異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

文字の大きさ
上 下
69 / 196
第1章 出会い〜旅の始まり

ゴーダさんの店に行こう!

しおりを挟む

翌朝、早朝から皆で朝食を取り、しっかり装備をつけてから揃ってゴーダさんのお店へと向かう。

朝もかなり早い時間であるにもかかわらず、ゴーダさんは店を開けていた。
やはり鍛冶工房は朝が早いのかな?

店の中に入るとリッキーさんが前回と同じく店の奥の方に向かって声を掛ける。
すると少ししてゴーダさんが1つの箱とエミリーさんの短剣を持ってきた。
多分はこの方はリッキーさんのために打った刀だろう。

「まずエミリーに手入れをしておいた武器を返すな。」

ゴーダさんはエミリーさんに短剣を手渡す。

エミリーさんは「ありがとう、ゴーダおじさん!」と言い、代金を支払った。

それからゴーダさんは持っていた箱をリッキーさんに手渡す。

「これはリキ坊に頼まれていた剣だ。そこにいる坊主と同じ形の剣だぞ。俺の先祖ほど上手くは打てないが、それでもなかなかの切れ味がある物に仕上がったから、リキ

の旅の役に立つはずだ。大事にしろよ?」

ゴーダさんはにやりと笑いながらそう言い、リッキーさんに箱を開けるよう促した。

リッキーさんは言われた通りに箱を開け、中の刀を取り出す。

その刃はとても綺麗で、ゴーダさんの腕もご先祖様に並ぶくらいなんだと思わせた。

リッキーさんはその刀に見惚れていたが、ハッとするとゴーダさんに向き直り、頭を下げて感謝の言葉を言った。

「おっちゃん、俺のためにこんなにもいい刀を打ってくれてありがとう!一生大事にするよ!」

「いや、一生でなくて良いぞ。気に入ったならまた打ってやるから、その代わり手入れは必ず俺に任せろよ?それだけは守ってもらいたい。せっかく良い出来の物なのに、この剣をよく知らない奴にいじられるのは我慢ならねぇんだ。」

ゴーダさんが苦笑いをしながらリッキーさんに頼むと、リッキーさんはもちろん快諾した。

それからリッキーさんはゴーダさんに料金を支払おうとしたのだが、どうやらゴーダさん、かなり低い価格でリッキーさんに譲ったらしい。

「いい品物には相応の金額でないと職人さんのためにならない。」とリッキーさんが言い張り、少なくても言われた金額の2倍を支払った。

満足げなリッキーさんとちょっと不満そうなゴーダさんで、なんだか逆転している気がするが、まぁ……それでもいいんだろう。

ゴーダさんにみんな料金を支払い、店を出る。

俺たちが帰る時に見送りに来ていたゴーダさんに、リッキーさんが代表して明日の昼前にはこの街を発つ事を告げた。

するとゴーダさんは少し寂しそうな顔をしたが、今までも何回も見送りと再び迎えることを繰り返していたので、今生の別れにはならないと信じているようだ。

「……明日、どの門から発つんだ?」

「実は明日、門からではなくギルマスから送ってもらうことになっているんだ。」

リッキーさんがそう言うと、ゴーダさんはかなり驚いていた。
どうやらそんな魔法が使えると思ってなかったみたいだ。

「じゃあルーシェはどこにお前たちを送るんだ?」

「最終的な目的地?は俺たちの故郷のスノービークだが、まずはエルフの隠れ里に連れて行かれるらしい。」

「ホントなのか!?エルフはなかなか里に『ニンゲン』を入れたがらないはずなんだがな?」

するとスノーホワイトのメンバーはみんな苦笑いしている。

「ルーシェにシエルが気に入られたんだよ。だから長老に合わせたいんだとさ。」

スコットさんが理由の一つを伝えると、ゴーダさんは納得した顔になった。

「じゃあ、そういうことなら現地までは安全だな!だが森の中は強敵ばかりだと聞くし、気を引き締めて行くんだぞ?」

「ああ、わかっている。十分気をつけてスノービークに向かうさ!だから安心して俺たちを送り出してくれ。」

「……俺の打った武器が、みんなの命を守ってくれるよう、祈っておくからな!」

最後にはゴーダさんも笑顔で手を振ってくれた。

今日はこの後、ブル狩りをすると伝えると笑いながら「頑張れよ?美味い肉が取れたら俺にも少し分けてくれよ?」なんて言っていたよ。

もちろんそういうことなら頑張りますかね!

- - - - - - - - - - -

それから俺達はゴーダさんに別れを告げて、西門へと向かう。

そこから外に出ると、遠くに森が見えた。

その手前には牧草地帯のような広い平野が広がっていて、肉眼でもあちこちに黒い?何かがいるのが見えた。多分あれがブルなんだろう。

「リッキーさん、あの遠くに目える黒いのがブルなんですか?」

俺がそう聞くと、リッキーさんは頷いた。

「そう、あれがブルなんだが……遠目だから確信はできないが、多分高級ブルのブラックブルじゃないかと思う。」

ブラックブルって、もしや日本でいう黒毛和牛みたいなものなのか!? 

