい、よく出来ました!このくらいの距離ではもう出来そうですね。では次はローランの街との中間地点の街です。」
手を繋いだままルーシェさんがそう告げると、休む暇なく次の街へ。
光がやむと、そこは先程とは違って門の目の前付近ではなかった。
正確に言うと、門からこちらが見えないだろう森の縁、である。
こちらからは『街の全体像』とまでは言わなくても『街がよく分かりつつ、それでいてこちらの姿が確認できない』位置にいた。
遠くから見たその街は、どうやら中央に大きな城らしきものが鎮座している、そんな街だった。
「さあ、あれが次の街だよ。あそこはどんな街だと思う?」
急にルーシェさんが俺に質問を投げかけてきた。
俺は城があるというのがヒントとなり、もしかすると?と思った街の名前を言ってみた。
「もしかして……王都?」
するとルーシェさんは1つ頷いて「正解!」と言った。
「そう、城が見えるあの街は『王都』だよ!あの城には王族が住んでいて、それ以外にも王立騎士団や王立魔法師団がいるんだよ。今度、魔法師団長にこっそりと会わせてあげるよ!堂々と会うと厄介だからね。」
え?ルーシェさん、王立魔法師団長に面識あるの!?
俺が驚いた顔をしてルーシェさんを見上げると、苦笑いしているルーシェさんがいた。
「早く元の場所に帰らなきゃね……って、もう見つかっちゃったのか。早かったなぁ。」
苦笑いしたまま王都の方を見ていたルーシェさんだったが、次の瞬間、目の前に眩しい光が現れた。
「ルーシェ、こっちに遊びに来たんなら顔だ……ん?誰か一緒だったのか?」
突然の眩しい光の中から現れたのはルーシェさんよりもだいぶ背の高い、淡い金色の短髪で体のがっしりしたエルフの男性だった。
やはりエルフなので顔はとても整っているが体つきは里のエルフの男性よりしっかりしている。
服装は黒くて長い縁にたくさんの刺繍が入ったローブを羽織っていた。
「あ~あ、見つかる前に元の場所に戻りたかったのに!早いよ、父さん!」
「なんだ、ホントに寄る予定はなかったのか?母さんもお前が来るのを楽しみにしているのに、もっと頻繁に来いよ?」
「無理だよ、僕もギルマスやっているからめちゃくちゃ忙しいし。」
「そっか、それじゃあしょうがないな。ところで隣のその子はいったい誰だい?」
背の高い美丈夫は俺を見下ろしながらルーシェさんに聞いてきた。
「この子は僕が親しくしている『スノーホワイト』に新しく加わった子だよ。今はちょっと転移のテストをしているところだから詳しく話せなくてごめん。またゆっくりできる時に連れてくるよ!」
ルーシェさんがそう笑顔で言うと、ルーシェさんのお父さんは「しょうがないな、近いうちに連れてこいよ?」と言ってルーシェさんの頭をグリグリと撫でた。
「んもうっ!子供扱いしないでよ!一応もう大人なんだからさ!……じゃあ、もう行くね!シエルくん、元の場所に戻るよ?」
俺はそう言われたのでルーシェさんのお父さんに頭を下げてから転移魔法を使った。
ルーシェさんのお父さんは、俺たちが見えなくなるまでずっと笑顔で手を振ってくれていた。
500
お気に入りに追加
1,362
あなたにおすすめの小説

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!
アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。
->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました!
ーーーー
ヤンキーが勇者として召喚された。
社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。
巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。
そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。
ほのぼのライフを目指してます。
設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。
6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。
八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。
パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。
攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。
ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。
一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。
これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。
※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。
※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。
※表紙はAIイラストを使用。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します
湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。
そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。
しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。
そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。
この死亡は神様の手違いによるものだった!?
神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。
せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
【番外編】貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
譚音アルン
ファンタジー
『貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。』の番外編です。
本編にくっつけるとスクロールが大変そうなので別にしました。
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる