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第1章 出会い〜旅の始まり
お土産を買おう!
しおりを挟む東門をくぐって街の中に入った俺たちはすぐにパン屋さんへ向かう。
……もう焼き上がっているかな?
パン屋さんに着くと、とても美味しそうなパンの匂いがした。
ホントの焼きたてのパンって、日本にいた時には食べられなかったからなぁ。
店内に入ると朝対応してくれた店員さんがいて、俺たちを見ると声をかけてくれた。
「ちょうどさっき、注文を受けたパンが焼き上がったところだよ。今、持ってくるな。」
そう言うとおじさんは店の奥へと向かった。
「とてもいい匂いがするな!美味しそうだ!」
「そうね!もしだったら小腹が空いた時にでも皆で少しずつ分けて食べてみない?」
「そうだな……どうだろうか、シエル?」
スコットさんが俺にそう聞いてきた。
もちろん俺はOKを出したよ。
俺も焼きたてのパンを食べてみたいもん!
俺の鞄に入れれば焼き立てそのまま保存できるから、いつでも焼き立てだよ!
店員さんが大量のパンを持ってきて、種類ごとに大きな紙袋に入れてくれた。
もちろん後で食べる用にコッペパン以外を1種類ずつ入れた紙袋も作ってもらった。
わかりやすく紙袋の口の折り方を変えておいたから、後で取り出す時わかりやすいかな?
パンを全部収納した後、頼んでおいたパン種を受け取った。
これは後で油で揚げてドーナッツや揚げパン、カレーパンなんかを作りたいと思ったから、かなりの量を作ってもらったんだよね。
なかなかパン種は素人だと作れないからね、この世界では特に。
それから俺達はパン屋さんの商品棚にある食パンやフランスパンもかなりの量を購入し、店員さんに感謝の気持ちを伝えて店を後にした。
「さて、この後は何をする?まだ昼を回ったばかりだからいろいろできるぞ?」
スコットさんにそう言われて、皆で考え込んでしまった。
俺も考えてみたがこれといってあとやりたいことは思いつかなかった。
「あ……そういえばギルマスが言っていたけど、明日向かうのはエルフの隠れ里なんだろ?まず着いたら長老に挨拶だと思うが、手土産っていると思わないか?」
確かに!
リッキーさんが言うまですっかり忘れていたよ、明日はルーシェさんに隠れ里まで連れて行ってもらうことを。
里に行ったらスコットさん以外は長老に魔法を教えてもらえるはずだし、この後お土産を探さないとね!
「何がいいですかね?」
「う~ん……俺たちじゃ流石にエルフが何を好むのか全くわからんな。」
「ならギルマスに何が好まれるのか聞いてみるか?その方が変なもの買って嫌がられるより良いと思うんだけど?」
「それもそうね。スコット以外は魔法を習いに行くようなものだし、そのお礼も兼ねて手土産は欠かせないわよね。」
「そうですよ、今よりも強力な魔物とも戦えるように強くならないと!」
皆もお土産には賛成なようで、とりあえずルーシェさんの所に聞きに行くことになった。
ギルドに再び戻ってくると、受付にギルマスに会いたいと告げ、カウンターを通してもらう。
どうやらスノーホワイトはギルマスの方に用事がなくても通してもらえるようだ。それだけ親しいんだろうな。
ギルマスの部屋のドアをノックすると中から「入って良いよ~。」とルーシェさんが言う。
中に入ると相変わらず机で書類仕事をしている。
いつもここに来ると、いったいどんな書類を処理しているのか見てみたくなるが、ギルド職員以外は見てはダメなものだと困らせるのでいつも聞けて無い……が、気になる!
そんな事を思いながら皆でソファーに座る。
「やあ、もう向こうに行くのかい?」
「いや、じつは何か手土産を……と思ったんだが、なにが好まれるのか全く想像できなくてな。それでルーシェに聞きに来たんだ。」
「なるほど、手土産ねぇ……そうだなぁ、あの人はお酒が好きだから、外界のお酒は喜ばれるかもよ?隠れ里というくらいだから、お酒も自分の所で作るしかないからね。」
なるほど、確かに!
お酒好きな人ならいろんなところのお酒を飲んでみたいかもしれないね!
「ちなみに隠れ里で飲まれるお酒はどんなお酒ですか?」
「ん?そうだなぁ……簡単に言うと、森で採れる果物なんかを潰して発酵させて造る酒、だね。酒精はエールなんかよりも強めかな?」
「なるほど、隠れ里では果実酒を造っているんだな。ならそれ以外を持っていくか。」
あ……もしかすると隠れ里にいる間に兄さん達が来るかもしれないし、その時に異世界の酒も持ってきてもらうのはどうかな?
まず飲めない珍しい酒だし、喜んでくれるかな?
とりあえず俺たちはルーシェさんから情報をもらい、明日また来る時に向こうに行くことを告げて、ルーシェさんと別れた。
ギルドを出るとリッキーさんの案内で酒屋に向かうことに。
それにしてもいつも思うが、何故に皆はリッキーさんに案内を頼むんだろう?不思議だ。
どうやら南地区の広場側に近い方にリッキーさんは向かっているようで、ギルドからはそんなにすごく離れてはいない場所のようだ。
酒屋に着くと皆で中に入る。
店中の壁際には商品棚があり、そこにワインを置くような木製のラックが所狭しと置いてあり、その中にお酒の瓶が入れてあった。
それらを眺めていると店員さんらしき人が声をかけてきた。
「何かお探しですか?」
「エールより酒精の強い、果実酒じゃない酒を探しているんだが、そんなのあるか?」
「なるほど……それならこれなんてどうでしょう。」
店員さんはそう言うと店内にある一角へ向かった。
そこには他と違って透き通っている瓶に入った酒が並べてあった。
「こちらは果物ではなく米を発酵させて造られた酒でございます。」
店員さんのその言葉に俺は驚いた。
だって、それって日本酒のことだろう!?
確かに醤油があるってことはそれ以外の麹を使ったものが存在するのでは?とは思っていたが、まさか日本酒があるとは!
「なるほど、それは良いな!で、お勧めの品はどれになる?」
そうスコットさんが言うと、店員さんはその店の品を1つ1つラベルを見ながら2つほど選んだ。
「どういうタイプがお好みか分かりませんでしたので、キリッとした飲み口の物と口当たりが甘い物の中からそれぞれ選びました。」
「なるほど、それは良い。俺たちも相手が何を好むのかよくわからないから助かるよ。じゃあその2本を貰おうか。」
「かしこまりしました。では贈り物のようでしたので、お包みいたしますね?」
そう言って店員さんは奥へ行った。
帰ってきた店員さんの手には2つの箱が。
どうやら割れないように箱入りになったらしい。
その箱を支払いが済んだら鞄に入れる。
もちろん支払いはチーム用財布からだ。
なるほど、今まで不思議だったが、チームの会計はエミリーさんなんだね!
リッキーさんじゃなかったんだ~。
それに、さすがに新参者の俺でも、女性だとはいえリリーさんに任せるのは怖いなとなんだか思っちゃったんだよね。不思議だね?
とりあえずこれで、俺達は新しい場所へと向かう準備が整ったね!
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