だとしたら、かなり美味いんだろうな……!

俺は涎が出そうになるのをこらえて、そのブルたちに目線をやる。

……待ってろよ、ブラックブルよ!

考えてみると、ブルに近づこうと思っても隠れる場所がないことに気づいた。

えっ、これって遠距離で攻撃しないと逃げられちゃうんじゃないかな?

俺がリッキーさんにその事を伝えると教えてくれたんだが、どうやらブル系は強い種らしくてCランク以上じゃないと倒せないらしい。

ブル達はその事を理解しているようで、攻撃されないうちは反撃も逃げもしないらしい。

……なるほど、それはありがたい。

逃げられずに簡単に近づけるではないか!

それから俺達は普通に歩いて近くまで行き、辺りに散らばってはいるがかなりたくさんいるブラックブルを観察した。

確かに逃げないな……。

ブル達は俺達の存在に気付いてはいるようで、こちらを見ている個体がちらほらといる。

「さて、ブラックブルを狩ろうと思うんだが……5人で武器のみでやるにはブルの数が多すぎる。このままでは狩ることで逃げられるより狩っている最中に襲ってくるほうが確率が高いと思うんだが、皆はどう思う?」

「まず間違いなく襲ってくるな。じゃああれだ、エミリーには俺達の狩る方向と違う方に向けて攻撃してもらうか?それなら襲ってきづらいと思うんだけど?」

「そうね、それでいきましょう。リリーは……水魔法で攻撃できるでしょ?私と同じ方向でやりましょう!」

「わかりました、それでいきますか!」

みんながどう動くかの相談が終わり、それぞれ散った。

スコットさんの合図で一斉に始めることになっている。

俺もゴーダさんが譲ってくれた刀を構えて緊張しながら合図を待っている。

作戦はうまくいくだろうか……?
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~

中畑 道
ファンタジー
「充実した人生を送ってください。私が創造した剣と魔法の世界で」 唯一の肉親だった妹の葬儀を終えた帰り道、不慮の事故で命を落とした世良登希雄は異世界の創造神に召喚される。弟子である第一女神の願いを叶えるために。 人類未開の地、魔獣の大森林最奥地で異世界の常識や習慣、魔法やスキル、身の守り方や戦い方を学んだトキオ セラは、女神から遣わされた御供のコタローと街へ向かう。 目的は一つ。充実した人生を送ること。

転生して何故か聖女なった私は、婚約破棄されたうえに、聖女を解任される。「え?」 婚約者様。勝手に聖女を解任して大丈夫? 後は知りませんよ

幸之丞
ファンタジー
 聖女のお仕事は、精霊のみなさまに助けてもらって国を守る結界を展開することです。 この世界に転生した聖女のエリーゼは、公爵家の子息と婚約しています。  精霊から愛されているエリーゼは、聖女としての能力も高く、国と結界を維持する組織にとって重要な立場にいます。    しかし、ある夜。エリーゼは、婚約破棄されます。 しかも婚約者様が、勝手に聖女の任を解いてしまうのです。 聖女の任を解かれたエリーゼは「ラッキー」と喜ぶのですが…… この国『ガイスト王国』は、どの様なことになるのでしょう。 ――――――――――――――――  この物語を見つけていただきありがとうございます。 少しでも楽しんでいただければ、嬉しいです。

異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし
ファンタジー
銀行に勤めるそこそこ頭はイイところ以外に取り柄のない23歳青山 零 は突如、自称神からの死亡宣言を受けた。そして気がついたら異世界。 異世界ではまるで別人のような体になった零だが、その体には類い稀なる才能が隠されていて....

王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた

こばやん2号
ファンタジー
 とある財閥の当主だった神宮寺貞光(じんぐうじさだみつ)は、急病によりこの世を去ってしまう。  気が付くと、ある国の王太子として前世の記憶を持ったまま生まれ変わってしまうのだが、前世で自由な人生に憧れを抱いていた彼は、王太子になりたくないということでいろいろと画策を開始する。  しかし、圧倒的な才能によって周囲の人からは「次期国王はこの人しかない」と思われてしまい、ますますスローライフから遠のいてしまう。  そんな彼の自由を手に入れるための戦いが今始まる……。  ※この作品はアルファポリス・小説家になろう・カクヨムで同時投稿されています。

辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~

銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。 少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。 ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。 陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。 その結果――?

初めての異世界転生

藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。 女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。 まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。 このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。

異世界転移~治癒師の日常

コリモ
ファンタジー
ある日看護師の真琴は仕事場からの帰り道、地面が陥没する事故に巻き込まれた。しかし、いつまでたっても衝撃が来ない。それどころか自分の下に草の感触が… こちらでは初投稿です。誤字脱字のご指摘ご感想お願いします なるだけ1日1話UP以上を目指していますが、用事がある時は間に合わないこともありますご了承ください(2017/12/18) すいません少し並びを変えております。(2017/12/25) カリエの過去編を削除して別なお話にしました(2018/01/15) エドとの話は「気が付いたら異世界領主〜ドラゴンが降り立つ平原を管理なんてムリだよ」にて掲載させてもらっています。(2018/08/19)

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...