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第2章 エルフの隠れ里〜
エルフの里の街へ行ってみよう!
しおりを挟むお昼を食べたあと、少し休憩してからルーシェさんに連れられて街への道を下っていく。
小高い丘になっているだけなので、そんなに見下ろしているわけでも離れ過ぎているわけでもないが、それでもだんだん見えていた景色が上から同じ目線へと変化していくと、また違った見え方になる。
上からだと意外と道路が整っていると思っていたが、実際に街の近くまで行くと大きな通りは広さがあって良いのだが、1本入った家と家の間にある道が細くて入り組んでいるのが見えたので、ルーシェさんと離れたら迷子になるのは必至だと思う。
困ったなぁ、探査魔法は街では有効じゃないからなぁ。
……あ、そっか!
ラーシェさんの家は小高い丘にあるので街のどこからでも場所は確認できるから、道に迷ったらあそこまで戻れば良いね!
俺がそう考えながら皆と歩いていると、思ったよりすぐに街の入口に着いた。
「ここからは僕とはぐれないように気をつけてね!絶対に君たちは道に迷うから。」
苦笑いしたルーシェさんが俺達に向かってそう言う。
俺達5人共、揃って頷く。
とりあえず俺はルーシェさんと手を繋ぎ、確実にはぐれないように安全を確保する。
俺とルーシェさんの後ろにはリッキーさんとリリーさんが歩き、その後ろにスコットさんとエミリーさんが続いた。
街の入口から中に入ると、正面には比較的広めの道路がまっすぐ通っていた。
入口付近はどうやら民家ばかりが建ち並ぶ場所だったらしく、道沿いの家では街の住民が洗濯物を干したり、夕飯のために仕込みをしていたりと日常生活をしている中を歩いていった。
ルーシェさんは長老の孫だからか、一緒に歩いていると物凄く注目された。
「……めちゃくちゃ見られてますね、ルーシェさんって。この街ではやっぱり有名人なんですか?」
俺が皆の視線に耐えきれずルーシェさんに声をかけると、当のルーシェさんは呆れた顔で俺を見てきた。
「皆が見ているのは君たちと、シエルくんのお腹にしがみついてキョロキョロしているユーリちゃんだよ。まぁ、もちろん一緒にいる僕のこともチラチラ見てはいるようだけど、人族の君たちがこの街にいるっていうのが気になっているんだと思うよ。」
「なるほど、そういえば今ここにはユーリもいますしね!たとえ小さくても目立つのは目立つかぁ。」
それから俺たちは道路を更に先に進み、ちょうど十字路になっている道を右に曲がった。
そこにはまるで日本の縁日みたいに屋台みたいな小さな店がいっぱい立ち並んでいた。
「普通の日には店を飾り立てることはないんだけど、今の時期は夜も店を開けていることがあるからたくさんのランプを吊るして明るくなるように飾り立てるんだよ。」
そうルーシェさんが教えてくれた通り、確かに店の屋根にあたる部分に手のひらほどの小さくて色々な形のランプが連なって飾られていて、これがみんな夜になると明るく光るのかと思うと今から楽しみだな。
俺達はとりあえず店を1店1店覗きながら歩く。
ローランの屋台広場みたいに道は円形になってはいなかったが、そこがなおさら日本の縁日みたいに感じるようだ。
屋台には果物が山盛りになっている店やいろんな肉を売っている店、アクセサリーを売っている店等の普通の店舗のように売っている店もあれば、串焼きやいろんなタイプのスープ、サンドウィッチなどの軽食を売っている店もある。
ルーシェさんに聞いてみると、ローランみたいに店舗で物は売っていないらしく、この通りが市場の役割を担っているらしい。
どうやらこの屋台達は、この街の人達の生活を支えているんだね!
俺達は屋台を見ながら通りを練り歩き、時たま食べたいものや欲しい物があったら寄ったりして購入した。
購入した串焼きを食べながら俺はルーシェさんに聞いてみた。
「さっき売っていた民芸品?とかは街の人が作って売っているんだろうとは思ったんですが、この串焼きみたいにお肉や野菜はどうしているんですか?どこかで狩りをしたり、栽培したりしているんですか?」
「そうだねぇ~、野菜はこの街の中で畑を作って、そこで色々作っているんだよ。それ以外にも僕みたいにあちこちの街へ魔法で移動できる人が何人かいて、彼らが街の住人のためにあちこちから野菜だけじゃなくいろんな物を仕入れてきて屋台で売るんだ。でもお肉類は森へと狩りに出かけて、いつも新鮮なお肉を提供してくれているんだよ。」
「なるほど、それはとても新鮮ですね!この街の人はみんな狩りが得意なんですか?」
「いや、皆じゃないよ?この街の自衛団が見回りついでに、増えてきている魔物を狩っているんだ。」
「そうなんですか?やっぱりローランの街みたいに魔物の巣が見つかって危険なことになったりするんですか?」
俺はふとローランの街の近くでオークの巣が見つかり、とても危険だったことを思い出した。
あの時は俺達がいたから何とかなったが、ここはそういう時はやっぱり自警団が冒険者の代わりに魔物を間引くのだろうか。
するとルーシェさんは横に首を振った。
「いや、この街はローランみたいなことにはならないよ。僕たちは僕の魔法で一気にここへきたから気づかなかっただろうけど、この街は特殊な結界に守られているんだ。だからこの街の中には魔物どころか、人でさえも辿り着いて入ってはこれないんだ。あ、もちろん元からこの街の住人ならその限りではないけどね!」
ルーシェさんはそう言って俺にウインクをしてきた。
なるほど、この街の結界はユーリがや何回か張ってくれたような所謂『見えない壁で弾き返す』ような結界ではないんだね?
前にちらっとと聞いた、『結界の中に入ると方向感覚を惑わしていつの間にか結界の外に出るようにする』結界なんだろうか?
俺は思い切ってルーシェさんにこそっと聞いてみる。
するとルーシェさんは一度頷いて肯定した。
「よく覚えていたね、シエルくん!その通り、ここの結界は壁みたいなものではなく、ものすごく広い範囲で広がっている結界なんだ。……でもまぁ、多分シエルくんとユーリちゃんは知らないで外からここに目指して歩いてきても、問題なくこの街に辿り着きそうだね。」
ルーシェさんはそんな事を言って苦笑いをした。
ん?それってなんか、条件が整えば結界を超えるのに問題がないって事なのかな?
「それって……その結界を超えるのに条件があるけど、それを満たせば問題なく来れる……ってことですか?」
「ん~……半分正解で、半分間違い、かな。君たちが結界をものともせずに来れるっていうのは、竜並みの魔力を持っているから結界を張っている魔道具より魔力が強すぎて効かないからなんだ。」
「えっ、竜はこの街に入ってこれるんですか?」
「そうだね、この街に竜は入ってこれるよ。だって、この街は竜の住処へと向かう為の関所みたいなものだからね。ここを通らないとこの先には辿り着けないんだよ。だからこの街は……この街の住人は竜と親密な関係にあるから、竜に脅かされることもないしね。」
……なんですと?
そんな場所にあるの、この街!?
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