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第2章 エルフの隠れ里〜
ちょっと街の外に出てみる?
しおりを挟むルーシェさんから軽く衝撃を受けることを聞かされ俺達は驚いたが、なんとなく以前ルーシェさんに近い事を聞かされた気がする。
この街が竜の住処へ至らないように結界を張っている…的な?
そういえば以前ルーシェさんは先代の神竜様と話したことがあって、いろいろ聞かされたとも言っていたような気がする。
「ちなみにその『竜の住処』へ行くにはどちらの方向へ行けば辿り着きます?」
するとルーシェさんは長老の家の方を指さし、言った。
「竜の住処へはあっちの方に向かうと辿り着けるよ。ほら、さっきの家の裏にある森の向こうに山が見えるかい?」
俺はそう指さされた方を見る。
確かに森の上の方に山が見える。
来た時は屋敷が近すぎて気づかなかったよ。
「あの山が『竜の住処』だよ。ここを出てスノーホワイトの故郷へ向かう前に寄ると良いよ。多分4属性竜の方々は喜んで会ってくれると思うよ?」
なるほど、そういえばそんな事も以前聞いたかも!
みんなユーリが……神竜が誕生することを心待ちにしているって言っていたもんな。
これは間違いなく寄らないでスノーホワイトの故郷へ行ってしまうと、怒って飛んでくる案件じゃないか!?
……よし、必ず寄らなくては。
俺達……というより、スコットさん達の故郷のためにもね!
すると屋台のある通りの端まで来てしまったので折り返していたが、もう十字路のところまで戻ってきてしまったようだ。
「店はさっき通ってきたところにしかないんだよね。この後どうする?まだまだ夕飯までは時間あるし、ちょっとだけ街の外に出てみるかい?」
「おい、大丈夫なのか、俺達が外に出てしまって?」
慌ててスコットさんがルーシェさんに聞いた。
するとルーシェさんは頷いて「大丈夫、僕と一緒だから。その代わりはぐれないでね?」と言った。
確かにはぐれてしまったらその人だけ結界の外に出されちゃうかも!
「もし僕とはぐれた!と思ったら、動き回らずにその場で待っていてくださいね?動くと結界の作用で外に出されちゃうので。気づいたらすぐに向かうから、身の安全だけは確保しつつ、それだけは守ってね?」
「ああ、それだけは守るさ。なぁ、みんな?」
スコットさんがそう聞くと、3人とも頷いた。
「……あれ?そういえば例えば俺とユーリ以外が集団で迷子になることもあり得る?」
「そうだね、それはあり得るね。これもさっきと同じく、みんな固まったままでその場で留まっていてね。」
それから俺たちは街の外に出るべく、外へ出る方の門へ向かう。
門の前に来ると、門の外の方に門番さんが2人立っているようだ。
「おや、ルーシェじゃないか!いつ帰ってきたんだ?」
背が高くてほっそりとしたエルフの男性がルーシェさんにそう声をかける。
……エルフって、みんな顔が整っているよなぁ。
いろんな体型の人がいるけど、それでも太っている人は見当たらないし、見かけた人はみんな老若男女、さまざまな美形ばかりだ。
「今日の昼前にこっちに来たばかりだよ。おじいちゃんから聞いてない?僕が友達を数人連れて帰ってくるって。」
すると声をかけた男性は少し考えて、何かを思い出したようだ。
「そういえばラーシェさんがそんなこと言っていたな!そうか、隣や後ろにいる人がそうなんだな。……初めまして、エルフの隠れ里へようこそ!俺はルーシェの幼馴染のライトだ。よろしくな!」
ライトさんがそう言って手を差し出してきた。
俺は迷わずにその手を握り、握手をする。
「俺たちはBランク冒険者『スノーホワイト』だ。俺はスコット、隣がエミリー、前にいるのがリッキー、その隣がリリー、ルーシェの隣がシエルだ。しばらくこの街に滞在してラーシェさんに魔法を教えてもらうことになっている。よろしくな。」
「なるほど、ラーシェさんに!それは良かったな!ラーシェさんはエルフの中でも最高齢の、様々な魔法を使える魔法使いだから、色々教わると良い。とても丁寧に教えてくれるから、わかりやすくて良いぞ?」
ライトさんはそう言いながらスコットさんたちと握手をしていく。
その間、ライトさんと一緒に門番をしていたエルフの男性はじ~っとユーリを凝視していた。
それに気づいたライトさんはため息を一つつくと隣にいる男性を紹介してくれた。
「こいつは同じくルーシェの幼馴染のマッシという。エルフにしては珍しく無口で武闘派なタイプだが、別に人族嫌いじゃないから気にしないで接してやってくれ!……ほら、お前もそんなに凝視してないで挨拶しろよ!」
そう言ってライトさんは笑顔で、隣にいるマッシさんを肘でつついて促した。
マッシさんは確かに耳の形がエルフのそれだが、体格はどちらかというとスコットさんを一回り大きくしたような感じだ。
スコットさんも背が高いのだが、マッシさんはさらに10センチほど高いのではなかろうか。
隣りにいるライトさんの横幅と厚みと比べると、マッシさんは1.5倍はあるかもしれない。
肘で突かれたマッシさんは無表情で一つ頷く。
「……マッシという。よろしく。」
その一言だけで挨拶が終わってしまった……。
笑顔のまま固まってしまったライトさんが痛々しい。
「……。っ、おい!?もっと話せよ!?」
「……?」
「いや、目で訴えられても!だ~っ!もういい、俺が話すよ!」
あまりにもマッシさんが話さなくて会話が成立しないことに焦れたライトさんはもう諦めたようだ。
「たぶんマッシが聞きたいのは君のお腹に抱きついている子竜のことだと思う。」
そう言ってライトさんはユーリのことを見やる。
なるほど、そりゃあ気になるよね。
ここにいるエルフなら竜は見慣れているのかもしれないが、ルーシェさんが連れてきた人族に赤ちゃん竜が抱きついているんだもんね。
「この子はユーリと言います。この子のことはラーシェさんから何か聞いてませんか?」
「……そうだなぁ、竜については聞いていなかったと思うが…?」
「では、後ほどラーシェさんから街の皆さんにお話があると思いますので、俺からはあえて話すことはしません。今、話せなくてすみません。」
俺はそう言い、頭を下げる。
するとライトさんは軽く肩を上げて残念そうな顔をした。
「まぁ、そういうことなら無理に聞くことはしないさ。ところで話は変わるが、もしかしてこれから街の外に出るつもりか?」
俺たちが街の方から歩いてきたからあえて聞いたんだろう。
ルーシェさんは頷いて「これから少しだけ街の外に出て案内をしようと思ったんだ。」とライトさん達に伝えた。
「そっか、まあルーシェがいるなら大丈夫だと思うけど、絶対にルーシェから離れるなよ?すぐ目に入るところにいるんだ。もし万が一はぐれてしまったら、絶対に迎えが来るまでそこから移動するな。これだけは守れよ?」
ライトさんからそう言われて、俺達は門をくぐることを許された。
さて、これからどんな事が待っているんだろう?
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