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第2章 エルフの隠れ里〜
夜景を見よう!
しおりを挟むルーシェさんの誘いに皆で屋敷の外に出た。
そこにはまるで蛍が飛んでいるように光る何かがふわふわと飛んでいて、街の光と相まってまるで幻想的な世界を作り出していた。
「この飛んでいる光って何ですか?」
俺は誰ともなく声をかける。
スコットさん達は初めて見る光景だったらしく、首を横に振った。
すると答えてくれたのはルーシェさんだった。
「これは通称『精霊の光』と呼ばれる、この時期特有の光る種?とでも言えばいいのかな?綿毛のような物の下に種がついているんだよ。この綿毛が風に吹かれてふわふわと浮くんだ。この種は花の時にたっぷりと光を蓄えて、こうやって風に吹かれて遠くへ行くときに暗くなると光を放つんだよ。」
すると、一緒に来ていたセバスが追加情報をくれた。
「久しぶりに見ましたが、こんなところまでこれが来ていたんですねぇ。そういえば種は地面につくと光らなくなるんですよ。」
「そうなんですか!じゃあそのうちここも光がなくなっていっちゃうんですか?」
「そうでしょうね。でも一晩中、空中にいるはずなので、朝まで楽しめますよ?あ、ちなみにこの種、どこから来るかわかります?」
えっ?この種、この付近に咲いている花の種じゃないの?
まるでタンポポの綿毛みたいだから、付近の花から飛んできているんだと思っていたよ!
「そういえばもう長年この街に住んでいましたが、種がどこから来るのかはわからないですね。この付近の花かと思っていましたが……?」
ルーシェさんがそんな事を言うのでラーシェさんは知っているのかとチラッとそっちを見ると、ラーシェさんも知らないらしく、俺と目が合うと顔を横に振った。
どうやらこの光、夕方になると急にこんな感じで空中で光りだすのだそうな。
だからてっきりこの付近の花から飛んできていると思っていたらしい。
「誰も知らないようですね?実はこの花の種、あの山の頂上付近から飛んてきているんですよ。」
そう言ってセバスが指を差したのは、なんと竜たちの巣がある山だった。
しかもその頂上付近ということは、昔、神竜が住んでいた場所に近いのではなかろうか?
気になったので聞いてみたところ、実際にその花が咲いているのは神竜の寝床がある場所なんだそうだ。
現在は先代の神竜の亡骸が安置されていて、その影響で「精霊の光」の元となる花が咲いているんだって!
そして夕方までに風に吹かれてこの付近まで飛んできて、暗くなるとこんな風に光りだすらしい。
やっぱり神竜は亡くなった後でも影響を与えるなんて、神の竜と言われるほど凄い存在なんだね!
俺たちはしばしの間そうやって幻想的な風景を楽しみつつ、街が見えるところまで歩いてきた。
街の方はたくさんのランプの光でこれまた「精霊の光」とは違う、綺麗な風景になっている、
どうやら街の方は明るすぎるためか「精霊の光」は全く見えなかった。
やっぱら暗いところでしか光らないのだろうか?
「……夜の街へ行ってみるかい?」
またもやルーシェさんに誘われたので皆で行くことに。
ただラーシェさんは足腰が弱いので街へは行かず、俺達を見送ったらまた屋敷に戻るそうだ。
「じゃあ行ってくるね、おじいちゃん!」
「気をつけていってくるんだよ?」
ラーシェさんは手を振って見送ってくれた。
それから俺達は朝と同じ道を通り、改めて街へと向かった。
街に近づくほど明るさが増しているような気がする。
街へ入る門?から中に入ると、いたるところに様々なランプが下げられており、まるで街中がお祭りの会場みたいだ。
あ、お祭りといえば……。
「ルーシェさん、今のこの時期って祭りにあたるんですか?」
そう、日本と同じような「収穫祭」的な祭りなのか聞きたかったんだ、わよね!
「そうだね、『死者がこの世に戻って来る』とされるこの時期は、ちょうど作物なんかを収穫する時期と重なるから『収穫祭』も兼ねているんだよ。」
なるほど、やっぱりどこでもそんな感じなんだね!
さらに俺達は街の中を進み、昼間に訪れた屋台の立ち並ぶ通りへと向かった。
そこにはなんと、昼間にはなかったテーブルや椅子が通りの真ん中に一直線でずっと先まで置かれていた。
そしてそこにはお酒とつまみを楽しんでいる人たちがあちこちに座っている。
……皆、良いなぁ。俺も早く飲める年になりたいよ!
「なんかみんな飲んだりして楽しんでいるようだし、俺たちも席を確保して楽しむか?」
そんな事を言ったのはリッキーさん。
他のみんなも彼に同意して開いてる席を探した。
そして席を確保すると、エミリーさんとリリーさんを残して俺たちは屋台へと向かった。
屋台が並んでいるところをぐるりと眺めてみると、昼間に串焼きやスープなどの調理されたものを売っていた屋台はそのまま開いているが、それ以外は閉まっているようだ。
その他に朝は見かけなかった屋台が数軒できていた。
どうやらその屋台がお酒類を売っているらしい。
「この時期になると夜の間だけこうやってお酒を売る屋台ができるんだ。お酒を飲めないシエルくんは昼間もやっていたジュース屋で買うと良いよ。」
そう言ってルーシェさんは俺にジュース屋さんに行くといいと勧めてくれた。
まぁ危険はないだろうということで俺とユーリだけでジュース屋さんに向かう。
目当てのジュース屋さんに着くとメニューを眺めた。
いろんな果物の名前が書いてあって、ジューサー?らしきもので注文が入ったらその場で作ってくれる店のようだ。
俺は夕飯後ということもあり、さっぱりとしたものが飲みたくてオレンジみたいな見た目の果物を選んだ。
ユーリはバナナみたいなものを選んでいたよ。
作って貰ったジュースを持ってリリーさん達のところに戻ると、他のメンバーはもう席についていた。
テーブルの上を見ると飲み物だけじゃなく串焼きや何かの煮込みもあるので、どうやらつまみに何品か購入してきたようだ。
「ほら、シエルも席につけよ。一緒に飲むぞ!」
自分の隣の席を叩きながらそんなことをリッキーさんが言う。
俺は誘われるままにリッキーさんの隣に座る。
そしてユーリの目の前にさっき購入したバナナ?ジュースを、俺の手にはオレンジジュースを持った。
「じゃあこれからの修業や旅の安全を願って……乾杯!」
そうスコットさんが乾杯の音頭を取った。
それに合わせてみんなも飲み物を掲げる。
俺はリッキーさんの飲み物の器にに自分の飲み物の器を軽く合わせた。
するとリッキーさんからは少し不思議そうな顔をされたが笑顔で頷いてくれたので、お互いそのまま自分の飲み物を一口飲んだ。
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